*ちょこっと甘く*
――ティロリーン。
「いらっしゃいませー。」
やけに可愛らしいドアの開閉音を聞きながら、お客に笑顔を向ける。
このコンビニのバイトを始めてもう3ヶ月。最初は失敗ばっかしていたが、もう大分慣れてきた。
「あーここも駄目じゃーん!」
「やっぱ隣町に行った方が良いかもねー。」
女の子達の会話が聞こえてくる。もうすぐバレンタインが近いせいか、女の子の出入りが激しい。
ここは結構な田舎なので、こんな小さいコンビニにでも、チョコレートを求めて来るのだ。
「(いいなあ…ま、俺には関係ないか。)」
いいさ、いいさ。毎年ギリギリの義理義理二個は貰えるし。ん?妹と母さんだけど文句あるかこんちきしょー。
「これ、頼む。」
「えっ、あ、はい!!」
いかん、ついうっかりしてしまった。お客様は神様ですからね!急いでレジを打ち始める。
「(タバコ…に、チロルチョコ?)
何かミスマッチな組み合わせだなあ。
顔を上げて買った人物を見てみると…すんごい美形だった。銀髪で不良なのはわかるが、それ以上にモデルをやってるんじゃないかってくらい美形。
「おい。」
「っはい!?」
またぼーっとしてしまった。
あれ、でも会計は終わったよな?俺何か忘れた??
「…やる。」
「えっ、これ…。」
渡されたのは今この人が買ったばかりのチロルチョコ。
戸惑っていると、何も言わずに出ていってしまった。
「お礼言えなかったな…。」
てか言う暇を与えてくれなかった。何でくれたんだろ…。
渡されたチョコを食べてみると、何故だかいつもより甘い気がした。
「…っし!頑張ろ!」
―――――――――――――
「…やる。」
「っありがとうございます!」
あの日以来、毎日のように銀髪不良さんはやってくる。そして毎回のようにチロルチョコを買っては俺に渡していく。
名前も知らない、年も知らない。他愛も無い会話しかしないけれど、俺はこの人が来るのが楽しみになっていた。
「…頑張れよ。」
「っ…はい!!」
不意打ちを食らった。あんな笑顔反則すぎるっ。これだから美形は!←
顔が熱くなるのを感じる、駄目だ、集中的しろ俺!!
これじゃあまるで…っ
「ぎゃあああ!!」
「伊田くんうるさいよー。」
「減給するよ☆」って店長目がまったく笑ってないから!笑顔が怖いから!!
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