温い女
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それはぬるま湯に浸かるような感覚だ。

メローネの体温は異常に低く常時の時でさえ平温とさほど変わりはない。私の熱さとメローネの冷たさが混ざりあって丁度良く、温いのだ。

今日、私は何時ものようにベッドの上に転がる。温く甘ったるい空気が立ち込め今すぐにでも換気したい気分だがそれと同時にもし換気なんかしたらその空気が名残惜しくなって窓から入る寒気を非常に忌々しく思ってしまうだろう。
結局私はうざったいと思いながらも気怠い身体を起こす気にもなれず転がった。

メローネはその私のどうでもいい葛藤をすぐ近くでパソコンを弄りながら眺めていた。
ふと目が合うとメローネは目を細めて薄く笑う。

―結局うざったいと思いながらも、気怠い身体を起こす気にもなれず私は何時ものようにベッドの上に転がる―

それが私の今のメローネに対する気持ちだ。
私はきっとあいつが好きだ。
あいつとのセックスが思ったより良かったからかもしれない。
初めあいつとするとき、性癖的にもっと激しいものなのかと思っていたけど実はそうでもなくて、ベッドの上ではあいつは誰よりも紳士的だろうと思う。
深海を漂うような、生温い感覚でメローネの冷たい舌や、白い肌がやけに愛しく感じた。

だけど、耳元で囁かれる甘い言葉も女性のような白い手も私だけのものじゃないと分かったのは付き合ってすぐだった。

元々メローネの女癖の悪さは知っていたからさほど驚きはしなかった。

驚きはしなかったが嫉妬はした。自分のなかにここまで汚ない感情が渦巻いてるなんて知らなかったから余計に傷付いた。
理解できない感情に苦しむくらいなら別れてしまおうかとも思ったが
―メローネと離れてしまったらきっと耐えられない―
そう思ってしまうほど私はあいつを好いていた。

他の女に嫉妬してメローネを問い詰め泣きつける程熱くはなれないし、切り捨てられるほど冷たい女にもなれない。温い女だ、私は。
結局私は行動を起こすことが出来なくて都合の良い女になる。

ただ、この薄っぺらい男にいいようにされるのは無性に腹がたつから、微笑みかけるメローネに一言悪態を吐く。

「見てんじゃないわよ。」

メローネはまた笑みを深めた。







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