Desire (後編)
【可哀想な西君が多いです。そしてエロも濃いめですのでご注意】
「…ッん……ふ、ぅッ……んんッ」
声を堪えるのは無理だった。必死に自分の服の袖を噛んで声を殺す。
立ったまま、背後から和泉に犯されていた。
俺は下肢だけを剥かれて上半身は服を着せられたまま、和泉に至っては少し前を寛げただけの格好だった。
低木が並ぶ茂みの中、比較的大きな木の幹に手をつくよう押し付けられ、バイブを引き抜かれた。
抜かれた後も、腰に固定されていたベルトの向きを変えると、バイブは俺の性器に沿うように移動してきて、変わらず刺激を続けている。
イクことができないようにされているのに、性器に直接振動を当てられて、もどかしさに腰が揺れた。
リングは深く性器に食い込んでジクジクとした痛みを俺に与えている。
「……よく締まるのは、やっぱ外のが感じてるってことか」
耳元で和泉が囁いた。
カッと熱が上がって、恥ずかしさに赤面する。
違う、と首を横に振るとそれを咎めるように大きな手が性器を擦り上げてきて、快感に喘いだ。
「また締まった……」
和泉の吐息が、熱っぽさを帯びている。
身体の中いっぱいに含まされた性器もそろそろ達するようで、突き上げが早くなっていった。
感じる場所をぐいぐいと押し上げられて、その度に何度も射精をせき止められる。
その痛みに頭が朦朧として気を失いそうになるが、部屋の中でしている時のようには意識が飛ばせない。
ここは、外だ。そう認識している緊張感が、俺の意識を保たせていた。
「う、……ッン、んん!!」
木に縋りついていた腕がずるりと滑る。
必死にどこか掴もうと思うのに頭がどんどん下がっていって、後ろから突き上げてくる角度が変わった。
「良い格好だな」
和泉が笑いながら後ろに身体を引くと、腰を突き出すような姿勢になった。
まるで突いてくれとねだっているような姿勢に、恥ずかしくて死にたくなる。
「もう少し引っ張ってやりたかったが、……まあ汚れるからこれくらいにしとくか」
不穏な言葉が聞こえて思わず背後を振り仰いだ。
和泉は唇の端を上げて、顔を近づけてくる。
ぐいっ、と腰を押し付けられて堪え切れない喘ぎが漏れた。
「帰ったら、もういいって言うくらいイかせてやるよ」
囁かれた言葉に、無意識に身体の奥がぎゅっと締まる。そのせいで和泉のモノの形をリアルに感じて赤面した。
俺のそんな反応を見て、和泉は喉の奥で笑いを堪える。
「ア、ッ……ん、ンンッ、ひ、ああッ!!」
突き上げが激しくなり中に白濁が注がれると、俺も同時にイッた。
それでも性器から零れるのは透明な薄い液体だけで、せき止められた熱が中で渦を巻いている。
その痛みに涙が止まらなくなった。
しゃくりあげる俺の中から性器を抜いた和泉は、またスイッチの切ったバイブを俺の中に押し込んで零れ出てくる精液を止める。
足元にわだかまっていた服を引き上げられて身繕いをされ、最後にパーカーのフードを被せられた。
「……来い」
腕を引かれて、茂みを出る。
和泉の片手には、さっき何処へ置いていたのかコンビニの袋があった。
「……」
涙を拭いながら歩いていると、バイブが中を掻き回しているような錯覚に陥る。
さっきよりずっと滑りが多いせいで、下半身を水浸しにされたような情けなさがあった。
精液は、長い事中に入れられたままでいると腹痛を起こす。
それは前に和泉にやられて知っていた。
キリキリと突くような痛みに冷や汗が流れて、泣いて、我慢ができなくなって和泉に許しを乞い、洗ってもらった。
風呂場で身体の中に温めの湯を何度も入れられて、不必要なほど念入りに洗われる。その羞恥にまた泣いて、止めてくれと懇願したのはついこの間のことだ。
