リクエスト企画05

・大学生和泉と高校生西(車でエロ的なもの)











 滑らかに動く、この車は振動が少ないようだった。
 乗り込んで走り出した時にはそう思ったはずなのに、今は僅かな揺れでさえも忌々しく思う。
「……ッ……和泉」
「もうすぐ着く」
「でも、……」
 言い淀む俺を、和泉はチラリと横目で見遣った。
 その唇が笑みに歪んでいるのが、腹立たしい。
「我慢出来ないのか?」
「だ、ッて……」
 身体の奥に埋め込まれている小さな異物は、ジリジリと炙る様に俺の熱を上げさせていた。
 操作用のリモコンは勿論和泉の手元にある。それは先程から微妙に強弱を変化させていた。
 その程度の刺激でみっともなく息が上がるのが、恥ずかしくて情けない。
 涼しい顔をしている和泉が、どんな魂胆でこんな遊びを始めたのか、俺にはまだ全く分かっていなかった。






 自宅よりだいぶ離れた私立高校へ通い始めると、周囲は全員知らない相手ばかりで、あの中学の頃の面倒事は一切無くなった。
 中学の噂を聞いた事のある奴は一人もおらず、俺はただ無言で毎日を過ごしている。
 時折話しかけてくるクラスメイトに適当な相槌を打って対応すると、相手はホッとしたような表情を浮かべていた。
 どうやらこの人畜無害な羊の群れは、俺が害あるものかどうか見極めるのに気を配っているらしい。
 それが判ってから、俺は何となく周囲への拒絶を弱めた。
 攻撃性から、無関心に変えただけともいう。
 何にも興味は無かった。高一の夏を過ぎても一人で登下校しているのは俺だけだったが、それで構わないと思っていた。
 秋を感じるような冷たい風の中首を竦め、またいつもの通り一人で校門を出る。
 すると通りを挟んで向こう側に車が一台停まっていた。
 チラチラと生徒達が視線を遣りながら通り過ぎている。
 車の傍には、長身の男が立っていた。
 高校の時よりほんの少し髪を切った、……私服の和泉だ。
『!』
 もう何年も、和泉との関係は続いていた。
 気紛れに呼び出されて、和泉の家で抱かれまた何事も無かったように帰る。
 そんな日常をずっと過ごしていて、そろそろ飽きるんじゃないかと思うが、呼び出される頻度は一カ月トータルにするとあまり変わっていない。
 こいつには彼女もいるはずだが、何を好きこのんで男まで抱こうというのか判らなかった。
 大学に入ったのと同時に和泉は車の免許を取っていたはずだ。それは知っている。
 大学に通う為に引っ越した先が、キャンパスには近いが辺鄙な場所にあるマンションで、バイクか車がないと面倒な土地だと聞いた。
 不便な場所だけあって賃貸の価格は安いのか、かなり広めの部屋だったが……。
『……西』
 他人のフリをして通り過ぎようとしたら、呼び止められた。周囲の生徒達と共に硬直している間に腕を取られ、強引に車の方へ引っ張られていく。
 唖然、とした様子で見送る校門前の奴らの視線が痛い。
 気まずい。面倒くさい。……久しぶりに明日は学校に行きたくないと思った。金曜日だったのが幸いか。
『お前、やっぱり帰りも一人なんだな』
 運転席からそんなセリフが聞こえて、『放っとけ』と吐き捨てた。
 何故か上機嫌で笑った和泉が、車を走らせる。その滑らかな動きでこの車がいつものモノと違うと感じた。
『兄貴が今日から出張で、その間借りてきた』
『……へぇ』
『こっちのが広いだろ』
 言われてみて初めて、確かにシートがゆったりしているような、と辺りを見回した。
 その瞬間、緩やかに車が停まる。学校の裏手の塀の横、人気のない辺りで車は停車していた。
 和泉の手が伸びてきて、俺のシートベルトを横からカチッと装着する。
 口を開いて何かを言う前に、その手は下肢に伸びてきてしまい俺はうろたえた。
 和泉が突然行為を仕掛けてくるのは、いつものことだった。いちいち文句を言っても、こいつはしたいようにしかしない性格だ。
 しかし今は、夕方近いとはいえまだ明るくて、しかも此処は学校の近くで誰が通るとも分からない道だった。
 止めろ、と制止の声をかけると和泉の眉が面白がるように上がる。
 ゾッ、と背筋を冷たいものが走った。
 そういう表情をする時の和泉には、酷い目に遭わされた記憶しかない。
『……、ッ』
『此処で駄目なら、最後まではしない。……家まで我慢出来るんだよな?』  
 口づけと共に与えられたのは、疑問形をした死刑宣告のようなものだった。
 和泉はシートベルトに阻まれて上手く動けない俺の服を乱し、ジェル塗れのローターを挿入した。それから、胸や性器に触れて中途半端に愛撫をしていく。
 俺が助けを求める寸前で手を離し、その手はハンドルへ移ってしまった。
 スイッチを入れられたローターは俺の身体を苛み続けていて、必死に身体を縮めて声と快感を堪える。
 それでも、すぐに限界はきた。
 和泉、と泣きながら訴えるとカチリと音がしてローターの振動が止まる。
 車は暗い路地に停車していた。すっかり日は暮れていて、外灯の明かりが少し遠くに見える。
『どうしたいのか、……言ってみな』
 和泉がシートベルトを外す気配がして、その音だけでも身体が期待に震えた。
 俺は唇を噛んで俯いてから、震える声で囁く。
 俺のねだる言葉を聞いて、和泉は笑みを刻んだままの唇で深く口づけてきた。




