金平糖を狙い撃て! | ナノ
待たせるだけ待たせてあっという間に終わってしまった集会にこんなものなのかと戸惑いながらも、無事に自己紹介を済ませられたことにほっと息をつく。

なんとなく、斜め下に向けていた視線をいつもの位置まで戻してくると、目の前にはお互いを押し合っている男の子と女の子がいた。そのまた後ろには二人を心配そうに、呆れたように見ている男の子二人と女の子。

「あんた早く行きなさいよ!」

「なんでいつも僕なんだよ!たまには」

「つべこべ言わない!あたし達は先に行って待ってるから」

そう言った女の子はピンク色の髪をなびかせて、後ろにいた小さな赤い髪の女の子を連れて歩いて行ってしまった。そしてその子達に続くように男の子が二人、歩いていく。
目の前に残ったのは金色というよりも黄色といった方がしっくりくる髪の色をした男の子だけ。

わけが分からなくて、男の子を見ていると彼は小さく「あの」と声を上げた。

「僕、カドルスっていうんだ」

「これから草野球するんだけどナマエ、ちゃんもよかったらどうかなって」

だんだんと声がしぼんでいくカドルスくんに対してわたしのテンションはみるみるうちに上昇していった。
初めて遊びに誘われたのだ、嬉しくないはずがない!

「行く!やる!」

わたしの返事を聞いてぱあっと顔を明るくしたカドルスくん。こっちだよと腕を取られ原っぱまで走っていく。
もちろんその前に、近くにいたディドにありがとうと声をかけることは忘れなかった。

たくさん走って走って急いで原っぱまで向かうと、そこにはカドルスくんを置いて行ったあのお友達が待っていた。

「カドルスおそーい」

「やっと来た!」

「待ちくたびれたよぉ」

「お、お疲れさま!」

口々に言うお友達に対してカドルスくんはごめんごめんと笑いながら、わたしの方を向いた。

「紹介するよ、僕の友達なんだ」

ピンクの髪で大きなリボンをしているギグルス、紫色の髪でほっぺにそばかすがあるトゥーシー、大体黄緑色だけど髪にたくさんの色があるナッティ、赤くて長い髪にたくさんのヘアピンを付けたフレイキー。

それぞれ自己紹介をしてくれて名前と顔が一致する。記憶力はいい方だから、忘れることはないだろう。

「みんな、よろしくね」

そう言えばにっこり笑ってよろしく、と返してくれる五人に思わずほっとする。
そんなわたしの目の前でパンパンと手を叩き声をあげるカドルスくん。ちょっとだけびっくりした。

「それじゃあはじめよっか!」

六人という人数でほとんど野球とは呼べないものだったけれど、それでも楽しい。
始めてから一時間と少しくらいたったところでみんな一緒に休憩を取ることになった。

野球なんてやったことなくてそれはもう酷い有様には違いなかっただろうけど、それでもみんなとやったこの草野球はとても楽しくて、やりやすい。
助け合う、なんて当たり前のことが当たり前にされるこの空間がすぐに大好きになった。
わたしが今まで通っていた学校の体育を思い出して、この空間と180度も違うことに気付いて思わず泣きたくなる。

不意に遠くで誰かの叫んだような声が聞こえた。みんなに言おうとしたけれどその前にカドルスに名前を呼ばれたし、空耳だったようにも思えてきたからすぐそこまで出てきていた言葉は形になることなく消えていった。

「なに?」

「今どこに住んでるの?」

「ランピーさんの家に居候させてもらってるよ」

「あー、それじゃあ僕達とは少し離れてるんだね」

話を聞いていると、どうやらこの仲良し五人組はお互い近くに住んでいるらしい。
そういうのって、なんだかいいなあ。そう思った。

「ねえナマエ、今度一緒に服買いに行かない?
ランピーにセンスなんてものはこれっぽっちも無いし、それよりもわたしがナマエと行きたいの!」

キラキラと目を輝かせて言うギグルスに即座に行くと返事をしたわたしだけど、この判断を間違っているとは思えなかった。
どうしよう、すごく楽しみだ。
このテンションの上がり方に少しだけデジャヴを感じる。

結局そのまま他愛のない話を二時間ほど続けてお開きをすることになった。
まだお昼を少しだけ過ぎている、そんな時間だけどこんな日があったって悪くない。
ばいばいまたね、よい半日を!なんて言葉を交わしてゆっくりと家路につく。

全く知らない道に出て、結局家に着いたのは夕方を過ぎた頃だったのもいい思い出ということにしておこう。

20131108
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -