拍手御礼 1

▽留守番させる












「は、……ッぁ、う、……」
 ベッドシーツに身体を擦りつけるようにしながら、俺はずっと快感に喘がされていた。
 それを聞く人間は、今は誰もいない。
 平日の今日、和泉はいつもの通り学校へ行っていた。
 朝、和泉のモノを口で処理させられて、それだけで済んだと油断していたら出掛けに捕まった。
 媚薬だと言って冷たい薬を後ろへ塗りつけて、その上からローターを押しこまれる。
 付けられた薬はひりひりと粘膜を刺激して熱くて、それだけでも辛かった。
 挙げ句に道具を無理矢理押し込まれて、生理的な涙が滲む。
 ローターは電源を入れられて出力を最大に設定されたまま、コントローラーを和泉が鞄へ入れて持って行ってしまった。
 『帰ってくるまでにそれを抜いたり、薬を洗い流した場合は……別の仕置きがあると思えよ』と言われて、俺は凍りついた。
 この責め自体が、既に失敗のペナルティだった。
 昨夜、和泉の帰りが遅く暇だった俺は、洗濯でもしてみるかと洗濯機のスイッチを入れて適当に洗剤を放り込み、……洗面所を泡だらけにした。
 何が起きたのか判らない俺が茫然としていたら、丁度和泉が帰ってきて泡だらけの俺を床から拾い上げた。
 何をしてる、と言われて正直に『洗濯』と答えたら大きなため息が降ってきた。
 それ以外になんだっていうんだ。俺だって何がどうなったのか判らないのに。
『夜以外本当に無能だなお前は……』
 泡を拭くのを手伝おうとしたら、邪魔だと風呂場に入れられた。
 洗ってこいと言われて服を脱ぎシャワーを浴びていたら、後から和泉が入ってきた。
 怒っているかとびくびくする俺を、和泉はいつものように抱いた。
 風呂場のタイルの上と、湯を溜めた風呂の中と、そして出てきてからベッドでもやられてくたくたになって、漸く眠れたのは深夜だった。
 俺が何か失敗をした時、いつもは無茶な要求が足されるはずが、……確かに昨夜はこれといったものは無かった。身体は疲労するほど抱かれて充分辛かったが。
 それが、朝になってまとめてきた。
 出掛ける寸前まで油断させておいて、和泉は俺をベッドに腹這いにさせて服を剥いだ。
 驚いて逃げようとする俺の背を膝で押さえて、尻の狭間に軟膏のようなものを塗り、指を中に押し込んできた。
 肌の熱で溶けるのか、指が塗り込める度に濡れた音が立ち、俺は羞恥に顔が熱くなった。
 和泉の指は俺の快感を煽るように中を掻き回し、散々泣かせて熱を高めてから引き抜かれた。
 イク寸前の身体を放置され、恨みがましく見上げたら『これが昨日の仕置きだ』と言われた。
 油断していたところにそんな事を言われてつい反抗して暴れたら、和泉は眉を上げて俺を覗き込んできた。
 その視線に、ゾッとする。
 慌てて謝っても無駄だった。痛いほど熱を持つ内壁に卵のような形のローターを入れられて、スイッチが入れられる。
 悲鳴を上げて泣き叫ぶ俺を置いて、和泉は玄関に向ってしまった。
 帰ってくるまでは、抜いても洗っても駄目だと言い残して、ドアの閉まる音が響いた。

