WORDS FAIL ME  試し読み




【和泉side】







 ベッドの上に膝を突いて、西が俺の下肢に顔を埋めていた。
 苦しそうに性器を含み必死に愛撫をしている。
 いつもは泣きそうな顔をして強制されている行為を、今日は熱心にやっていた。
 珍しくこいつがこんなに必死になっているのには、理由がある。
「……お前のが先にイクんじゃねえ?」
 俺の呆れたような声音に、ちらりと涙ぐんだ瞳が向けられた。
 西の下肢にはローターが埋め込まれていて、尻尾のようにピンク色のコードが垂れ下がっている。
 太股に沿うようにシーツに落ちたコードの先には振動調節のリモコンがあった。
 それは今、最大の出力になっているはずだ。
 耳を澄ますと、西が俺のモノに舌を這わせる濡れた音に紛れて、バイブレーションの音が聞こえてくる。
 ヴヴヴッ、と響く低い振動は、西の身体の奥の性感帯を刺激しているはずだった。
 その快感が強すぎるのか西は時折動きを止めて、呼吸を整えている。
 西は拙いながらも両手で俺の性器を扱き上げ、先端を口に含んだり舐めたりを繰り返していた。
 その努力の甲斐はあり、俺のモノは少しづつ形を変えている。
 しかしそれよりも、西の身体の方がずっと限界に近いように見える。
 触れなくとも判る、イク寸前の泣きそうな喘ぎが漏れていた。
「そろろそ終わりだな?」
 頬にかかる黒髪を撫でてやると、西は違うというように首を横に振る。
 息を乱しながら性器を頬張る様子を眺めて、俺は肩を竦めた。
 これは賭けだった。
 西は俺をイかせられたら勝ち、俺の使う道具に耐えられず先にイッたら負け。
 その間、俺はなるべく西の身体に触れないこと。それがルールだった。
 最近になって始めたゲームだが、西はいつも自分が負けるというのにギリギリまで認めようとしない。
 そもそもこいつの身体は快感に弱い。直接中に刺激を与えられて、そう長く我慢などできるはずがなかった。
 そのうち西の身体がビクビクと震え、下肢を押さえこんだまま蹲ってしまう。
「またお前の、負け」
 俺は唇の端を上げて笑い、西の頭を自分の下肢から引き剥がした。
「ン、……は、ッく」
 唾液に濡れた性器を引き抜かれて、西は片手で目元を擦る。
「まだ、イッてない……」
「そうか? 見せてみろよ」
「ッ! いずみッ、ズルイ!」
 西の身体をシーツに押し付け、隠そうとする足を無理矢理に開かせる。
 震えながら熱を堪える性器が上を向いて存在を主張していた。
 透明な液体が後から後から零れ落ちてきていて、それ全体が濡れているように見える。
「ほ、ら……まだ、負けたわけじゃ、……」
 そんな場所を凝視されているのが恥ずかしいのか、西は目を逸らしながらそう言った。
 俺はため息をついて、シーツの上にのたくっていたコードを掴む。
「なッ……和泉ッ、道具使う以外しないって」
 抗議するような西の声に、俺は頷いた。
「使うのは、これだけだろ?」
「え、…ッひ、ヤ、……あああっ!」
 振動したままのローターを、コードの先を掴んで引っ張り出した。
 内壁を擦られ引き抜かれる感覚に、西は高い嬌声を上げて白濁を吐き出す。
 俺が仰向けにさせていたせいで、何度もトクトクと精液を吹き出し自分の下肢を濡らしていた。
 涙目で抗議してくる西を無視して、ローターの電源を切る。
「お前の、負け」
 ベッドサイドから楕円形の粒を拾い、西の顎を片手で持ち上げた。
 口を開けろ、と促すと首を横に振って抵抗する。
 まだ自分が負けたと認めたくないらしい。こういう勝ち負けになると強情な奴だ。
「なら、こっちにするか」
「!」
 精液に塗れている下肢の、性器の根元へそれを置いた。
 慌てて退かそうと伸ばした西の手を拘束して、シーツの上に縫いとめる。
「往生際が悪いな。負けたんだろ?」
「和泉の、ッ……卑怯者!」
 悲鳴のような抗議を俺はまた聞き流した。
 パチン、と小さな破裂音がして種の開く気配がする。
「い、ヤ……和泉ッ! 離せ! 離し、……ッ!」
 暴れる腕を押さえつけたまま、西の下肢に視線を落とした。
 そこには、先程までは無かった緑色のふわふわした塊が丸まっている。
 丁度西の腹部の上にそれは置かれていて、一瞬にしてパチン、とまた弾けた。
「嫌だ、ヤ……ッ!」
 精液の広がっていた部分を中心に、緑色の細い蔦が伸びていく。
 肌の上をぞろぞろとそれが這う感触に、西は総毛立って悲鳴を上げた。
 ぴちゃり、と音をたて白濁を取り込んだソレは、西の身体の隅々まで蔦を伸ばして撫で回し始める。
「やっぱり、お前は随分気に入られてるみたいだな」
「和泉ッ、た、すけッ……あ、ッ……あッ、ンン」
 ほんの小さな種だったそれは、細い緑の手を伸ばして西の小さな乳首を捻り出し、愛撫を始める。
 下肢に伸ばされた蔦は性器の根元に巻き付き、それをやんわりと刺激していた。
 そして蔦の中心にあった塊が、ぞろりと太股の間に移動していく。
「!……ヤ、待ッ、和泉ッ、い、やああぁぁぁッ」
 先程、俺が散々突き上げて白濁を注ぎ込んだその場所へ、緑の物体が頭を押しこんだ。
 大きさがそこに合わせて変化するらしく、ずるずると細くなりながら奥へと進んでいく。
 悲鳴を上げて頭を横に振る西は、もう何度も入りこまれているクセにまだその感覚に慣れないらしい。
 ず、ず、とゆっくりソレは進んでいき、西の下肢に埋まっていった。
 途中、どうやら俺の吐き出した精液をとりこんでいるらしく蔦の先端がぴくぴくと揺れている。
 こいつの養分は、人間の体液だという。
 それは血液でもいいし、唾液でも涙でも、勿論精液だって構わない。
 人間を殺しても勿論食料は手に入るが、殺さずに寄生すればいくらでも食事が出来る、とこいつらは思っているらしい。
 始めは女に寄生して膣の中に入り込むイキモノだったらしいが。
 ……今は、西の身体をやけに気に入っているようだ。
「ふ、ぁッ……んくッ、は……」
 蔦が伸びてきて、西の口腔へ侵入を始めた。
 唾液を啜りながら太い先端で口の中を犯している。
 こいつの動きは、実は俺そのものだった。
 何故そうなったかというと、話は少し前に遡る。


