拍手御礼 3

▽奉仕させる














 洋酒の匂いは嫌いじゃなかった。
 だから、和泉が貰い物だという高級そうな箱のチョコレートを持ち帰ってきた時、正直に食べたいと言ってみた。
 チョコレートの箱は、外からでも良い匂いがしているのが判る。
 たぶん洋酒と砂糖の混ざったようなのがチョコの中に入っている、あのお菓子だろう。
 俺が食べ物をねだるのは初めての事で、和泉は面食らったような表情をしながら暫し考えた。
 そして、和泉を満足させられたら箱ごと全てくれる、という約束でゲームのようなミッションが始まった。
 後で一個くれって言ってもやらないけど、と言ったら和泉は肩を竦めて笑う。
 お前みたいな甘いモノ好きじゃない、と言うのを聞いて憮然とした。
 どうせ食わないなら俺が貰ってもいいんじゃないか? と思わないでもなかったが、ここで和泉の機嫌を損ねると約束自体が無かった事にされそうだった。
 俺は大人しく跪いて、和泉の制服のベルトを外す。
「……手は、使うな」
「え、……」
 驚いて顔を上げると、和泉はニヤリと唇の端を上げてこちらを見下ろしていた。
 俺は唇を噛んで俯くと、両手をバックルから離す。
 そのままジッパーの金具を唇で挟み、引っ張った。
 ジジ、と音を立てて少し下がるが、それはすぐに口から外れてしまう。
「ッ……」
 金具に歯で噛みつくと、カチリと冷たい金属が鳴った。
 一気に引き下げて、中に唇を押しこむ。
 下着越しにしか触れられない和泉のモノを、懸命に愛撫する。
「そんなんじゃいつまでも終わらないだろ」
「ンッ、……ぅ、んッ」
 頭を押さえつけられて、俺は恨みがましく和泉を見上げてから目を瞑って、布の中へ顔を押しこんだ。
 下着を引っ張って、少し形を変えた太い性器を口だけで引き摺り出す。
 それを喉の奥まで飲み込み、唇で締め付けながら抜き差しを始めた。
 唾液を絡め、濡らしながら愛撫する。
 和泉の性器が熱を増すと、そのうち口の中に入れるのが難しくなってきた。
 舌先で舐める刺激にかえて、時折先端を口に含む。
 チラリと見上げると、和泉の息が僅かに上がってきているのが判った。
「……このまま口でする? 入れる?」
 入れるのだとしたら慣らすのをすっかり忘れていた。
 ひとまず口で出させないと、解れていない場所に突っ込まれそうで何だか怖い。
「来い」
 ソファに引っ張られて、横になった和泉の上に乗せられた。
 和泉はまだ、制服の前を乱しただけでほとんど着衣のままだった。
 それを、一枚づつ剥いでいく。
 和泉はもう、手を使うなとは言わなかった。
 面白そうに俺の手つきを見て、そのたどたどしさに笑っている。
 シャツの前を開けて、ベルトの外れた制服もずらしていく。
 すると、俺のパーカーを下から引っ張られた。
 中に手が忍び込んできて、直接肌を辿られる。
「い、ずみッ……触ったら出来ないッ」
「俺への奉仕だろ? 俺の行動制限してどうするんだ。……続けろ」
 きゅ、と親指に胸を摘ままれて思わず息を引き攣らせる。
 滲んでくる涙で視界が悪い中、四苦八苦しながら和泉の服を全て脱がした。
 自分も服を脱いでしまおうと下肢に手を伸ばしたら、そのまま腰を抱かれて引き寄せられる。
「そっちは俺にやらせろ」
「ッ!」
 耳元で囁かれて、その低く掠れたような声に身体を竦める。
 怖いのか?、とからかうような声音で言われて首を横に振った。
 怖いわけじゃない、それは本当だ。
 ただちょっと、ぞくっとした。
 和泉の声がまるで、俺を組み敷いて突き上げてる時みたいに掠れていたから、何となく……。
 下着ごと服を下げられて、下肢を裸にさせられる。
 服はそのままソファの外へ落とされて、パーカーに手がかかった。
「……え、」
 ダブルファスナーの前を開けられただけで、それは放置された。
 俺の身体にはだいぶ大きなそれは、上と下を開けられて胸も下肢も晒したままで、腹部でだけ止まっている。
「な、んでッ……こんな」
 全部脱がされるよりも恥ずかしい気がして俺が抗議すると、和泉はしれっとした顔で『その方が面白いから』と言う。
 大きく前を開けられたせいで、片方の袖が肩から落ちた。
 露わになる胸元に和泉の唇が押し当てられて、堪え切れず喘いだ。
 下肢に和泉のモノが触れている、それだけで中が疼いて仕方ない。
「このまま突っ込みたいところだが、……広げてやるから、お前は俺のでも銜えてろ」
 促されて、ソファに寝転んでいる和泉の顔の方へ背を向け、下肢に顔を伏せる。
 ず、と腰を引き寄せられて俺は転びそうになった。
 尻の狭間に吐息を感じて、身体を硬直させた瞬間、濡れた舌と指先が中に侵入してくる。
 俗に言うシックスナインってやつだな、と思う冷静な頭もあったが、自分がされるとなるとそんなのは羞恥で覆い隠されてしまった。
「あッ、い、ッずみ、……ッや、あぁッ」
 唾液の滑りに助けられ、指が何本も侵入してくる。 
 もう和泉のものを銜えている事なんて出来なかった。
 濡れた音を立てて抜き差しされる指が身体の中でバラバラに動き、その快感に泣かされる。
「オイ、口が疎かになってる」
「ん、ッ無理、こんな、……ッ」
 こんなに快感に喘がされている状態で銜えていたら、歯を立ててしまうかもしれない。
 首を横に振る俺に、和泉はため息をついた。
「俺の膝に手かけて起き上がれ」
「あ……、うん」
 言われた通りに起き上がり、背後の和泉を振り返る。
「そのまま、支えてやるから乗れ」
「えッ……ちょ、無理ッ」
「無理じゃない……ほら腰落とせ」
 和泉が少し立てた膝に縋りつく様に抱きつき、腰を支えられて入口に性器が押し付けられる。
 重力に従い、中に入り込んでくる質量に息を詰めた。
 熱に浮かされたように朦朧とした頭で、短く喘ぐ。
「……よく入るな、こんな小さい穴に」
「あ、……ッヤ、触、るなッ」
 引き伸ばされた入口の部分へ、和泉の指が這わされた。
 その刹那、挿入されている間和泉にはそこが全て見えていたのだと判る。
 羞恥に耳まで熱くなった。
「ほら、動けよ。奉仕、なんだろ?」
「だ、ッ……て、無理……全部、見、え……ッ」
 泣きながら背後を振り返ると、和泉は唇の端を上げて笑っていた。
「見るのが目的でさせてるに決まってんだろ。……腰、上げろ」
「あッ、ヤ、……ッああぁ!」
 ソファの揺れを利用して突き上げられ、俺は悲鳴のような声を上げた。
 強制的にされるよりはと、自分から腰を上下させていく。
 中を擦られる快感で、和泉の膝にかけた両手が震えた。
 上手く動けずにいると背後から手が伸びてきて腰を支えてくれて、ゆっくりと動きを助けてくれる。
「は、ッあ、……あ、ッあ!」
 奥まで当たる性器の感覚が、俺の頭を蕩けさせて思考を壊していく。
 そのうち何が何だか分からなくなって、快感を追う事しか出来なくなっていった。
 腰を揺らして、自分から貪るように行為を続ける。
 少し前では思いもよらなかった。
 こんなに虜になるなんて、予測できなかった。
 絶対に溺れる事なんてないと思っていたのに、今は和泉がいないといられないんじゃないかとさえ思う。

