ランピーさんに手を引かれて無事に林を出られたわたし達は誰かに会うわけでもなくそのままランピーさんの家にやってきていた。 途中遠くの方で女の子の叫び声が聞こえた気がしたけれどランピーさんは全く気にしなかった。 これが普通、なんだろうか。
そしてランピーさんの家は、小さめの家かアパートを想像していたわたしにとって思いきり予想を裏切られる結果になった。 想像よりもずっと大きかったのだ。 ちょっとだけニートかもと思っていたから悪かったなと反省するけれど、もしかしたらこの世界に家賃はないのかもしれないと思い付く。
それにしても目の前に建っているものは立派だった。 門も付いていてそこから芝が生えた庭、そしてその先には二階建てのお屋敷並の大きさの家だ。 わたしの住んでいた所とは大違いだったけれど、でも、一人で暮らすのは寂しそうだと思った。
そういえばランピーさんは、と思い隣を見ると、そこにいたはずの人はいなくて思わず探せば、彼は既に玄関の扉を開けようとしていた。
「え、ちょ」
行くの早いし声掛けてくれたって良かったんじゃないの!と思った瞬間くるっとランピーさんがこっちを見て一言。
「あ、危ない」
何が、そういう前にちらりと視界に入ったのは青色の何か。 慌ててそっちを見れば何か青い物体がそれはもう素晴らしい速度で近付いてきていた。あれが何なのかはまるで分からない。
もしかしてこれが24時間消えることがない死ぬ機会の内の一つなんだろうか、と何故か今この瞬間に頭をよぎる。 その間にも人か物かも分からないその物体は着々とわたしの方に向かってきていて避ける暇はなかった。
恐怖から思わず目を瞑ればやって来たのは鈍い痛みとぼごんと響く鈍い音。
あ、死ぬんだ。
吹っ飛ばされながらそう認識していると、霞む視界にランピーさんを見つけた。 ぼんやりとした世界に見えたのはランピーさんの困ったような面白がっているような何とも言えない不思議な顔。 少なくとも後悔している様子はなくて、わたしはまたこの世界の普通を知る。
「さようなら、また明日。」
直接頭に響く誰かの声を聞いたのが最期、わたしは訪れる暗闇に体を委ねた。
20130223 |