Errand(前編)

(和泉西前提で、鬼畜調教中なお話です。純粋な玄西とは違いますのでご注意ください)





▼くろののところにおつかいに行かせる




 


 携帯が陽気な音を立ててメールを受信した。
 たえちゃんかな、と思ってみると相手は和泉で、げんなりとする。
 開いてみると、『忘れ物』という件名を見てハッと気がついた。
 明日はクラスの日直で、昼行燈と言われていてもその役割はそこそこ無難な程度に果たさなくてはならない。
 だから今日は、前の当番の奴から鍵を預かるはずだった。
 別に大した物が入ってるわけじゃない、日直棚と言われるロッカーを開ける為だけの鍵だ。
『お前の友達だろって、鍵を押し付けられた。今、届けに行かせたからそいつから受け取ってくれ』
 そいつ?、と首を傾げた途端にドアの方からノックの音がした。俺は携帯を閉じてドアの方へ向かう。
 和泉の彼女のことだろうか。確かたえちゃんとも知り合いで、凄く顔の可愛い……。
「……あれ?」
 ドアを開けた先に立っていたのは、俯いた格好の西だった。
「ん? 今、和泉からメールあって。それで……」
「……渡せって」
 俺が戸惑って喋ってる間に、西が右手を突き出してきた。
 チャリ、とそこに銀色の鍵がぶら下がる。
「あ、さんきゅ。……って、西? 何かお前、具合悪いの?」
「!」
 俯いた西の顔が、夕暮れの逆光でよく見えない。
 それでも潤んだような瞳が見えて、唇も強く噛み締めたままなのが判ると何か変だと思った。
「……、んでもない」
「そうか? 何でもないって風には……」
 瞬間、手に握ったままだった携帯がメールを受信した。
 陽気な音楽に、西がビクッと肩を揺らす。
 何をそんなにビビってんだと思いながら、手にしていた携帯を開いてみるとまた和泉からのメールだった。
「何だ?『あとは自由に使え』って」
「ッ……」
 鍵の事だよな、もともと俺が使うモンじゃねーの、と首を傾げていたら西がいきなり方向転換してアパートの外階段に向かった。
「あ、オイ。西……?」
「うッ、あ……ッんん」
 ほんの1mも進まないうちに、西はその場に蹲った。
 どこからか、携帯のバイブレーションのような音がする。
 俺は周囲を見回して、その音源が西の方なのを確認してから歩み寄った。
「なあ、お前携帯鳴ってね?」
「!!」
 肩を掴むと、西は蹲ったまま勢い良く顔を上げた。
 涙の雫が散って、俺は思わず呼吸を止める。
「っ、て……」
「え?、な、なに?」
 震える唇から発せられた言葉は小さくて、聞こえ難い。気が動転していたせいかよく判らず、聞き返しながら顔を寄せた。
「と、ッて……これ、早くッ」
「へ?……と、取るって」
「ぁ、ッ……も、嫌……いッ……ずみッ」
 ビクン、と西の身体が震える。
 唇からは荒い呼吸が漏れていた。
 それを間近で見ているうちに、心臓が早鐘を打ち始める。
 俺は魅入られたように西の涙を見つめていた。
「玄野、……」
 手首を掴まれて、縋るように呼ばれる。
 それだけでもう駄目だった。
 気がついたら俺は、西の身体を支えて部屋の中に連れ込んでいた。

