目を明けると部屋はすっかり明るくなっていた。昨日、シャルからの意味不明な連絡を受けてまた眠れない夜を過ごす事を覚悟していたけれど、家に帰ってベッドに横になると気が付けば意識が飛んでいたようだった。どうやらわたしは二日もまともに寝ずに生活することは難しいらしい。今日はバイトも休みだし、久しぶりに喫茶店にでも行こうかな。少し部屋が荒れてきた様な気もするけれど、それはまたいつかの時に。一人で部屋に居ても、答えのない疑問に延々と悩まされることになるだけだ。美味しい紅茶とスコーンを頼んでクロロさんに借りた本でも読もう。すごくお洒落で、できる女見たいだと思った。
***
やって来たのは以前クロロさんとのきっかけが出来たあの喫茶店。カランと心地よい音を響かせて店内に入ると、何人かの挨拶の声に出迎えられた。
「ホットのミルクティーとスコーン、お願いします」
カウンターの店員さんに告げてから財布を取り出す。よくよく見ていると担当してくれた店員さんはあの時にもいた美人のお姉さんだということに気がついた。ニコリと溢れる笑みが愛嬌を感じさせる。代金を渡して注文した商品を受けとった。
ゆっくり座れる所を探し、溢さないように慎重に足を運んでいく。前とは違うけれど、日当たりがよくて一人でも居心地がよい場所が目に付いた。よかった、今日はここにしよう。
ぼんやりと考える。シャルは一体どこにいるんだろう。クロロさんの事を何か知ってるのかな。ていうかわたし、クロロさんの事好きなのに、何も知らないんだ。……あの時と、同じだ。シャルは気にするなと言っていたけれど、気にしないことはなかなか難しいということを、知っているんだろうか。
もやもやした気持ちをミルクティーでゆっくり流し込む。負の気持ちが消えていくことは無かったけれど、じんわりと体を暖めるミルクティーが何となくシャルみたいに感じて、それが少しだけ笑えた。
20121117(20150316)