Unknown





 ギチリ、と音を立てたのは皮の拘束具だ。
 俺の腕は後ろに固定され、足は膝を曲げた状態で留められていた。
 口には丸いボールのようなものを噛まされていて、呻く事しかできない。
 不自由な体勢のまま身体を捩ると、中で太いディルドが動き圧迫感を強めた。
「……う、ッん」
 部屋の中に和泉の気配を探す。
 けれど目隠しをされた状態では何も判らなかった。
 空気の動きさえもない。何の音もしない。
 窓の外の僅かな車の音だけが、唯一俺をホッとさせてくれた。
 それ以外は、耳が痛くなるほどの静寂だ。
「……」
 誰もいないのなら、騒いだところで無駄だろう。
 和泉はガンツスーツを着ていたから、音もなく滑るように移動するのも簡単なはずだった。
 扉はさっき和泉が離れていく時、開く音だけがして閉じた音はしなかった。だから今は、開け放したままになっているんだろう。
 もし誰か、和泉以外の別の人間が来たら、今のこの状態をどう思うか。
 それを思うと羞恥で頭がおかしくなりそうだった。

 今日の和泉はずっと機嫌が悪く、声をかけるのさえ恐ろしかった。
 メールで呼ばれこの家にたどり着くと、無言のままの和泉に玄関で貪るように抱かれて、声を堪えるのに必死になった。
 廊下に通じる扉に押し付けられながら立ったまま突き上げられ、声が廊下に漏れないか心配だったからだ。
 乱暴に突き上げられて感じる場所を滅茶苦茶に突かれ、俺は扉に白濁を吐きだした。
 和泉は、粗相をした仕置きだと言って俺をベッドに繋いだ。
 見たこともない皮の拘束具に足を開いた格好で固定され、腕も頭上で縛られたまま再び犯された。
 身体の中は注がれた精液で滑るほどで、和泉は苛立ちをぶつけるようにして突き上げてきた。
 抜かずに三回は注がれた後、漸く解放されたと思ったら、和泉は妙なものを持ってきて俺に見せた。
 幼児の腕くらいはあるような、性器の形を模した道具だった。
 グロテスクな突起が幾つもついていて、俺は蒼白になりながら首を横に振った。
 それをどうするか判ってしまったら、そうせずにはいられなかった。
 大丈夫だ、入る、と軽く言った和泉は一度それの先を俺に突き立てた。
 俺は悲鳴を上げながら無理だと叫んだ。
 引き攣れるような痛みに涙が滲んで、シーツに雫が落ちた。
 

