リクエスト企画 01

【リク内容 / ちび西と和泉+玉】











「オイ、どういう事なんだガンツ……」
 採点前にガンツに返答を急かした事など、今まではほとんどなかった。
 それが、今回はどうしても聞かざるを得ない状況にある。
「……」
 部屋の中の誰もが声を失っていた。
 その視線の中心で、きょとんとした表情をしているのは西だ。
 いや、正確には西だったものというか、……何とも言い表し難い。
「……西って小さい頃、可愛かったんだな」
「いや加藤、今でも充分小さ……てか子供だったろ」
「あら、中学生と小学生じゃあ随分違うわ、玄野君」
「……小学校に入ったくらいですかねぇ……」
 誰もが勝手な事を呟きながら、だぼついたパーカーを着ている西の周りを囲んでいた。足元にはサイズの合わなかったらしい服がわだかまって落ちている。
 周りのメンバーの言葉通り、西は……縮んでいた。全体的な尺がというのではなく、年齢そのものが、だ。
 きょろきょろと落ちつかない視線を周囲に投げていて、まるで初めて転送されてきた子供のようだった。
 だが、今はミッション終了後だ。これでミッション前なのだとしたら、ただ似ているだけで別人だと思うことも出来たが。
「もしかして記憶もないのか?」
 玄野が西の頭をポンポンと叩いて首を傾げている。
 するとくしゃりと唐突に顔を歪ませた小さな西は、パタパタと裸足で走ってきて俺の足に飛びついた。
「……」
 誰もが再び沈黙する。
 何で俺だ、と思いながらもパーカーの背を軽く叩いてやると小さくしゃくり上げて泣いているのが分かった。
 これは完全に記憶が無いな、と思いため息をついて玄野に視線を遣る。
 なるほど、とそれだけで玄野は理解したように頷いた。
 それからこちらを見てニヤついているのが、何となく気に食わない。
「西、オイ離せ」
「……ヤ」
 視線を集めていることが妙に居心地悪く、微笑ましげに見られるのも嫌だった俺は強引に西の手を外させた。
 すると、ぼろぼろと大粒の涙を溢れさせながら西は俺を見上げて「嫌!」と大声で叫び、もう一度抱きついてくる。
「……お前な」
 もうどうにでもなれ、とヤケになってそのままにさせておいた。
 この際部屋の中のメンバーの生温い視線など無視しておくことにする。






