「へっ?下着メーカー?」
こないだ、キバナさんとルリナさんのポスターを見たばっかりだから。あたしなんかが広告になったら、ブーイングが来るに決まってる。こんな貧相な身体のどこに需要があるというの。
「チャンピオンの新たな魅力に気づいてもらいたくて!」
そう話すのは女性のリーグスタッフ。あたしに憧れてポケモンと毎日特訓してる、彼女はそう言っていた。でも、やっぱり恥ずかしい。撮影ともなれば男性スタッフはいるし、それに公に公開されるんだ…知り合いにも見られちゃうわけだし。
「だったら、水着はどうですか?」
うーん、そこに違いはあるの?脱がなきゃいけないことには変わりないよ…。一旦持ち帰って、マリィに相談することにした。
「んー?あたしなら断るけん。そういうの、アニキは許さんとよ」
そういうものだよね…次はホップに聞いてみたけど、年頃の男に聞くなよ!って怒られた。
「オマエ…それをオレが想像して、変なことに使ったら困るよな?」
「うん……?」
「その様子だと、どういう意味かわかってないんだな、心配だぞ…」
やっぱり、断ろう。ホップが困るようなことはしたくないもん。その後コスメのCMの撮影にスタジオを訪れたら、いつかのようにキバナさんに遭遇した。
「よお、かなこ」
「キバナさんも撮影ですか?」
んん…相変わらずかっこいい。直視できない。いつものあのスタイルだったら全然いいのに…、プライベートの時は本当、モデルみたいにおしゃれだから困ってしまう。横を歩くのも気が引ける。なのに。
「で、デート!?」
「そ。嫌か?オレさま相手じゃ」
「や…なわけ、ないじゃないですか…」
お、反応は意外と脈アリだな。もしかしてオレの気づかないところでかなこも、恋する女になってたとか?ダンデに手を握られてた時に赤くなってるとかなかったからな…心配してたが気分がいいぜ。護衛のつもりに誘っただけなんだが…、こうも意識されちまうと歯止めきかなくなりそうだな?いや…落ち着け、キバナ。オレは惚れた女の前ではいつでも紳士でありたいのよ。
「とは言ってもなあ…ガチなデートスポットは苦手なんだよな、オレさま」
「へっ?意外です。デート慣れしてると、思ってたし…」
ああ、ヤバい、マジで。抱きしめたくなっちまう。それからは無難に街をぶらぶら歩いて、店に立ち寄ったりするだけの簡単なものだったが、かなこは楽しんでくれたようだ。特に怪しい視線もなかったしな?けど、油断は禁物だ。一人になったところを狙われるかもしれねえ。ホップに頼んで近くまで迎えに来てもらって、この日は何事もなく終えた。
「キバナさん、例の件ですが…」
かなことデートしてから数日後。なんか妙に真剣な顔してんな?リョウタがオレの職務室にやってきた。オレはてっきり男のチャンピオン以外は認めねえから嫌がらせをしてんだと思ってた。だが、事態は思ったより深刻なようだぜ?リョウタのまとめたデータを見てオレは、愕然とした。
「何だよこれ…マジでストーカーじゃねえか…」