「…お疲れさま、デルビル」
頑張ってくれたデルビルを少しでも癒すためにとモンスターボールにしまう。
結果は、惨敗だった。
いま思えば開始早々にゴクリンのあくびを食らったところから既にダメだったような気がする。
「えーと、ナマエだっけ」
「うん」
わたしの名前を呼んだのはさっきわたしに勝負を仕掛けてきた男の子であるカズキくんで、唸っている様子を見ると何だか言葉が見付からないようだった。
もしやと思いわたしは声をあげる。
「よ、弱かったとか?」
「や!別に!そういうんじゃないんだけどさ、何ていうかうーん…あー…多分、ナマエの負けた理由は基礎がしっかりしてないからだと思うんだ」
「基礎?」
聞けばカズキくんはこくりと頷き「とりあえずポケセン行こうぜ」と言った。
ポケモンセンターに向かいながら話を聞いていると、基礎というのはバトルで大切なタイプ相性だとか技の効果だとか、本当に基礎の基礎の事だった。
確かにわたしはただ旅に出ることしか考えていなくて、バトルの基礎や知識なんて全く知ろうとしてなかった気がする。
***
「それではお返ししますね」
ジョーイさんに返してもらったモンスターボールを開けると元気のない鳴き声と共に申し訳なさそうにしているデルビルが現れた。
わたしがしっかりしていたら、こんな思いさせることなかったのに。
「ほんとにごめんね」
そう言ってぎゅっと抱き締めるとさっきより少しだけ明るい鳴き声が聞こえてきて少しだけ胸をおろす。
不意に、ゴクリンを回復し終えたカズキくんが「あ!」と大きな声をあげた。
何事だろうと思いカズキくんを見てみると、カズキくんは目をキラキラと輝かせて、何かを見ていた。
「ナマエ!来て!」
「うわ!」
ぐい、と腕を引っ張られ連れられた先にいたのは白いニット帽のようなものを被った男の子。
少しだけ後ろを見たらちゃんとデルビルも着いてきていたから安心する。
「ユウキくん久しぶり!」
ユウキと呼ばれた男の子(多分わたしよりも年上だろう)はカズキくんに気付き笑って言った。
「カズキ、元気そうだな」
「まーね」
ユウキさんはふふん、と楽しげに笑うカズキくんを見て、それからわたしを見た。
「えーと…カズキの彼女?」
「違うって!」
さっきバトルして知り合ったとこなんだ、と紹介されわたしもそれに続ける。
「はじめまして、ナマエです!」
「はじめまして、俺はユウキ」
よろしくと笑うユウキさんにわたしもこちらこそ、と笑い返す。
なんだかすごく綺麗に笑う人だなと思っていると、カズキくん曰くコンテストもバトルも強いらしい。
コンテストってきっと笑顔も大切な気がするから思わず納得した。
無知だった
20130114
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