p.m.04
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丁度、疲労がピークに達して昼過ぎまででソファで眠りこけて折角の有給を台無しにしたことに気付いた直後だった。

静かに軋むフローリングの音がだんだん私のソファに近付いてきて閉じた瞼と頬に何本かに束ねた黒髪が垂れてきて顔を覗き込まれてるのに気づいた。彼は多分私が起きてることに気付いていたけどなにも言わずにそっとソファの真下に座った。

「ごめんね、私から言ったのに。」

「なにが?」

イルーゾォは特に何でもないと言う風にリモコンでテレビの電源を点けた。テレビには下らないバラエティで流行の司会者タレントが多少下品にも思える笑い声を上げていた。それは彼なりの気遣いで端からみたら無関心なように見えるが暗に気にするなと訴えているのだ。バラエティなんて普段全く見もしないくせに、

休日に出掛けようと彼に申し出たのは私だった。出不精な彼はあまり良い顔はしなかったけど、必死で頼み込むと渋々頷いたのだ。
そうまでしたと言うのに当日になって寝過ごすなんて、起こしてくれたら良いのに、なんて思ったけど彼も起こしたら悪いと気を使ったのだろう。

「ほんと、ごめん。」

窓辺からは既に西陽が指し始めていて茜色の光がイルーゾォに反射して表情がよく見えなかった。
彼は小さく溜め息を吐いて立ち上がるとリビングを出ていってしまった。

「…、…。」

やっぱり怒っているのだろう。でも私だってイルーゾォと出掛けたかった。目頭が熱くて生温い液体がボロボロとフローリングと服を汚した。

「うわ、……なに泣いてんだよ。」

何処からか戻ってきたイルーゾォが困惑したような顔で私を見下ろした。それから手に持ってた布のようなものでグシグシと私の顔を乱暴に拭って苦笑した。

「うぐぐ、痛い。」

「馬鹿。さっさと着替えろよ泣き虫。」

「な、何でさ。」

「買い物できなくてもリストランテに行く時間くらいはあるだろ。それとも、行きたくない?」

「!、行く。」

「だったら早く準備しろよ。予約してないからすぐ席埋まっちまうぜ。」

「うん。」

今日は目一杯お洒落をしていこう。笑う彼の頬にお礼の意味も込めてキスすると色白の肌が桜色に染まって、また早くしろと怒られた。






Atgk
イル蔵さんがニセモノ。






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