あの時は最後にまた、柔らかくなった中に和泉が押し入ってきて風呂場で抱かれた。
当然のように中出しをされて、再び全て洗ってベッドに寝かされた時には半分意識が無かった。
あの時のように、また痛みを与えられるんだろうか。
そう思うとあれだけ戻りたかったマンションに近づいていくのが恐ろしかった。
「……!」
マンションに入ると、無人だと思っていたエントランスに人影があった。
身体が硬直して動けなくなって、和泉を見上げる。
すると和泉は少し眉を上げただけで何も言わず、エレベーターに歩いていった。
当然俺も一緒に行くしかなく……郵便物を手にしたサラリーマン風の男と、同じエレベーターに乗る羽目になった。
無言で下を向いたまま、一番最後に箱に乗りこむ。
男が押したボタンは四階、和泉の部屋は七階だった。
エレベーターの戸が閉まると、急に身体の中のバイブが緩く振動し始めた。
「!!」
ぎゅ、と和泉のシャツを掴むが反応はない。
階が上がっていく程に、どんどんバイブの動きが大きくなっていった。
「ッ……」
声を堪えるのが困難になる。
注ぎこまれた精液で滑る中は、バイブの動きで濡れた音を響かせていた。
いつ気づかれるかと怯えていた俺は、早く四階に着けと必死に祈る。
「……!」
四階に止まったエレベーターがガクンと止まった。
いつもはそんな揺れ大して感じていなかったが、今の俺には充分キツイ。
身体を縮めて和泉の影に隠れ、小さく息を吐く。
男が降りて行って、再びエレベーターの戸が閉まった。
「和泉ッ……とめ、てッ……これ、」
箱が動き出すのと同時に訴えると、和泉は笑って俺を見た。
「あの男、お前の顔ばっかチラチラ見てたな」
「!!」
「そりゃあ泣き腫らした目して、俺にひっついて震えてれば馬鹿でも気づく。フードでも全部は隠れないしな」
下向いてて気づかなかっただろ、と言われて血の気が下がる。
和泉がリモコンを取り出して、何か操作をした。
「あ、……イ、ヤッ……あ、んんッ」
身体の奥でバイブがさっきと同じ捻るような動きを始めた。
和泉の足元に縋るように崩れ落ちる。
床に膝をついたまま、和泉の手元に手を伸ばした。止めてくれと懇願しながら見上げる。
ガクン、とエレベーターが止まった。
そのまま床にへたりこんでいた俺を、和泉が静かに見下ろしてくる。
「出ろ」
「む、りッ……いずみ、ッ!」
和泉のスニーカーに手を置いて、震えながら見上げた。
バイブの動きが激しすぎて、立つ事などできそうにない。
「手のかかる奴だな……」
ため息交じりに言って、和泉は片腕で軽々と俺を抱き上げた。
そのままエレベーターを降り、部屋まで連れて行かれる。
「この分は、別の奉仕で支払えよ」
ぐったりと運ばれるだけだった俺は、玄関に下ろされた途端にそう囁かれて身体を竦めた。
涙目で見上げると、和泉は楽しげに笑っていた。
どれも全てこいつの計算の上なんだろうと思うと、その通りの反応しかできない自分が悔しい。
それでも、抗えないほど高まった身体の疼きに屈するしか道はなかった。
ピチャ、ピチャ、とタイル張りの風呂場に濡れた音が反響していた。
俺は和泉のものを舐め上げて奉仕させられていた。銜えるには、それは幾分大きすぎる。
以前、奥まで銜えてみろと言われて無理矢理に押し込まれた時は、息苦しさに死にそうになった。
俺の口では深くは飲み込めないと判ったのか、和泉はそれから強制してこない。
ただ、舐めるのだけはよくさせられた。
俺が跪いて男の下肢に顔を埋める、その格好を見るのが楽しいのだと和泉は言った。
悔しくて辛くとも、舐めなければ酷い責めが待っていると思うと頭を垂れるしかなかった。