 採点も全て終わった後、ガンツは再び両側のラックを開き、中から出てきた。
「……西くん」
 呼びかける声に西は顔を上げて、今度はそちらに飛びついていった。
 もう泣いてはいないようで、ガンツは小さな西の身体を抱き上げてゆらゆらとあやすように歩き出した。
「さっきの星人の、最後の攻撃を受けたらしい」
「普通、転送されればそういうのは戻るんじゃないのか?」
 ガンツの言葉に、加藤が慌てたように声を上げた。
「肉体的ダメージについては再生をする、……ただこれはどこも怪我をしていなかったから『肉体の異常』とはとられなかったようで、……」
 不意に、ぺちぺち、とガンツの頭を西が興味深げに叩いている音が部屋に響く。
 いつの間にか抱きあげた体勢から肩車に変わっていた。
 その様子を見て玄野が堪らず吹き出す。
「け、計ちゃん……笑ってる場合じゃ……」
「いや、分かってんだけどさ。……西が、」
 ぺちん、と再び毛の無いガンツの頭を西の小さな手が叩いた。
「あっち」
「うん」
 西がガンツの頭を叩きながら指示を出し、部屋の中を歩いている。次の瞬間、加藤まで吹き出して堪えていた奴らが皆笑い出した。
「……」
 きょとん、とまた西が不思議そうな顔をしてガンツに視線を送る。
 さあ何だろう? という顔をガンツがすると西は再び俺を見た。
「あっち」
「和泉くん?」
 こくりと頷く西を見て、ガンツは俺の前まで歩いて来る。
 そして当然のことのように西を手渡してきた。
「……」 
 促されるまま受け取ってしまい、両腕で小さな身体を支える。西は俺の顔を見上げて手を伸ばしてきた。
 ぎゅ、と髪を一房掴まれ不意に引かれる。
「あっち」
 この俺に歩けっつーのかこのガキは。
 そう思った瞬間、部屋の中で大爆笑が起きていた。
 持て余すとかそういう問題じゃない、何の嫌がらせだこれは。
「い、和泉……子供のすることだから……」
 俺の眉間に皺が寄ったのが分かったのか、加藤が慌てて声をかけてくる。
「そこで怒るとか、大人げないぞ和泉」
 続いて玄野の声がして、俺は深いため息をついた。
「ガンツ。……それでコレをどうしろっていうんだ」
 少し調べるから持っていて、と言われガンツ玉の前に立つ。
 スキャンの光が再び西の身体を撫でていき、幾分支えている重みが増した。
「……ガンツ」
『今回はこれで精一杯。解析までもう二・三日かかる』
 俺は僅かな落胆と共に「そうか」と呟いた。
 先程までとは違い今度は離せと暴れる西を、床に下ろしてやる。
 確かに捻り潰せそうな小さな子供ではなくなった。小学校高学年にかかるくらいにまで回復している。
 いや、これを回復というのかどうか怪しいが。
「記憶はないままなのか」
「……ある」
 比較的しっかりした答えが返ってきた。見れば、視線に混じる冷たい光が中学生の西と似通っている。
「俺の服は、……」
 パーカーのみをはおっている西は、周囲を見回して自分の服を探していた。確かに下肢が裸のままでいるのは居心地が悪いだろう。
 落ちていた服と靴を拾って西がキッチンへ入っていくと、玄野達は漸くホッとしたように息を付いた。
 待て、まだ何も解決してないだろ。
「じゃあ、和泉あいつ送ってやってくれな」
「は?」
「あんな小さい子供が夜中歩いてたら危ないだろ?」
 玄野に肩を叩かれ、加藤の切々とした言葉に頷かされる。
 レイカが一人で『小さい方だったら私が連れ帰っても良かったんだけど』等と不穏な事を呟いていた。
 次々とメンバー達が帰って行き、俺はガンツスーツの上に制服を着込んで西が戻るのを待っていた。
「……、」
 キッチンから歩いて来る気配がして見遣ると、驚いた顔をした西がこちらを見ていた。
 さっさと帰っていると思ったんだろう。ああ俺もそうしたかったんだが、そうもいかなくてな。
「何でいるんだ、とか言うなよ。……送って行く」
「……いい」
「あァ?」
「この姿じゃどうせ家には帰れない」
「……」
 そりゃあそうだ。俺も意外と気が動転していたらしい。
 深くため息をついて、玄野達の様子を思い出す。そうかアレは連れ帰れって事なのか。レイカの一言をもう少し深く考えて置けば良かった。
「ならうちに来い。……二・三日なら、慣れてるだろ」
「……」
 西の家はあまり子供の動向に気を配らないらしい。金曜から日曜の昼あたりまで居なくとも、携帯に連絡一本かかってこないような親だ。
 古い、身内の密着した自分の家からしたら信じられない様な話だが、それが今は有難いくらいだった。
「……できないけど」
「は?」
「この身体じゃ、出来ないけど。それでもいいわけ?」
 躊躇するような不安そうな目が、何を言っているのかよく分からなかった。
 それから一瞬遅れて、西が何を気にしているのかに思い当る。
「別にヤれないからって帰れって言った事あるか、オイ」
「ヤッてない日なんかないじゃないか……」
「……。そういやそうだな」
 他のメンバーが聞いていたら非難を浴びそうだが、まあ実際そうなんだから仕方ない。
 西を家に呼んで、その身体に触れなかった日などないが、……流石にこのちいさい身体の西に同じ行為をさせるのは無理だと判っている。
 お前、俺を何だと思ってんだ? 身体にだけ用があるんだろとか女みたいな事言うわけか?
 視線からある程度俺の思考が伝わったのか、戸惑いながらも西は漸く側に寄ってきた。
 まるで、近寄ってから離されるのが嫌で、近寄れなかったとでも言う様に。
「……ガンツ、三日後でいいか」
 西の頭をくしゃくしゃと撫でながら背後に問うと、『解析が終わったら呼び出す』と返事があった。
 俺は西の背を押して促し、マンションを出て行く。

 遠くに車の音しかしないような深夜に、二人で無言のまま歩いた。ガンツ部屋から直接連れ帰る時にはいつもの事だが、今日の西は歩幅が小さいせいか遅れ気味で、俺は少し歩調を緩めて進む。
 ふと、ぺたぺたと変な音がすると思ったらサイズの合わない靴に苦戦しながら走ってくるのが見えた。
 追い付いて来るのを待ちながら、深いため息をつく。
 悔しそうな顔で俯く西の頭に手を置いた。
「早く言え」
「え、……わっ!」
 先程とは大きさが違うが、重量的にはさして気になる程でも無い。
 俺は西を抱き上げたまま歩き出した。
 降ろせ、と暴れるのを強く抱き締めて拘束する。
「この方が早い。走って途中で転ばれても面倒だ」
「……」
 暴れていた西がぴたりと動きを止めた。
 それから暫く無言のまま歩いていたら、静かな住宅街に入ったあたりで首筋に温もりを感じた。
 ぎゅ、と細い腕が首の後ろに回ってくる。
「……西? 寒いのか」
 俺はガンツスーツを着ているからさして問題ないが、サイズが合わなくて置いて来てしまった西にしてみれば今夜の気温は寒いのかも知れない。
 しかし、問いかけても無言で首を横に振るのでそのままにしておいた。
 
 抱きついてくる手は、小さいがいつもの温もりを感じる。
 こんな風に懐いてくるのは行為の最後、こいつが理性を手放した後ばかりだと思っていたが。
 珍しい事もあるものだと思いながら、俺はマンションのエントランスへ入って行った。







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ずっと書きたかったちび西です!
アキシロさんと滾ったちび西なので!これは、イラストのお礼に進呈、ということで(笑)


この後和泉の部屋で過ごすちび西ですが、結局エロイ事は多少すると思います。
でも口でさえ和泉のは入らないと思うね! 無茶だね! やるなら素またでお願いします!←

和泉を困らせるのが最近とても楽しい私でした。



2011/07/25




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