小説 | ナノ
部長会後のお手伝い

全ての授業が終わると急いで部活に行くのが俺の日課だが今日はそうではない。
体育館は業者が入ってるので部活は中止。しかし帰宅する訳でもなく会議室に向かう。

半期に一度の部長会。バスケ部の代表で参加する。最近話すようになった唯一の女友達の名字は生徒会副会長で、今日の部長会は進行役だからよろしくと言っていた。


「皆さん揃ったようなのでこれから部長会を始めます。進行は生徒会副会長の名字です。わからないことがあれば気軽に聞いて下さい」

司会として話す名字は新鮮だった。教室での雰囲気とはまた違ってこれが副会長の顔なのだろう。
内容は部活動の予算、活動場所の割り振り、部活紹介の手順など。分かりやすく手短に、質問も交えながら要領よく進んだ。

こうして名字を見ると、普通に優等生で、愛嬌もあって性格もいい。森山が可愛い可愛いと騒いでいるのも正直頷ける。

女子が苦手な自分が、まさかこんな子と親しくなるなんて思いもしなかった。


そんな事を考えてるうちにいつのまにか部長会は終わった。各々が席を立ったところで生徒会担当の先生が言った。

「この後部活がなくて残れる者がいたら名字の手伝いをしてくれないか?」
「先生、一人でも大丈夫ですよ?」
「自分部活休みだから手伝えます」
「えっ笠松くんいいの?」

部活もないし予定もなかったから名乗り出た。どうやら俺だけのようだ。名字に何度もお礼を言われ、生徒会室に付いていく。俺の他に手伝う奴はいないようだ。

二人、か。いや、もう結構話せるようになったし大丈夫だ。落ち着け、俺。


たどり着いた先の机の上にはプリントの山が10個ほど。それなりの量だ。

「部活紹介のパンフレット作りだよ!」
「これ、一人でやるつもりだったのかよ…」
「うん、なんとかなるかなって」
「ならねえだろ!またこの前みたく暗くなってから帰るつもりか!少しは誰かを頼れよな」
「怒られた…でも今日は笠松くんが手伝ってくれるから早く帰れるよ!」

ね!なんて言って笑いかけてくる名字に胸がどきりと跳ねた。さっきまでの副会長の顔ではなく、緩んだ笑顔で俺を見る隣の席の女子だった。

なんつーか、森山が可愛いと言うのはわかる。俺じゃなくて言ったのは森山だ。

手伝いの内容は部活紹介の冊子作りだった。俺が順番に重ねたプリントを名字がホチキスで留めて、クラスごとの配布数に分けていく。
全部終わって冊子の山がいくつか出来た時にはそれなりに達成感があった。

「手伝ってくれたお陰で夕方で終わったね。本当にありがとう」
「このぐらいならいつでも、つってもほとんど部活だから手伝える時ねえかもしんねえけど」
「充分だよ。ありがとね。ねえ外見て!すっごいオレンジだよ!」

窓から見えるグラウンドが強い夕日の明かりで赤く染まっていた。身を乗り出して見ている彼女に危ないからと注意すれば、また緩んだ顔で笑っていた。

「そういえば今日の司会、凄えわかりやすかった。ああいうの得意なんだな。」
「えー本当?ちゃんと出来てるかいつも不安だよー」
「いや、マジで。ちゃんと副会長って感じ」
「でも笠松くん部長会の間ぼんやりしてたでしょ?」

会議中余計なことを考えていたことが、なぜかばれていた。

「じゃあさ、私もバスケ部主将な笠松くん見てみたいな、なんて」
「は?!」
「だめ、かな?」

不安そうにこちらを覗いてくる名字に顔を背けて、今度うちの学校で練習試合があるとだけ伝えた。絶対見に行くと言って嬉しそうにまた夕日を眺める彼女の横顔を、俺は気付かれないように見ていた。

さっきから心臓がうるさくて仕方ないのは、まだ女子と一緒にいることに慣れてないからだろうか。


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