小説 | ナノ
かわいいひと


貴方はいつだってそう。

好きな人がてきた。叶わなかった。告白された。付き合った。なんか違った。
そう言って泣きついてきては、僕を使って感情を整理しようとする。

思い立ったら後先考えずに行動してしまう浅はかな彼女。ばかですね、だから言ったのに。そんな事は言えずもっともらしい顔で話を聞く僕も僕だ。


「名前」

こんな時間に一人、公園のベンチに座る制服姿。スカートなのに体育座りをするはしたない足を下ろさせて呆れた顔を見せる。何が「久しぶり」ですか。

「こうすれば僕が来ると思ってたんでしょう。」
「うん。」
「全く貴方は、」
「来てくれてありがとう、テッちゃん。」
「…お父さんとお母さん、心配していますよ。」

今度はどうしたんですか。
ご両親にメールをさせてから隣に座って言った。彼女に話させる合図。聞いて欲しいことがあるくせに僕から仕掛けないと話してこない、そんな手の掛かるひと。

「久しぶりに会いたかっただけだよ。」
「嘘ばっかり。」
「本当だって。私も誠凛に行けばよかった。」

そうやってまた、僕を期待させる。小さな頃から貴方は思わせぶりだった。何度騙されたって、もしかしたらがあるかもしれないと思ってしまうのに。
そんな気持ちを悟られないように隣にある頬をつねる。力なんて入れてないのに、貴方は痛いと言った。

「誰も彼もなんか違うの。」

つねられたまま少し舌足らずに話す。何が違うのかと問えば、よくわからないと返ってきた。それではこちらもわからない。
彼女がうつ向いて考えこむ素振りを見せたがそれでも僕は頬をつまんでいた。

「でも何と比べて違うのかって考えたら、出てきたのはテッちゃんだったんだよね。」

いつも相談してくるときとは別人のように落ち着いていた。高校生になってちょっと大人になった横顔は僕の胸を苦しくさせる。

「一緒にいて当たり前だったから気付かなかったみたい。でもテッちゃんにとっての名前は、ただの幼馴染だよね?」

貴方はいつだってそう。

今にも泣きそうな顔をして。人の気も知らないで。どんなに成長したってその顔だけは変わりませんね。

「ばかなんですか。」

頬をつねる手に力を入れた。今度は本当に痛そうに、貴方は僕の肩を叩いた。手加減をしらない強い力で。

愚かで、泣き虫で、わからずやで。
貴方は本当に、


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