 それが和泉の思惑通りなのだという事も、全く気がつかなかった。











 西の身体には、どうやらバイブが押しこまれているようで、『取って』というのはコレの事だったらしい。
 部屋に入れた途端に音は静かになり、西は睫毛に溜まっていた涙をゴシゴシと乱暴に擦っていた。
 番号を知っているだろう、と唐突に聞かれて何の事だか判らず首を傾げる。
 言いたく無さそうな西をとりあえず奥に移動させ、掻い摘んで説明をさせた。
 どうやらこれを仕組んだのは和泉のようだった。
 西の身体にバイブを入れたのもあいつで、それを取る鍵のナンバーを聞いて外してもらってこい、というのが指示らしい。
「でもなんで、西は和泉にそんな事されてんだ?」
「……」
「……西?」
「うるさいッ、……早くナンバーを教えろよ!」
 キレて叫ぶ西の顔は紅潮していて、瞳はまだ潤んでいた。
 そんな状態で凄まれても別に怖くもなんともない。むしろ……何だ、可愛い? 西相手に可愛いとか、俺どうかしちゃったのか?
「ナンバーとか言われても和泉にはメールとこのキーしかもらってないし……」
 日直の鍵をチャリチャリと揺らしていたら、あ、と思い出した。
 最後に送られてきたメールの文末に、変な文字化けのようなものがあったような気がして、携帯を手に取る。
「……あった、」
 短い和泉からの文面の後、四ケタの数字が入っている。
 これの事か、と思って西を見ると、いつの間にか目の前に顔があってこちらを覗き込んでいた。
「わ、!」
「……早く教えろ」
「え、あ、……開ける、んだろ? やってやるから」
「……」
「ん?」
 西は俯いて一瞬黙り込んだ。
 それから耳まで赤くなって、そっぽを向く。
「どこに付けられてんだか、……判ってて言ってんのかお前」
「へ?」
 俺が素っ頓狂な声を上げた瞬間、またあのバイブレーションの音がし始めた。
 ビクッ、と身体を跳ねさせた西が身体を縮めて唇を噛む。
「オイ、西また……」
「は、……ナンバー、教えろよッ!」
 シャツを掴まれ、西の剣幕に驚いた俺はそれを読みあげた。
 どうするつもりなのかと見ていたら、ふらりと立ち上がった西はそのままトイレに駆け込む。
 後ろからそっと追いかけて、鍵を閉め忘れているトイレの戸を少し引いてみた。
 余程慌てていたのか、ちゃんと閉める余裕さえ無かったらしい。
「ッ、は、…ッン、あ、……ックソ!」
 制服の下を脱いでいる後ろ姿が見えた。
 それと同時に、何か焦っている声と喘いでいるような甘い声が聞こえてくる。
 カチャカチャと金属の擦れる音が聞こえていたが、どうやら今の西に繊細な作業は無理なようで、一向に開く気配はなかった。
「にーし」
「!」
「……うわ、すげーなそれ……」
 後ろから忍び寄って行って、前を覗き込んでみた。
 動揺する西の手にはキツく結ばれた皮紐のようなものと、南京錠がある。
 皮紐は幅が結構あって、それが絡みつく様に性器を縛めていた。
 それはそのまま奥に伸びていて、バイブも押さえているのが判る。
 ここまで徹底的にするなんて、本当に和泉ってサドなんだなと思った。
 俺には可哀想でとてもできない気がする。
 赤黒く血の滞った性器は痛々しく震えていた。
「取ってやるから、ほら、貸せよ」
「ヤ、……い、……いいから、自分でッ」
「そんなに手震えててナンバーなんか合わせられんのかよ。意地張るなって……」
「あッ、や、……ッあ! ンンッ!」
 性器を片手で支え、その先端についているダイヤル式の南京錠に触れると、西の口から高い喘ぎ声が上がった。
 びっくりして、思わず手を離してしまう。
「ひ、ぁ、……ッあ!……」
 ずる、とその場に崩れ落ちそうになる西の身体を支えた。
 腰に手を回すと、細い身体はそれだけで捕まえられる。
 背後から抱きかかえる様にすると、西の髪が頬に当たった。
 一瞬、ドキッとする。
 ただでさえ、胸に抱いているこの身体は熱を持って温かい。その熱が移されてきたように、顔が熱くなった。
「くろの、……」
 舌っ足らずに西が俺を呼ぶ。
