小説 | ナノ
お天道様とメロン牛乳

日光浴をしながら飲むメロン牛乳はおいしい。これが夏だったら甘さがしつこいかもしれないけど、春のぽかぽか陽気にはぴったりで。若者よ、美白美白言ってないでお天道様の光を浴びなさいと言いたい。

1人だと思っていたら少し先に座っている見知った背中を見つけた。もう一つメロン牛乳を買ってそっと背後に近づく。

「あーさひ!」
「うわっ冷て!!何?!」

旭の背中にメロン牛乳を入れると期待通りのリアクションをしてくれて、私はお腹を抱えて笑った。

「心臓止まるかと思った…」
「旭死なないで…」
「誰のせいだよ!」
「それあげるから許しておくれ」
「メロン牛乳…微妙なチョイスだな」

背中から取り出しだ紙パックにストローを刺して飲む旭。隣に座って私もちびちび自分の残りを飲んだ。

「うめぇ?」
「んー普通、かな」
「せっかく買ってやったのに!」
「悪い悪い!うまいよ!」
「何も信じられん」
「悪かったって!」
「旭が落ち込んでたそがれてたから励ましてあげようと思ったのに」
「あー…」

最近バレー部で色々とあって部活に来なくなった旭。半分冗談で半分本当に心配して言ったことだけど、旭がネガティブモードに入ってしまった。

「名前ちゃんが悪かったよ!落ち込むなよ旭ー!」
「名前は悪くないって。名前もマネージャーみたいなもんだろ。怒っててもおかしくないよな」
「私マネージャー違う。暇つぶしにバレー部に紛れてる冷やかし」
「それはそれでどうなんだ?!」

笑っているけど旭の表情はどこか悲しそうだった。前みたいに笑って欲しいのにな。

「部活なくて暇ならうちに婿修行来るか?一緒に農作業しようぜ」
「いやそれは…スガに殺される…」
「婿候補は何人いてもいいからね」
「俺2番手かよー」
「いんや、2番手は大地、3番手は西谷、4番手が旭。」
「えー?!後輩に負けてるの?!」

ため息をついて項垂れる旭。励ますどころかもっと落ち込ませてしまった。
とりあえず背中を思い切り叩いて逃げよう。

「いってー!!」
「また一緒にお昼たべよーねー!!」

走りながら大きく手を振ると、向こうも小さく振り返してくれた。
うまく励ますことは出来なかったけど、早くみんなが仲直りできますようにとお天道様にお願いしながら教室まで走った。


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