 それから、もう何時間もこうして苦しんでいる。
 時計を見てもまだ和泉の帰ってくる時間では無かった。
 ベッドの上は俺の吐き出した精液でところどころ濡れていて、そこに腰を擦りつける動作が止まらない。
「ん、あ、……あぁッ」
 ローターの動きは一定ではなく、たまに動きを止めて違う刺激を与えてきた。
 いつこんなモノ新しく買ったのか、和泉の使う道具は最近どんどん増えている。
 先日も、初めて見る丸いビーズの連なったような道具を使われた。
 全てを押しこんでから『ひと粒づつ出してみろ』と言われ泣きながらそれを和泉の前に晒した。
 途中、もう無理だと抵抗すると、腹の上から手で押されてビーズが内壁に擦れるようにされ、痛みと快感に泣かされる。
 もう少しで終わる、あと数個、と思うと和泉は俺が休んでいたからとまた中にそれを押しこんでしまい、何度かふりだしに戻った。
 涙でぐしゃぐしゃになりながら全てをちゃんとやり終えると、和泉はタオルで俺の顔を拭ってくれた。
 その後は普通に貫かれるだけでも中が敏感に反応して、強く和泉のモノを締めつけながら何度もイッた。
 煽られ続けた身体は和泉を求めていて、気が狂いそうなくらい感じている俺に和泉も苦笑するほどだった。
 先に俺の身体だけ熱を高められるのは辛い。
 和泉が近づくだけで、身体が期待に震える。
 早く触れて欲しいと足元へ縋りたくなってしまう。
 そんなのは異常だ、と頭の中で理性が叫んでも、身体が熱に支配されているとどうにもならない。
「ふ、ぁッ……ンンッ、い、ずみッ」
 振動を強めたローターがだんだんと下に降りてきていた。
 このままだと抜けてしまう。
 自分で抜いたんじゃないと言い訳しても、これがベッドの上に落ちていたら和泉は絶対に信じてくれないだろう。
 そろ、と片手を後ろへ伸ばした。
 ベッドに四つん這いのまま腰を上げて、腫れた様に膨れた入口に指を押しこむ。
「ッ……、んぁッ」
 指が白くなるほどシーツを握り締めて快感に耐える。
 ブルブルと震えている無機質な機械を奥へと押しこむと、感じる場所を掠めてしまい膝が震えた。
 早く、早く、と呪文のような言葉が頭の中を回っていた。
 和泉に早く帰ってきて欲しい。そしてこの身体に触れて、解放して欲しい。
 快感に蕩けた俺の頭の中を占めるのはそれだけだった。
 強すぎる快感に気を失う事も出来ず、俺は涙でシーツに染みを作りながら、和泉の帰りをひたすらに待った。









 ガチャン、と玄関の戸が開く音がした。
 それに気づいて顔を上げると、和泉がベッドの傍に近寄ってきて俺の顔を覗き込んだ。
「いずみ、……」
「随分良かったみたいだな」
 俺の身体もシーツも、吐き出した精液で汚れている。
 それを指摘されるとほんの少しまだ残っていた思考が、羞恥に焼けるようだった。
 頬を撫でられるとそれだけで震えるほど感じてしまい、熱い吐息が漏れる。
「仕置きのつもりが、いつも意味が無い……」
「あ、ッ……ヤ、待ッ」
 太股を高く持ち上げられて、膝を開かれた。
 振動しているローターをそのままに、入口に和泉のモノが押しあてられる。
「和泉ッ!……ヤ、嫌だ、抜いてッ……や、ああああッ!!」
 ズッ、と侵入してきた和泉の質量が、蕩けた内壁をいっぱいに押し広げていく。
 奥へと押し上げられていくローターは震えたままで、今までにないほど深い場所まで犯された。
 止めて、抜いて、と哀願する俺に和泉は宥めるようなキスをくれるだけで、腰を打ちつけてくる。
 視界が白く焼けるほどの快感が襲った。
 感じすぎて快感が痛いほどで、苦しくて、辛くて涙が溢れる。
「……西?」
「ふ、ぇ……ッ、和泉ィ……」
 縋りつく様に手を伸ばすと、和泉は俺の手を握り返してきた。
 そのまま腕に抱き締められる。
 和泉が身体を倒すと繋がりは深くなって、中は余計に圧迫されて苦しくなった。
 でも抱かれる安心感の方がずっと勝っている。
 俺は震える手で和泉の背に爪を立てていた。
「……ッ、引っ掻くな。オイ」
 和泉は笑いながら言って、でもそのまま俺の好きにさせてくれる。
 俺は全力で広い背中に縋りながら、与えられる熱に翻弄されていた。





「和泉」
「ん?」
「……腰が痛い」
「まあ、あれだけヤればそうなるだろうな」
「起きられない……」
「……」
「風呂、入りたいんだけど」
「……ちょっと待ってろ、湯入れてから運んでやるから」
「うん」
「本ッ当に、世話のやける奴だな……」
「……」
「まあペットなんてそんなもんか」
「……」





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役に立たないと言われて悔しくて、「やってやる!」と思い手を出すので、余計に和泉の用事が増えるのです。
そしてお仕置きの連鎖になるのでした。

おそまつ。



拍手ありがとうございました!


2011/06/12




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