「……早くしないと、後ろも限界じゃないのか」
性器を戒めていたリングは既に外されていた。
固定のベルトも外されたが、バイブは依然埋め込まれたままで、振動は止まっているが中の精液もそのままだ。そのうち内壁を刺激して痛みを与えてくる。
その恐怖に背中を押されながら、必死に和泉の性器を愛撫していた。
手でも扱き上げながら、先端を口に含む。
舌先を先端に押し付けて舐めると、中からじわりと液体が滲んだ。
苦いそれを吐き出すこともできずに飲み込む。
唾液でべたべたになった性器を横から銜えて、舌を這わせた。
「……上手くなったじゃないか」
ぐい、と頭を掴まれて和泉の方を仰いだ。
その視線に恐ろしいものは含まれておらず、ホッとする。
「抜いてやるから、うつ伏せで腰を上げろ」
そのまま抜いてくれればいいのに、和泉はまだ焦らすようだった。
タイルの床に肘をついて、屈辱的な格好をさせられる。
これだけやってもまだ気に入らないのか、もっと腰を上げろと尻を叩かれた。
唇を噛んで、腰を上げる。尻を割り開く大きな手がかかって、中に和泉の指が入りこんできた。
「ふ、……ッン、あ、ぁッ」
腕に顔を伏せても堪え切れない声が漏れる。
バイブの端を掴んだ和泉の指が、それを引き出しては浅く押しこみ中で揺らしてくる。
その度にぐちゃぐちゃと音が響いて、溢れる程注がれた精液が中から零れてくるのが判った。
太股を伝うとろりとした液体の感覚に身体が震える。
「い、ずみッ……も、抜いてくれるッ、てッ」
そう言ったのに、と非難するように振り返ると、和泉は肩を竦めた。
「お前が締めすぎなせいで上手く掴めないんだ」
嘘をつけ! と叫びたくなるのを堪えて、床のタイルに爪を立てる。
ようやく弄るのを止めた和泉がそれを抜いてくれる頃には、呼吸は乱れ性器がイク寸前にまで張りつめていた。
「抜く、までが約束な」
不穏な囁きが耳に入って聞き返そうとした瞬間、一気にバイブが内壁を擦りながら出ていった。
「ッー!!」
ビクンッ、と痙攣して俺はそれだけで白濁を零した。
腰が無意識に揺れて、トクトクと何度か震えた性器が精液を滴らせる。
「何だ、これだけでイッたのか」
ちょっと早いだろ、と呆れたように言う和泉に腰を引き起こされた。
身体に全く力が入らない俺の腰を抱き寄せて、後ろから和泉が入り込んでくる。
「ん、ッ……も、ヤ……あ、あッ」
もう体力的にも限界だというのに、先程注がれたものの滑りを借りて奥まで犯された。
気がつけば、腹部に重たい痛みが凝っている。
「和泉ッ、も、……痛い、……抜、いてッ」
「どうせ流すなら一緒でいいだろ?」
許しを乞う俺の言葉など聞く気はないようで、和泉は自分勝手に腰を打ちつけてくる。
そのまま再び奥に白濁注ぎこまれ、やっと離された。
和泉のものを引き抜かれたその場所に、まだ何か入れられているような違和感がある。
とろっ、と中から滴る白濁を指先で救い上げ、和泉は笑った。
「まだ気ィ失うなよ。洗ってるうちに寝たらまた突っ込んどくからな」
温いシャワーをかけられながら、言葉を返す気力もなくただ頷いた。
行為の後に触れてくる手は時折別人のように優しい。
服を着せる手や、俺の涙を拭う指先、俺を荷物のように軽々抱き上げる強い腕、……どれを食べるのかと聞いてくる、普通の和泉もだ。
ただ犯して、俺を喰い尽して、奪い取るだけの存在だったらこんなに混乱しないのにと思う。
「……西?」
「起きてる、……ちゃんと」
問いかける声にぼそりと返事をしながら、俺は和泉の腕に身を任せて目を閉じた。
2011/05/24
[ 5/20 ]
[分岐に戻る]