金平糖を狙い撃て! | ナノ
自らをヒーローと称したスプレンディドと一緒に集会開始の時間を待っている間、いろいろな話をした。
どうやらわたし達二人は年が近いらしく、気が付けばお互いを『ディド』『ナマエ』と呼び合うようになっていた。
同年代の友人なんてここにきてから初めてだからなんだかすごく嬉しい。
ただ、最初と少しだけわたしの扱いが違うと感じるのは気のせいもしくは仲が良くなった証だと思いたい。

それにしても、自称ヒーローを認めてしまうとわたしはヒーローのせいで死んでしまったということになるのだ。わたしの記憶では人を助けるのがヒーローであるはずなのに、ディドはヒーローと言うものを知っているのだろうか。
なんて思っていると隣から、「まあ、細かいことはいいじゃないか」と笑う声が飛んできて少しだけ隣を睨む。

「絶対ヒーローなんて呼ばない」

「そうかい。それは残念だけど君が私をヒーローと呼ばなくても、私はこの街のヒーローであることに変わりはないよ」

にこりとそう言ってのけたディドになんだか負けたような気がして、これ以上ムカつく必要はないと睨んでいたその先をディドから噴水へと逸らした。

そんなわたしの気も知らずに話しかけてくるディドに、適当に相槌を打っていた時だった。
突然ランピーさんが噴水のふちに立ち「集会やりまーす」と声を上げたのだ。

ランピーさんが司会をするんだと決まっていたんだったら、朝教えてくれていたって良かったのに。少しだけランピーさんに不満を抱きながら、ディドと一緒にランピーさんが立っている方へと歩いていく。
もしかして、ランピーさんは肝心な事ほど言わないタイプだったりするのだろうか。

しばらくすると、みんなが揃ったようでランピーさんが口を開いた。

「今日は新しい仲間を紹介しまーす」

そう言って、キョロキョロと目を動かせてわたしを見つけるとこっちだと言うように手招きをした。
ああ、とうとうこの時がやってきてしまった。
小さく深呼吸をして覚悟を決め、前へ出ようと片足を上げた瞬間、不意に腕を引かれる。
誰、なんて言わなくてもディドだと分かった。思わず「うわ」なんて声をあげてしまったわたしの恥ずかしさをどうにかして欲しい。

「今からわたし、自己紹介しに行くんだけど」

「分かってる。緊張してるかと思ってね。大丈夫、みんな野菜だと思ってしまえば簡単さ」

ぽん、とわたしの背中を叩いて笑ったディドに少しだけ気持ちが楽になる。
きっと大丈夫、そう思わせることが出来るディドはやっぱり少しだけ、ヒーローなのかもしれない。
相変わらず噴水のふちに立っているランピーさんの隣に並び、辺りを見回した。
たくさんの人がわたしを見ていて、また緊張が襲ってきたけれど慌ててみんな野菜だと言い聞かせて気持ちを落ち着かせる。

よし、いける。大丈夫。

少しだけ大きく息を吸って、ここにいる人皆に聞こえるように声をあげた。

「は、はじめまして!ナマエと言います。これから、よろしくお願いします!」

大きく下げた頭に、沢山の人の拍手が降り注いできて思わず泣きそうになったのはわたしだけの秘密にしておこう。
自己紹介がこなせたくらいで泣きそうになっただなんてディドにでも知られたら。そう考えて思わず体がぶるりと震えた。

20131104
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