       ‡


 あるミッションの途中、メインの星人の他に様々な植物の形をした星人が現れた。
 バラやパンジー、ヒマワリやアサガオなど季節も何もあったものじゃない、巨大化した花々に囲まれて、メンバーは皆辟易していた。
 戦闘場所もどうやら新宿御苑の中のようで、広い敷地の中植物に捕まらないようにしながら走る。
 女のメンバーが一人、『アリスみたいね』と言ったのを皆で笑い飛ばした。
 ガンツの選んだメインの星人は「はなさか星人」といって、どうやら爺さんの格好をしているらしい。
 戦闘に慣れたメンバーはそれも馬鹿にしながら銃を手に取っていたが、俺は妙に嫌な予感がしていた。
 転送されたと同時に西はまた姿を消していて、気配だけが近くに感じられる。
 途中、行く手を塞いだ小さな花々をソードで切り裂きながら進む。
 その先の広場で、星人はザルを頭に被って芝生の上で昼寝をしていた。
 そこへ全員が遠距離から銃を乱射して、一瞬にして芝生は爆煙に包まれる。
 あまりの呆気なさに皆が気を抜いた刹那、突然土の中から大量の植物が蔓を伸ばしてきた。
 今までふわふわと動き回るだけだった巨大な花達が、一斉にメンバーを襲い始める。
 十人程いたメンバーがすぐに腕や足を千切られて血を啜られた。
 吸血植物か、と思いながら襲ってくる蔓を避けてあの星人を探した。
 あいつがまだ死んでいないから、転送も始まらない。
 この植物達はメインのターゲットじゃない。全てを倒し尽くさなくとも、帰る事のできるザコ達だ。
 ソードで植物を薙ぎ払いながらさっきの広場の中心へ走る。
 横目でチラリと後ろを見ると、バチバチと電子の光が散るのが見えた。
 西か、と思い傍らにその気配を感じつつ、目的地へ全力で走った。
 植物の蔦に囲まれながら、その中心に爺は変わらず寝転んでいた。
 西が舌打ちをしてXガンを構え、引き金を引く。
 その瞬間耳元で風を切るような音が聞こえて、俺は反射的にその場から飛び退いた。
 バンッ、と音がして地面が破裂する。
 西はそれに飲まれて砂塵の中に消えた。
「西!」
 気がつくと、ドームのように丸まった蔦の壁が出来ていた。
 その壁に所々引っかけられるようにしてガンツメンバーが血を啜られている。
 苦痛のうめき声と血の匂いが辺りを支配していた。
「……」
 負傷者はどれもまだ死んではいないようだった。
 視線を巡らせてその中に西がいないか探す。
「ッ、……クソッ、離せ!」
 バチバチとステルス機能が解除される光が見えた。
 蔦に絡め取られるようにして西の姿が現れる。
 ドームの下の方、植物の根元に近い部分にいるらしく、手にはソードを持っていた。
 どうやらこの植物を根から断とうとして、見つかったらしい。
「西!」
 声をかけると、こちらに気付いて西が振り向いた。
 何か言おうと口を開いたその中へ、植物の蔓が入り込んでいく。
「ん、っぐ……ッンン」
 唾液に濡れた蔓が歓喜するように揺れ、西の身体を弄り回し始める。
 ガンツスーツの上から撫で、隙間を探して彷徨っていた。
「……何、だ、こいつら……」
 急に動きを変えてこちらににじり寄ってくる蔓達を、ソードで払い落す。
 西の方へ近づこうにも、目の前を塞がれて進めなくなった。
 刹那、鋭い悲鳴が聞こえて、俺はドームの上の方を見上げる。
 ガンツスーツを切り裂かれ血まみれになった女のメンバー達が、太い蔓に犯されていた。
 それを近くで見ている他の奴らも口と下肢を塞がれている。
 血と粘液を吸い込む度に、あたりの蔦が活性化しポツポツと蕾をつけはじめた。
 悲鳴を上げる口を太い蔦で塞がれた女の横で、鮮やかな花が開く。
「……食ってる、のか」
 舌打ちをしてショットガンを片手に構え直した。壁のように覆っている蔓を手当たり次第に壊して行き、道を作りながら走った。
 ドームの中心にいるあの星人を倒さなくては、全員このまま嬲り殺しになるだけだ。
 絡みついてくる蔦を薙ぎ払い、開けたドームの中心が見えるとそこへショットガンの連射を始めた。