 俺はまたそろそろと手を伸ばして、西の性器に触れた。
「ん、……ッあ、あ! ッヤ……」
 南京錠に触れると性器が刺激されるようで、西は悲鳴のような喘ぎを漏らす。
 それは西の滲ませた液体で酷く濡れていてよく滑り、俺は鍵を何度か取り落としそうになった。 
 そうすると鍵は重みで強制的に西の性器を下へ引っ張るらしく、その度にビクビクと震えていた西はそのうち子供みたいに泣き出した。
「玄野、……ッくろの!」
「わかったわかった、……ちょっと待っててな」
 泣きじゃくる西の耳元に唇を寄せて宥めながら、数字を合わせていく。
 カチン、と小さな音がして先端の南京錠が外れた。
 それを床へ落として、すぐ巻き付けられた皮紐を外し始める。
「あ、……嫌、だッ! 玄野ッ自分でする、……ヤ、あ、ッ離し、!」
 急に暴れ出した西に驚いて、必死にその華奢な身体を抱き締めた。
 何故こんなに西が抵抗するのかが判らず、俺は性器に巻き付いていた部分だけでも、とその縛めを外してしまう。
「だ、めッだって、玄野ッ!……あ、ああぁッ!」
 西の身体が、俺の方へ凭れかかってくる。
 ビクンッ、とその身体が震えて触れていた性器から白濁が吹き出した。
 トイレに立っていたからか、それはそのまま便座の中へと落ちていき、何だか小さな子供の用を足させているような気分になる。
 そう思ったのはどうやら俺だけではないようで、西は目を伏せて震えながら沈黙していた。
 その顔が上気して、耳まで赤い。
「離せよ」
「……後ろ、もしかしてまた止まった?」
「……」
 コクン、と頷く西の仕草が妙に可愛くて、ちょっとだけ悪戯心が沸いた。
「……玄野?」
「コレって、そんなにイイんだ? 堰き止められてんの、外された途端にイッちまうくらい?」
「!」
 西の性器から、その奥へと手を伸ばした。
 縛めは外れているから、皮紐の端を引っ張るとソレはずるずると中から引き出されてくる。
 長くて太いそれをしっかりと飲み込んでいた西の中は、濡れて滑らかだった。
 引っ張る度に内壁を擦るようで、西は必死に喘ぎを堪えて唇を噛んでいる。
「こんなモン、良く入ってたよな。……また入れたら本当にはいるのかな」
「なッ……! 玄野!?……くろのッ」
 先端の方まで引き出したそれを、また中へずるずると押しこんだ。
 息を詰めて震える西は、膝をガクガクと揺らして俺に凭れてきながらそれを受け入れる。
 全てを飲み込んだ入口を、指先で辿ってみた。滑らかで、裂けてる部分はまるでない。
「流石……慣れてる、って事か。これよく使われんの?」
「……」
 西は目元に涙を溜めて、黙り込んでしまう。
 俯いている姿が妙に色気を感じさせた。
 ぞくぞくと、苛めたい欲のようなものが沸き上がってくる。
 これは、西が悪いような気がした。和泉だってこの西の様子を見ていたら、こういう事がしたくなったんだろう。
 そんな心理を理解できそうな自分が、ちょっとだけ怖かった。
「『あとは自由に使え』って、こういうことだよな?」
「ッ……」
「西さ、……それ、止めた方がいいと思うよ」
 涙を堪えて唇を噛み、項垂れた西にそう声をかける。
 一瞬、何を言われたのか判らない、という表情が浮かんだ。
 俺は苦笑して西の唇を親指でなぞった。
 そこに唇を合わせ、すぐに離す。
「真っ赤んなった唇が、エロイ」
「!!」
「しかも泣いて俯いてる顔とか、ヤバイって」
「……く、ろの」
 信じられないものを見る様な西の視線が、ちょっと痛い。
 すまん、と心の中で手を合わせながらその身体を抱き上げた。
「オレをここまで元気にしたの、お前だから。……責任とってけよな」
「なッ……!」
 押し付けた俺の身体の熱に、西はまた真っ赤な顔をして、言葉に詰まっていた。










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続く

2011/06/16

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