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「これからよ、何かあったらおまえを、オレさまの周りにいるやつらを、ブッ壊されないように大切にしてやれるか?自信つけるためにバトルツリーに通ったり、師匠に稽古つけてもらったりしてだな、ようやくあのチャンピオン防衛戦に行ったわけよ」
「……」
「そこでおまえとバトルして!やっぱりだ、胸が高鳴る時間だった、それだけで満足してりゃよかったんだがな」

力なく笑う彼からはかつてのスカル団ボスの威厳は全く感じられなかった。密着しそうでしない体勢にドキドキする反面、ちゃんと目を見て話を聞きたい、そんな気持ちが勝ろうとしていた。

「おまえが代表とのこと聞いてホッとしてんの見てよ、両想いってやつじゃねえかと浮かれたが、おまえはアローラのアイドルってやつだ、簡単に手は出せねえ……」
「そんなこと……」
「そう思ったが、あのクソオヤジのせいでそんな気持ちは打ち砕かれちまったぜ」

……かなこ!大声でそう名前を呼ばれ、改めてグズマの目を見た。

「オレさまは今でも、頼りない男かも知れねえ。ハウやグラジオみたいにおまえの趣向とやらを理解してやれないかも知れねえ。……だがな、つき合ってきてはっきりわかったことがある。大切なものを、おまえを……、失いたくないってことだ」
「グズマさん……」
「絶対……オレの前からいなくなるんじゃねえぞ……、約束しろや」
「はい……」

その瞬間、掴まれていた腕はふわりと解放された。先ほどとは違い、柔らかく微笑むグズマを見て、かなこも強く頷きながら笑顔を返した。

「グズマさん……、ありがとう……」
「?礼を言われるようなこたぁ、何もしてねえけどな」
「うん、でも……、嬉しいです、そんな風に思ってもらえてたなんて」

そうかよ、ほんの僅かな呟きですらも優しくて。軽くキスをするとそれだけで、幸せでいられる気がした。


bkm
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