何だか眠くなってきたと思ったところで、十数時間帯も寝ずに歩き回っていたことに気付いてお茶会がお開きになったついでに一旦家に帰ることにした。
ありがたいことに、所属がはっきりしていないわたしだったけれどちゃんと家ごとこの国に移っていたから寝る場所に困ることはない。やっぱりわたしの所属は、ハートの城なのだろうか。
お開きになったとき、アリスが一緒にハートの城に行って泊まって帰ればと提案してくれたけれどちゃんとしっかり断ってきた。あんなところに泊まっていくなんて、死ににいくとしか思えない。精神的に。
お茶会でやっとアリスとお話しすることができて、少しだけアリスの強さを知ることができたような気がした。
不思議の国の時のアリスさんには何だか怖いイメージがあったけれど、もしかしたら優しい子だったのかもしれない。勇気を出して話しておけばよかったと少しだけ、後悔した。
「つかれたあ」
玄関を開けてまっすぐベットに向かってそのまま倒れこむと、布団からぐぇ、とくぐもった声が聞こえてきた。
「あ、れ?」
慌てて布団をめくって、びっくりするよりずっとびっくりした。危うく大きな声を出してしまうかと思ったくらい。
布団の中には、さっきの衝撃もなかったかのようにすやすやと眠るボリスがいた。
「ボリス、起きて、ボリス!」
「うるせぇ、あとごふん…」
困る、非常に困る。ボリスがいったいどうやってここで寝ることに成功したのかはこの際どうでもいい。いいから早く退いて欲しい。わたしには眠さがもうすぐそこまで迫ってきていた。
揺さぶられることで寝られなくなったのか、ボリスは眠そうな目でわたしを見た。
「ナマエ」
小さく名前を呼ばれ、どうしたのと口を開こうとした瞬間に、腕を引っ張られ気が付いたときにはもう布団の中に潜り込んでいた。
わたしの体温で暖を取るつもりなのか、満足そうに抱き寄せる彼にできることなら針を立ててやりたかった。まあわたしの体のどこを探しても針なんて見つからないけれど。
抜け出そうと思う気持ちが湧き上がると同時に、このまま寝たいという気持ちもまた同様に湧いて出る。
ボリスの体温と、ファーと、布団がどんどんわたしを温めていって、どんどん瞼が落ちていった。
この仕返しは、きっといつか、絶対に。
星のクレイジーソングでおやすみ
20140203