「ん、ッ……あ、ぁ、ッ……ヤ、和泉ッ」
 シートを倒されて、俺の上には和泉が被さってきていた。片足だけ高く持ち上げられた下肢からは、濡れた音が響いている。
「そんなにイイのか? ……いつもよりキツい」
「やッ……だ、ッ……抜いて、も、……やッああ!」
 深く奥を突かれると、その先で振動しているローターがより奥に侵入してきて息苦しい。
 和泉は、あの玩具を抜かないまま俺を犯した。
 珍しくゴムをしていると思ったら、兄貴の車だと言っていた事を思い出す。
 汚したくないのなら、何故こんな事を仕掛けてきたのか。和泉の行動は謎だらけだ。
「い、ずみッ……もう、奥のッ……抜いて、ッ!」
「こんなに感じておいて今更抜けって?」
 ぎゅ、と和泉の手が俺の性器に触れた。そこにも先程ゴムをかけられてしまって、震えながら先走りを零している。
「や、だ……これ、嫌……あ、あぁッ!」
 ローターが急に振動を強めた。同時に和泉は大きな手で俺の性器を掴み、扱きあげる動作を続けている。
 快感が強すぎて目の前が真っ白になるような錯覚に陥り、俺は白濁を吐き出した。
 びくびくと震えて達する俺の性器に触れたまま、和泉は腰を打ちつけてくる。
 イッたばかりの敏感な身体を何度も突かれて、悲鳴のような喘ぎが漏れた。
 口づけられながら俺の中で和泉もイッて、中には出されなかったが熱い感覚が身体の奥に刻まれる。
 ズルリと和泉のモノが引き出されると、喪失感に身体が空っぽになったような気がした。
「まだ足りないって顔してるな?」
 顎の下をくすぐるように触れられて、俺は目を細めた。
 否定の言葉を口にしなくては、と理性は叫んでいる。
 でも、身体の欲求に逆らう事は出来そうになかった。
「抜いてやるから、今度はお前が乗ってみな」
 シートベルトを外されると、そんな爆弾が落とされた。
 こいつはどれだけ俺で遊べば気が済むんだろう。
 恥ずかしがれば恥ずかしがるほど、楽しませるのは判っていた。それでも羞恥で頬が熱くなる。
 俺の下で笑っている和泉を直視することができないまま、俺は相手の下肢を跨いでいった。






