「ようやく会えたな、ストーカー野郎」
かなこをつけ狙ってた男。こいつはただのリーグスタッフじゃなかった。元々ストーカー気質らしい…かなこの前にも、気になったジムチャレンジャーを追い回しては、隠し撮りをしてたとんでもないやつだ。ったく、この変態野郎が。
「わざとでしたか…さすがトップジムリーダー」
「それはどーも」
「でも、いいんですか?あなた、彼女がいるのにかなこさんと…」
「……何が言いたい」
十中八九オレたちの写真を撮ったのはこいつだ。あそこには誰もいなかった…当たり前だろ?直前まで撮影の貸し切りで立ち入り禁止だったんだからな。こいつはストーカーをしながら気づいたんだ、かなこがオレに気があることに。だからあの場にいたんだろうが、何でオレより先にあいつの気持ちに気づいた?
「オレさまのスクープを撮れば、かなこが諦めるとでも思ったか?だとしても、だ。あいつはあんたのものにはなんねえよ」
「かなこさんは太陽みたいな人だ…、きさまのような軽い男になんか渡してたまるか!」
なら正々堂々と戦えってんだ。何で姑息な真似をすんだよ。後ろからは怯えたような息遣いが聞こえる…いいかかなこ、よく聞けよ。これがオレさま…、キバナさまの本音ってやつだからな!
「いいか?あれは罠だ、あんたの正体をつかむためのな。あいつには夫も子どももいる…家族の了承を得て、協力してくれたんだぜ」
……え?一体、どゆこと……?言われた通り息を殺して二人の会話を聞いてたけどこの人、わざと写真を撮られるよう仕向けたってこと……?
「あんたはあの日、オレさまがあのホテルに行くことをSNSで知った。だからこっそり張ってたんだろ?だがあの日、あのホテルの前では貸し切りの撮影が行われると大々的に発表してたからな…。ファンは誰一人として来なかった」
そう言えば、撮影の時に出たゴミのようなものが落ちてた気もする。普段、SNSとか見ないから、全然知らなかった…。
「予想通り、あんたはオレさまたちがホテルから出てきた写真を撮ってSNSに上げた。おかげであれからずっと通知が鳴りやまねえ…だが!こうしてあんたに会えたんだ…、身を削った甲斐があったってもんだろ」
……!!!自分がどう思われようと、そんなことを気にしない。さすが、キバナさんだと思った。ダンデさんに負けた写真ばかりで批判を食らったりしてもめげない根性はすごいと思ったけどまさか、ここまでとは…。その名に傷がつこうとも、あたしを盗撮してた男を捕まえようとしてくれたなんて……。
「初めはダンデのファンで、あいつを倒したかなこが許せねえから嫌がらせしてんだと思ったんだがよ。あんたに教えてやるぜ…惚れた女のことは、とことん守り抜くのが男だってことをな!」
バァンと勢いよく音を立てて扉が開いた。露になったあたしに厭らしい目線を向けてくる男から庇うように立つと、愛おしそうにそっと頬を撫でられる。うう…胸が張り裂けそうだ。こんな時一体、どんな顔をしたら正解なの?わかんないよ…、恋愛経験がなくて。