 砂埃の向こうにまだ星人の気配がしている。
 俺はショットガンを捨てて両手に刀を構え、その気配に向けて一気に突っ込んだ。
 寝転んでいた爺は流石に立ち上がってこちらを向いていたが、煙に紛れて攻撃したにも関わらずその足元から植物の盾が現れる。
 そんなものは、予測済みだった。
 刀に全身の力を込めて地面を蹴る。
 強い手応えがあったが、耳元で音をたてるガンツスーツの出力の方が勝っていた。
 ドンッ、と盾の向こう側の肉体に深くソードが刺さる感触がする。
『……お前、名前は?』
 しわがれた、楽しげな声で星人が囁いた。
「何でお前なんかに名乗る必要がある」
『名前、は?』
 聞いていないのか、聞く気がないのか、星人は同じ質問を繰り返す。
 俺はソードを引き抜き、蔓の盾を薙ぎ払うと星人の首を切り落とした。
「和泉、紫音。……もう聞こえないだろうけどな」
 ごろりと転がった首にはまだ、無傷のままのザルが乗っかっていた。
 こいつもしかしてザルが本体なのか?、と少し不審に思う。
 念の為、とその頭も真っ二つにしておこうとソードを振り下ろした瞬間、断末魔の叫びが響いた。
『しおん、……シオンとは、これかね?』
 パッ、と割れた頭の真ん中から植物が芽吹いた。
 それはみるみる育ち、俺の背丈ほどになると菊のよう薄紫の花を咲かせ、はらはらと散っていく。
 花弁が散るのと同時に茎も葉も一気に茶色に枯れて、消えていった。
「……」
 何とも気味の悪い反応だった。
 俺は舌打ちをして辺りを見回し、西の気配を探して走り出す。
 転送されれば問題ないが、まさか死んではいないだろうな? と一瞬気にかかった。
 植物の勢いは星人が死んだせいか衰えていて、もう行く手を妨げるものはない。
 転送はまだか、と思いながら植物の蔓を払い除けた。
「ン、ふぁ、……は、ぁッ」
 蔓を払ったすぐ目の前に、西の半裸の身体があった。
 俺は驚いて手を止める。
 ガンツスーツはさっきの女達のように切り裂かれているわけではなく、やり方を変えたのか丁寧にパーツを外してある。
 薄赤くに頬を染めて、西は蔓の愛撫に翻弄されていた。
 快感に零した涙さえ吸い取られ、口の中や性器の先端まで塞がれている。
 性器の根元を擦るものと、その先端から中へ侵入する蔓が、忙しなく動いていた。
 先走りの一滴さえ逃さない吸い上げに西の身体はビクビクと震えて、何度もイかされているらしい。
「……西」
 声をかけると、涙に濡れた瞳がこちらに向けられた。
 驚いたように目を見開き、嫌、と首を横に振る。
「見、るな、……ッん、ヤぁ、あッん、くッ」
 悲鳴を上げた口が、太い蔓に塞がれた。
 俺は咄嗟にその蔓を掴んで引いたが、中で何かがドクドクと動いている感触がして眉を顰める。
 その瞬間、間の悪い事に自分の指先が消え始めているのが見えた。
 転送か、と思い目を細める。
 西は死んでいなかったが、これをこのまま置いて行く気にはなれなかった。
「ガンツ、……西を先に出来なかったのかオイ」
 俺の呟きに勿論返事はなかった。
「ンン、ぐッ、……ふ、んぐ、ッ……」
 何か強制的に飲まされているような、西の苦しげな声を聞きながら転送される。
 畜生、と呟くがそれ以上蔓を掴んで居られず、西の口を深く犯すそれを眺めるしかできなかった。






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こんな導入ですけど、和泉の鬼畜攻です。
言葉責めとか多いかも。
苛めたい泣かせたい、ていう和泉の愛情です。

あと触手と西君の自慰とかあります(…)

うん、なんかこんなにエロばっかでいいのかなこの本……ていう構成になりました。
和泉サイド、とあるように最後に西君サイドがありますよ。

そんなかんじです。
ギャグじゃなくてちょっと真面目にラブラブかもしれない。



2011/06/06
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