小説 | ナノ
彼との昼休み

「スガ!お昼ー!」

まだ教科書をしまってないスガの机に、自分の昼食が入った巾着袋を載せる。

「はや!どんだけ腹減ってんだよー。てか名前は俺しか友達いないわけ?」
「つれないこと言わないでよスガちゃん、やっとまた同じクラスになれたのに。名前ちゃん寂しかった」
「去年も毎日昼休み来てたべ?」
「それを言っちゃあよう!」

だってスガといるのは楽しい。いつもふざけて笑っていられるし、時々ある沈黙も全然気まずくない。
1年の時同じクラスで仲良くなり、2年は離れてしまったが3年はまた一緒になれた。嬉しかったなぁ。

「またホットサンド?」
「そうだよ!今日はコンビーフ入り。高かったんだぜー」
「リッチかよー。まじでうまそうだな」
「だべ?」

ホットサンドメーカーを買ってからはいつもこれだった。ハマるとしばらく同じものを食べ続けるタイプ。
スガのお弁当はごはんと4品ぐらいのおかずが入ってバランスがよさそうだ。さすがお母さんのお弁当。

「米農家の娘のくせにパン好きなー」
「小麦に対する憧れ…ありますねぇ」
「なんだそりゃ!」

顔をくしゃっとして笑う。普段の爽やかな顔と違った惜しみない笑顔。私はこの笑顔が好きだ。女子が大好きなギャップというやつ。

「スガに彼女が出来たらどうしよう…」
「急にどうした。情緒不安定だな」
「うちの婿にする計画が!」
「勝手に計画立てないで?!」

農家の婿はハードル高いなぁと顎に手を当てて考えるフリをするスガ。週3はバーベキューしてるよと教えると、頭を抱えてそれは魅力的だと言った。

「まぁ婿は置いといて、いや農家の後継者不足は深刻なんだけどね。もしスガに彼女出来たらこうしてお昼もさ…私ぼっちになるね」
「いや友達作れよ!」
「いるわ!多少いるわ!」
「なんの話だー?」
「あっ大地!私達友達だよね?!」

遅れて来たこれまた同じクラスの大地に立ち上がって詰め寄ると、デコピンされた。痛くない。大地は紳士だなぁ。

「だから何の話だよ」
「スガがうちの婿になるって話」
「ええ?!その話置いとくって言ってなかった?!」
「置いといた。そして戻した」
「いいんじゃないか?スガと名前、うまくいくと思うぞ」
「よくないだろ!!」

そんなに婿が嫌なのか。冗談で言っただけなのに少しへこむ。スガと一緒にいて楽しいのは私だけなのか。所詮私の一方通行なのか。

「まぁまたその話は置いといて」

今度はスガが話を変える。置いといてを両手で箱を移動するように表現したのが、ロボットみたいで可愛らしい。

「名前が気遣って飯食えなくなるぐらいなら、彼女とかいらないなー」

にししと笑って言ったスガ。予想外の発言に、ふざけて婿だの言っていた私の方が恥ずかしくなってしまった。そんなこと言われたら嬉しいでしょ、そりゃ。

スガと大地はそんな私を面白がって、ニヤニヤとからかう気満々の顔だ。

「名前さん照れてますねぇ」
「スガに惚れたな」
「はい、惚れました」
「あっさり認めんな!嘘でも照れるわ!」


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