最初に会うのは誰だろうとわくわくしながらドアを開けた。
差し込む光に思わず目を細める。
ドアの前にいたのはわたしより背が大きな、耳もわたしより少し大きくて帽子を被った、わたしにとって大切な理解者の。
「やっぱりナマエだ!!もしかしてって思ってたんだあ」
「ピアス!」
「選ばれたんだねー!」
久しぶり、会えて良かったと二人でぎゅうぎゅうと抱き付き合う。
「久しぶりの再会にちゅーしようよ!ちゅー」
「それはいらない!」
んー、なんて近付いてくるピアスのおでこを思い切り押し返す。
ピアスはすぐにちゅーしたがるけど、これだけは今すぐにでも直してほしい。
後すぐに物を拾っちゃう癖も。
わたしはハリネズミの役持ちでネズミがついているけれどピアスみたいにちゅーを迫ったりすぐ落とし物拾ったりなんて事はしない。
可愛かったり綺麗だったりしたら拾うこともある、けど。
「そういえばここって?」
ちゅーを諦めた代わりなんだろう、わたしの頭を撫でるピアスにそう尋ねる。
「ここはね、クローバーの国だよ」
クローバーの塔があってナイトメアとグレイにも会ったから。と自信満々に答えるピアスに納得する。
そうか、だから建物も緑ばっかりだったんだ。
1人で納得するわたしにピアスがそうだ、と声をあげる。
「アリスにはもう会った?」
「ううん、まだだよ」
まだと答えたわたしにピアスは目を輝かせてアリスさんの事を話してくれた。
とってもいい匂いがするとか、とっても美人だし可愛いとか、とっても優しいとか。
それを聞いて今度はわたしが目を輝かせる。
良かった、アリスさん優しいんだ。
不思議の国の『アリス』とはあんまりお話出来なかったから仲良くなれたらいいな、なんて。
「じゃあ僕もう行くね」
にゃんこが来たら怖いから、と言うピアスに手を振ってお別れする。
「またね。ピアス」
「うん、また!」
ピアスを見送って静かになった玄関に寂しさを覚えながらも、久しぶりに会えた嬉しさが込み上げる。
今日は天気が良さそうだし、と探検がてらに散歩に行くことを決定していつものポシェットを提げる。
念のため、中に何も入っていない事を確認して。
知らない世界がみてみたい
20120827