【SS】玄西「Rouge」
2011/12/18 23:45




「……何してんのお前」
「え?」

 玄野の部屋のチャイムを鳴らした時、中からドタバタと音がして変だなとは思った。
 ドア越しに玄野が『どちらさまですか』と幾分曇った固い声で返事をして、何かタイミングを誤ったかと思いながら名乗ると、拍子抜けするほどあっさりと扉は開いてしまった。
 そこで俺は一瞬言葉を失い立ちつくす。
 戸の向こうに居たのは、玄野の顔した女だった。……いや、正確にはセーラー服を着た玄野だ。
 思わず何の真似だと問いかけると、玄野の方が驚いたような声を上げた。
 馬鹿、驚いたのはこっちだろうが。

「ワリ、ちょっと入って待ってて」
「は?」
「一応合わせてみてただけなんだけどさー。タイミング良く人来るから焦ったわ」

 話の見えない俺は促されるまま戸の中へ入り、腕を引かれて部屋へ上がった。
 そこには他にもう二着のセーラー服とメイク道具が散らばっている。
 こいつ、ついにそういう趣味に手を出したのか。
 俺が胡乱な目付きで見つめているのが判ったのか、玄野は両手と首をもげそうな程に激しく振った。

「違う違う! これはたえちゃんので、俺が着てるのはクラスの女子ので」
「……」
「文化祭の準備で」
「何で文化祭でセーラー……」
「男の娘喫茶やるんだと」
「……は?」

 知らない言葉が出てきて聞き返す俺に、玄野は雑誌片手に『男の娘』というものの説明をしてくれた。
 クラスの女子に説明された事をそのまま繰り返しているらしいが、俺はその大半を聞き流しながらため息をつく。

「……って、まあそんなわけでどのセーラー服がサイズ合うか判らないからさ。何着か借りてきて、これがピッタリだったわけ」
 たえちゃんのは流石に小さかったんだよなー、と言いながらそれを広げる玄野を見遣り、俺は適当な相槌を打つ。
 やはり今日はタイミングが悪かった。
 来なければ良かったなと思いながら近くに転がっていた口紅を拾い上げる。
 開けてみるとローズピンクの落ちついた色をしていて、これはあの玄野の彼女のモノかなと思う。派手な赤い口紅など使わなそうに見えた。

「ん? 西つけてみるか、それ?」
「はあ? 冗談。誰がつけるかって」
「まあまあそー言わず。似合うってきっと」
「は? ちょ、待……玄野! 待てって!」

 片手を押さえつけられ、背後のベッドに追い詰められた。
 玄野の手が俺の唇にピンク色の塊を押しつけて、ゆっくりとスライドさせる。
 ふわりと化粧品の匂いが広がって俺は眉を顰めた。

「ほら、可愛いって。あ、たえちゃんのセーラーとか着てみる? 西なら丁度良さそう」
「何で俺が……」
「まあまあ。ほら、ちょっとモノは試しに……」

 いつもベッドの上でするように、玄野は手際良く俺の制服を脱がしてきた。満足に抵抗も出来ないままセーラー服を被せられる。
 下着も何もない、裸のまま上を着せられて服の冷たさに一瞬首を竦めた。
 玄野は俺の抵抗が強くなるとすぐに脇腹や胸のあたりを弄って愛撫を施してくる。
 止めろ、と反抗するとじゃあ大人しくしてろと言われて口を噤んだ。
 
「西は肌白いからなー。これだけでいいか」

 玄野が、手にしたペンで俺の目元をなぞっていく。
 ついでにマスカラ塗るから、と言われその切っ先が目に刺さるんじゃないかという恐怖で俺は硬直した。
 そうして気がついたら、玄野の適当なメイクも終わって俺は女装をさせられていた。
 満足そうな玄野も同じセーラー服だが、メイクはしていない。
 俺だけこんなピエロみたいな恰好は好かなくて、手招いて玄野の顔を捕まえた。

「お前にも塗ってやる」
「え、俺はいいって」
「……てめー俺だけにさせるつもりなのか?」
「……」

 大人しくしてろ、と言って先程の口紅を手に取り、玄野の唇へと押し当てた。
 上手く塗れずに顔を近づけ、指先が揺れそうになるのを抑えながら横にスライドさせる。
 ……やはり上手くいかない。
 
「玄野、口開けろ」
「……ん」

 やけに大人しいな、と思いながらも俺は手元に集中して口紅の先を動かした。
 下唇は比較的上手く塗れたが、上は難しい。少しはみ出した部分を指先で拭うと、ふと温かい吐息が指に触れた。

「……!」
「西、終わった?」
「ま……まだ」
 
 急に、顔を近づけ過ぎていた事に気がついた。
 何気なさを装って顔を引こうとしたら口紅を持っていた手首を掴まれる。

「上唇難しいよなー。ティッシュとかで押さえたり、唇同士合わせて馴染ませるッてきいた」
「……へぇ」
「うん、だから」

 笑う玄野の唇が近づいてくる。
 俺は手首を掴まれたまま動けず、口を塞がれた。
 何度も触れ合わせるように動いていた唇が、今度は開いて舌を差し入れてきて、俺の口をこじ開ける。

「ん、……ッふ、…何、して……」
「ええ? 口紅馴染ませてンの」

 笑い混じりの声で玄野が応えた。ぐい、と掴まれた手首と腰を引き寄せられ身体が密着する。
 玄野の指先がセーラーの裾から忍び込んできた。
 直に肌を弄られて、俺は息を詰まらせる。

「可愛いなあ。なんかこうしてるとホントに女の子って言っても判んないくらいだよな」

 自分こそ女顔のクセして、玄野がそんなことを呟く。
 しかし俺には悪態をつく余裕さえなくて、ただ玄野の愛撫に翻弄されていた。
 
「汚すと流石に怒られるから、……」

 玄野は手にしたゴムのパッケージを歯で噛み切った。
 そんなものいつの間に、どこから取り出したのか。その手際の良さに呆れてしまう。
 可愛らしく色づいたピンク色の唇が、ヤケに男っぽい仕草でプラスチックの袋に唇の跡をつけた。
 それがはらりと絨毯の上に落ちると、俺は無意識にそれを目で追う。

「西、こっち見て」
「うぁ、ッ……あ、ッ……」

 スカートの裾を持ち上げられて服を汚さないようにとゴムを装着される。
 玄野自身も同じ様にそれをつけて、俺の太股を大きく開かせ持ち上げた。

「たまにはこういうのも面白くていいかもな」

 楽しげに言う玄野を、ふざけんなと罵倒したかった。
 しかし実際は、身体の奥に感じた熱に俺の口は高い喘ぎ声しか漏らすことが出来なかった。






「……」
「……」
「なあこの染み、洗濯でとれると思う?」
「……知るか」
「やっぱクリーニングかな。……何でゴムしてたのに汚れたんだろ」
「……」
「ん?」
「……そのまま何発もやりゃ漏れるだろ普通……」
「あー。でも西の中が気持ちよすぎるのがいけなくね? それ」
「……クソ馬鹿玄野死ね」
「ひでぇ……」





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リク「玄西で二人で女装プレイ」

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2011/12/18




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