 そんなことは、絶対に口には出さない。
 けれど、態度にはもうずっと表れてしまっていると思う。
 それが悔しいような、恥ずかしいような、複雑な気分になった。
「いずみッ……!」
 振り返ると、余裕のない表情で笑う唇が見える。
 相手もそれだけ感じていると思うと、安堵するような気がした。
 そのまま、同時に白濁を吐き出す。
 中に注がれる熱に目の前が真っ白になって、意識が途切れた。






「西、お前チョコレート食うんじゃなかったか?」
「……食う」
「いつもは食い意地なんてさっぱりないクセに、これには反応するんだな」
「だって美味いもん」
「……」
「……な、何だよ。もう俺のだからな!」
「そっちは要らねーな」
「……は?」
「お前の口から、味見する」
「ッ!! ンンッ、ン、……ッふ、ぁッ……何、してんだよ!!」
「いや、だから……味見」
「意味判んねー甘いモン嫌いだろお前!」
「……まあ」
「何なんだよッ」
「……お前こみだったら、別に嫌いじゃないかもな」
「……」
「……オイそこで黙るな」
「……」
「オーイ? あ? 真っ赤、……」
「うるせぇぇええぇぇぇぇぇ!!」





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バカップルモードですみません。


拍手ありがとうございました!



2011/06/14




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