 和泉のマンションに戻れたのは、もう深夜も近い時間帯だった。
 足元のおぼつかない俺の身体を抱えるようにして、和泉は駐車場のエレベーターから部屋へ移動した。
 その間誰とも出会わなかったのは幸いだった。
 俺の中には結局大量の精液が吐き出されていて、それをローターで蓋されているような状態だったからだ。
 部屋に着くと、玄関で和泉に服を脱がされた。
 そのままバスルームに運ばれて洗われながらまた抱かれる。
 スイッチの止められたローターを自分で出してみろと言われて四つん這いにされ、身体を弄られた。
 快感に喘ぎながら指を入れようとすると、手は使わずにやれと阻まれてしまい涙が滲む。
 背後から凝視されながら言われた通りにローターを身体の奥から出そうとすると、和泉は散々邪魔をしてきた。
 途中指を突っ込まれたりスイッチを入れられたり、性器を愛撫されたりして喉が枯れるまで喘がされる。
 抗議をしても和泉の手は止まる事無く、漸くタイルの上にローターが転がり落ちた時には息が乱れて俺は動けなくなっていた。
 ぐったりと床に倒れていると、そのまま抱き起こされて今度は湯の中で犯される。
 何度出されたのか、自分でも何度イッたのか判らなくなるほど犯されて、俺はいつの間にか気を失っていた。

 気がつくとシーツの上で眠っていた。
 見回すと和泉の姿がみえず、ゆっくりと身体を起こす。
 腰が鈍く痛んだが、ベッドから降りてそのへんのシャツを羽織った。袖の長さにああ和泉のだったかと思う。
 他を探すのが面倒で、そのままフローリングの床をぺたぺたと進み寝室を出る。
 すると、リビングの方のソファに和泉が座っているのが見えた。
「……、いま何時」
「起きたのか。……今は七時半だな」
 早ッ、と呟くと和泉が笑って俺の手を掴みソファへ座らせた。
 土曜に起きる時間帯じゃなかった。もう少し眠れば良かったかと思っていると、首筋に吐息がかかる。
「……オイ、和泉」
「お前が、どういう高校生活してんだか気になった」
「?」
 俺の首筋に顔を埋めてきている和泉の表情は、こちらからは全く見えない。
「新しい環境は、……お前をどう変えるのかとか?」
 喉の奥で笑う気配がした。和泉の声はゆったりと低く、掠れている。
 それが珍しく弱気のような気がして、胸の中がザワザワとする。
「……変わんねぇよ」
「……」
「俺は俺だし、学校はクソつまんねーし、俺はいつも一人でいい」
 和泉が何を言っているのか、よくは判らなかった。
 でも『何か』を不安に思っているように感じて、そう口にする。
 すると和泉は、肩を震わせて笑った。
「頑固だなお前は」
「は?」
「これからいくらでもお前の世界は広がっていくはずなのに、お前はそれに目を向けない」
「面倒くさい」
 即答すると、和泉は俺の身体から手を離して吹き出した。
 ひとしきり笑った後、髪を掻き上げて目を細める。
 その一瞬の視線に、どきり心臓が跳ねた。
「俺は、……お前の方が先に飽きると思ってた」
「ああ?」
「いや、こっちのことだ。何でも無い」
 抱き寄せられてソファに押し倒される。唇が重なってきて、シャツをはおっただけの身体を長い指が辿っていった。
 すぐに息が乱れて、身体に熱が凝ってくる。
「朝飯食ったら、出掛ける」
「へぇ、……」
「お前も一緒に、車で」
「……何処にだよ」
 首筋に赤い跡がつけられ、そのくすぐったさに身体を竦めた。
「海沿いあたり走ってみるか……」
「何だそれ? 行き先決まってねぇのかよ」
「ヤる事だけは決まってるな」
「……。サイテーだろそれ」
 俺が低く呟くと、和泉は喉の奥で堪えるように笑った。
 そのまま俺の胸元に口づけを移動してくる。
 ぼそりと呟いた言葉の意味は、やはり俺には理解できなかった。
 それでも和泉は笑っていたから、まあいいかと思う事にする。

「お前の世界が開く前に、俺でいっぱいになるように」

 和泉の囁きは、俺の心臓の上に静かに刻まれていった。






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いつかお互いがお互いに興味を失うんじゃないかって漠然と思っているんだけど

別にそんな日こないんじゃないかなーとおもうんですよねー。







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