小説 | ナノ
傍観者のランチタイム

授業の終わりを知らせるチャイムがなると、ある場所へと向かった。一人廊下を歩く時でさえ、可愛い女の子がいないかチェックする俺に抜かりはない。

海常の女子のレベルはそこそこ高いと思う。なかでも一押しは、1、2年と同じクラスだった我等が生徒会副会長名字名前ちゃんだ。
見た目は勿論合格。整っているというよりは、全体の雰囲気、そして彼女のシンボルである親しみ易い笑顔が美しく、可愛い。めちゃくちゃ可愛い。しかし媚びることはなく自然体。憧れであり、俺の親友、いや、心の友と書いて心友だ。

あろうことかその彼女が俺に、たまには一緒に弁当を食べないかなんて言うのだ。初めて招待された生徒会室。昼休み、ここは俺と彼女だけの秘密の楽園となる。

「なんでいる。なんでいるんだよお前ら」
「森山くん、そんなこと言わないの」

ドアを開けるとそこには名前ちゃんの隣でスマホを弄る黄瀬と、黄瀬の隣に座ろうとしている笠松。みんないた方が楽しいでしょ、なんて人が悪いぜ名前ちゃん。

「笠松はまぁ、席も隣だし?最近名前ちゃんと2人でいるところ後輩達に多数目撃されているようだし?それはそれでムカつくけどまぁいいとして…黄瀬、お前は許さない」
「なんで俺だけ?!」

黄瀬に腹を立てても腹は膨れないから、座って昼飯を食べることにする。運良く美女の隣があいている。笠松がシャイな奴でよかった。

「名前っちの弁当、うまそうッスねー!」
「黄瀬!なんだその呼び方!先輩をつけねーか!」
「まあまあいいじゃない。お弁当一応自分で作ってるんだ」
「まじかよ。すげぇな」

黄瀬が女の子に懐くのは珍しい。ファンの子には優しいが常に一線を引くような奴だ。笠松は笠松で女子と普通に喋ってるし。あの笠松に女友達が出来るのはいいことではあるが。

「そういえば俺のファンの子も2人が一緒にいるの見たって言ってたッスよ!」
「なんだと。説明してもらおうか笠松」
「うるせぇ!」

誤魔化すように黄瀬に蹴りを入れる笠松。名前ちゃんはたまたま一緒になっただけだと弁解する。

笠松と目が合ってはにかんで、黄瀬と笠松のやり取りを少し心配そうに見ている彼女。その横顔のなんて愛らしいことか。
改めて思う、あなたは可愛い。今日は格別。なぜそんなことを思うかって、認めたくないな。俺が先に見つけたのにな。

「森山くん、どうしたの?ごはん全然食べてないけど大丈夫?」

いつか恋をしたことがないと言った君。初めて好きになったのが笠松だったとしたら、悔しいけど嬉しい。名前ちゃんの男を見る目は確かだったということだ。

「名前ちゃん」
「ん?」
「可愛いね」
「はいはいどーも」
「ちょっ森山先輩めっちゃ軽くあしらわれてる!」

女の子は恋をすると可愛くなると聞く。女の子は生まれながらにして可愛いと言うのに。
そんな恋する乙女を近くで応援できるなんて贅沢だ、なんて我先にと女の子を追いかけてる俺には柄じゃないか。まぁ悪くはないな。でも、

「名前ちゃん、知ってるか。笠松は女子の写真すら直視できないんだぜ」
「ええ?!写真も?!」
「あと、女子の比率が高い場所からは逃げる」
「てめっ余計なこと言うんじゃねえ!」

いくら笠松でも、まだ君を渡すのは惜しいんだ。


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