 それから、妙な形の拡張器具を使って和泉は俺の中を慣らしはじめた。
 先は細く下にいく程に太くなるそれは、和泉の手で揺らされながら散々俺を泣かせた。
 空になるまでイかされて、それでも外されなかった。
 一番太い根元の部分が入るまで拡張は続けられた。
 漸く入り口が開く様になり、狭いそこに溢れるほどジェルを注ぎ込まれてから、あのディルドが挿入された。
 裂けるのではないかという恐怖が、俺の身体を硬直させていた。
 それを解す為か、おざなりに和泉の手が俺自身を扱く。
 やる気のない触れ方のクセにその愛撫に慣れた俺の性器は立ち上がり、快感を求めて雫を溢れさせた。
 俺の身体から力が抜けると、和泉はあっさりと愛撫を止めた。あくまで目的はディルドを納める事だというようにそれを進めていく。
 ず、ず、と内臓をせり上げられていくような圧迫感だった。
 何度も、もう無理だやめてくれと願い、それを無視される。
 終いには煩いと言われて、口にボールのようなものを噛まされた。それから呻く事しか出来なくなる。
 長い時間をかけて漸く最後まで埋め込まれた時には、俺は息も絶え絶えでシーツにぐったりとしていた。
 少し突かれるだけで、圧迫感に吐きそうになる。
 ずっと頬を伝っていた涙が乾いて引き攣れたようになっていた。俺の頬を撫でて、和泉は唇の端を上げて笑った。
『広がるまで少し待ってろ』
 絶望的な言葉だった。
 今すぐにでも抜いて欲しいのにまだ駄目なのかと、無意識に新しい涙が溢れてくる。
『ここで大人しく待て』
 目隠しをされて和泉が遠ざかる気配がした。
 近くに和泉の気配がないと、急に寒くなった気がした。
 感覚を鋭敏にさせて、和泉の気配を探す。それでも全く判らなかった。
 俺を置いて出かけてしまったのか。
 少しというのはどれくらいの間なのか。
 問いかけたい事はいくらでもあったが、とにかく今は静寂の中放置されている恐怖に耐えきれなくなっていた。
 和泉、と声にならない呻きで呼ぶ。
 当然それが届くことはない。シーツに身体を押し付け、零れそうになる涙を堪えた。
「……ッ!」
 ぎし、とベッドの上に重みが掛かった。
 驚いてそちらに顔を向けるが、目隠しのままでは何も判らない。
 開かされている足に手がかかり、その冷たさに身体を竦めた。
 皮の手袋を着けているようで、肌に直接は触れられなかった。
「う、……ンンッ」
 和泉だろう、そうに決まってる、と思うのに相手が無言なせいでだんだんと不安になってきた。
 せめて口に噛まされたボールが外れれば問いかける事ができるのに、ともどかしい気持ちになる。
 足に触れてきた手が俺の膝を掴んで、身体をひっくり返した。
 無意識に身体を隠すように横を向いていたのを、完全に仰向けにさせられてしまう。
 下敷きになった腕が痛い。
 それよりも、身体の全てを相手に晒している体勢に頬が熱くなった。
 括られた膝が持ち上げられ、腰を上げるような姿勢のまま内腿の柔らかい部分に触れられる。
 ビクビクと怯えて震える俺の身体を、ゆっくりと指先が辿っていった。
「ンッ、……う、……んぅッ!!」
 身体に深く押し込められたディルドに、指先が触れる。
 ビクンッ、と無意識に身体が跳ねて中を締め付けてしまった。
 腰の下に丸めた布のようなものをかまされ、身体を固定される。
 何が起こるのかと気配を探らずにいられない。
 カチ、と音がして口に噛まされたボールが外された。留めていたゴムのようなものが消える。
「……い、ずみ?」
 掠れた声で問いかける。
 それに、返事はない。そのまま下肢に触れてくる手が、ディルドを掴んでゆっくりと引いていく。
「ひっ、ヤ……痛ッ、!!」
 少し引いて、また戻された。ぐっ、と強い圧迫感に胃まで押し上げられたような錯覚に陥る。
 痛い、と悲鳴を上げるが聞き入れられることはなかった。
 そのまま抜き差しの動きは大きくなっていく。
 ディルドの与える刺激は暴力的で、その突起が感じる場所を無遠慮に殴りつけてくるようだった。
「ひ、……あ、あ、ッも、……や、ああぁぁッ!!」
 ビクビクと痙攣しながら、強制的に射精をさせられる。
 前立腺を刺激されれば中がほとんど空でも射精感だけが襲う。
 もう薄まったような精液しか出ない状態でそれを強要されるのは辛かった。
 出すものがなければ絶頂は引き伸ばされ、いつまでもイキっ放しのように感じてしまう。
 手袋をはめた相手は、無言のまま作業のようにそれを続けた。
 何度も何度も腰を震わせて終わりのない射精を繰り返す。
 頭の中が朦朧としてきて、嬌声が抑えられなくなっていった。
「ん、あッ……あ、あッ! ひ、ああッ」
 腰を無意識に揺らしながら、快感に喘ぐ。もうこの相手が誰なのかと怯えていた事すら忘れていた。
 快感が全てで、それしか考えられなくなる。
「ふ、ぁッ……ンンッ」
 ビクン、とまた空のままイッた。甘えたような吐息が漏れる。
 快感を与えてくる相手の動きに合わせて腰を揺らした。
『……淫乱』
 声が、聞こえたような気がした。
 靄がかかったような頭の中で、それを認識する。
『誰にでもそうやって腰振ってねだるんだな』
 早口で掠れたような声音は、それと判るまで時間がかかる。
 だれ、と吐息で問いかけた。
 涙でぐしゃぐしゃになった目隠しがゆっくりと外される。
 眩しさに目を細めた途端に、身体をうつ伏せにされてディルドを抜き取られた。
 シーツの上に頬を押し付ける体勢になり、腰を高く引っ張り上げられる。
「あ、ッ」
 唐突に質量を無くした空洞へ、すぐに別のモノが突き入れられた。
 慣れたその形と感覚に、ぎゅっと中が締まる。
「……ッ」
 俺の首の後ろで、息を詰める気配がした。
 長い黒髪が俺の肩に触れている。
「い、ずみッ……あッ」
 呼ぶと中の熱が質量を増した。
 うなじに口づけてくる吐息が、笑ったように震える。
「……これだけで俺が判んのか。ホント淫乱なクセして性質悪ィな、お前……」
 和泉のそのため息混じりの言葉は、快感に朦朧としていた俺には半分も理解できなかった。










【リク消化「拘束で激しいエロ」「(連載にあったあの)例の一番大きいヤツ使ったところ」】
(入れたまま外に連れ出すシチュ未消化……orz)

2011/05/27

[ 8/20 ]


[分岐に戻る]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -