とある世界の終焉 
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虚ろな瞳を覗き込んだ。
二度と開かれることの無い瞼を無理矢理抉じ開けると彼の眩しいまでに鋭い光を灯す瞳は光を失い闇だけが渦巻いていた。

それでも尚、花京院を眠りから醒まそうとする私を承太郎が制止した。
静かに首を振る彼の拳は出血するほど強く握り締められていて、
ああ彼は本当に死んでしまったのだと他人事のように思った。

花京院の遺体は承太郎の祖父であるジョセフさんの会社SPW社の人たちが運ぶ。
私は横たわる彼の隣に座る。
承太郎はジョセフさんに付き添っていて、ポルナレフは直ちに病院に運ばれた。
静まり返った機内でずっと、これまでのことを思い出していた。
初めて花京院に出会った日の事。
アヴドゥルさんがホルホースに殺されかけた時の事や彼が初めて私に笑いかけてくれたときの事。
いつしか彼は私の世界のすべてを構成していた。


もう彼は私に笑いかけてはくれない。頭を撫でてくれることも、手を繋ぐこともできない。

「壊れてしまったのだわ。」

冷たい頬に触れるとまだ彼が生きてるように錯覚する。
今すぐにでも彼がむくりと起き上がってきて全部嘘だよって言ってくれたらどんなにか救われるだろう。

車の窓から射し込む朝日は私の世界の終焉を静かに告げた。







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