夜は短しなんて嘘月の光を背にした男がもの珍しげに私の顔を覗き込んだ。
私も横目でチロリと、彼に気づかれない程度に視線を送った。
ブロンドの髪の毛に深紅の瞳が蝋燭の光に反射して光るが暗がりのせいで顔はよく見えなかった。
私がその日その酒場に居たのは特に何の意味もなかった。図書館で読書に没頭していたら閉館時間をとっくに過ぎていて怒った司書に図書館から追い出された。しかし、今読んでいる本の続きが気になって家に帰ってから読むのも億劫になったため図書館の近くにある酒場に立ち寄って続きを読むことにした。
その本の著者は決して著名な作家ではなく流通してる著書もごく僅かだった。
最後のあとがきの隅々まで読み終えた後、私は幸福な気分で本を閉じた。
期待通りかなり読み応えのある本で、著者のファンである自分としてはかなり満足で他の作品も読んでみたいと言う願望が強まった。
「随分と熱中していたようだね。」
読書に熱中していたせいか隣に男が座っているのに全く気が付かなかった。
それが、私とDIOの出会いだった。
DIOの館には数千にも及ぶ蔵書が存在してあり、私が彼の誘いにホイホイと乗ってこの館に来たのもこの本たちが目当てだった。
「御劒、」
「はい?」
DIOが端正な顔を歪めて至極納得のいかなそうな声で私を呼んだ。
「このDIOが側にいると言うのに目もくれないとは…この、本の虫め。」
「そりゃあ、どうも。」
随分と子供っぽいものだ。この男図体はでかくて態度も尊大だが時々酷く幼い。まるで大きな子供だ。
仕方がなく本を閉じて若干むくれている彼の腕の飾りを左手で弄ぶとシャラシャラと少し重々しい、けれで涼やかな金属の音が響いた。
「あんまり貴方と仲良くするとアイスの奴が怒るのよね、」
そう言って私が彼の腕をペチペチ叩いても彼は無反応。むくれるのにも飽きたのかいつの間にか読書を始めていた。
読書再開する気も削がれた。今度は私が退屈を強いられる番のようだ。
夜はまだ長い。
あとがき
なんだこれ、
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