睡眠導入
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朝焼けの空は真っ赤に街を染め上げる。澄みきった空気に鼻を紅くしながらボロアパートの非常に立て付けの悪いドアを成るべく音を立てずに開けてそろりと中に忍び込む。

リビングからは微かにテレビの音が聞こえる。この時間に誰か起きてるなんて珍しい。

リビングの固いソファにはリゾットが座っていた。彼も仕事が終わったばかりなのだろう。

リビングの隣のキッチンで湯を沸かして二人分のコーヒーを作った。一つはミルクも砂糖も入れずに、もう一つはミルクを入れて。
リビングに戻ってテーブルの上に彼の分のブラックと私のカフェオレを置いてソファにどかりと座ると、リゾットが今気づいたとばかりに私を見た。

「任務お疲れ様。」

「あぁ。お前もな、」

リゾットは真っ黒な瞳を細めた。

「疲れてるわね。寝たら?」

「いや、眠くない。」

リゾットの顔には明らかに疲れの色が滲み出ている。ここ最近やけに仕事が増えているせいも有るのだろうが、

「お前こそ寝た方が良い。」

リゾットの乾燥した、カサカサの手が私の目元に触れた。最近眠れないせいか、最早ファンデーションでは隠せないほど隈が濃くなってきた。

「言われなくてもそのつもり。」

私は横に倒れてリゾットの膝を枕にして目を閉じる。
「…固い。」

無駄な脂肪の無い太股は柔らかい筈もなくかなり寝心地の悪い枕で、リゾットは全く悪くないのだがなんだか気に入らないので頭を左右にごろごろと揺らすと暴れるな、と額を叩かれた。

「眠れないわ。」

「子守唄でも歌ってやろうか?」

「それってジョーク?…私が寝るまでそこにいてね。」

「あぁ。お休み。」

瞳を閉じていても彼の生暖かい薄い唇が額につくのが解った。
その日私はとても久し振りに昼まで眠った。




atgk
リゾット夢初めて書いた。







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