「オマエ……かなこのこと好きだろ」
あんな目に遭ったかなこを少しでも元気づけさせてやろうとオレは、仕事の前に行きつけの店にこいつを連れてやってきた。意外にも手頃だからか?それとも雰囲気を気に入ってくれたのか、かなこははしゃぎながら店内を見回っては身体に服を当ててみたり、試着したりしてる。……ったく、子供みたいな反応しやがって。ん?まだ年齢的には子供か?だいぶ大人に近づいてきたような気もするけどな?
「キバナさん、どれも良すぎて選べないですよぉ……」
「そりゃ困ったな。どれも似合ってるし、オレさま的には全部買ってやってもいいぜ?」
そう言うと困ったような顔しやがる…だがまあ、恐怖に怯えた顔はこいつには似合わねえ。何か策を講じなきゃな…そんなことを考えつつ、かなこの選んだ服をレジに持っていった。
「本気なのね?キバナくん」
「ん?ああ……」
店長を務めるこいつはいちスタッフの時からの馴染みで、オレの憧れてた女。デートしてくれなんて言う日には浮かれちまったが…、オレが支えられるようなレベルの女じゃなかった。だから、本気になる前に身を引いた。
「いい顔してるわ。あの時とは、全然違う」
「………そうかよ」
たぶんこの女は、オレが自分に惚れてることにも気づいてたろうな。けど別にフラれたとか思ってねえよ?結果的につき合わなかっただけで。何はともあれ、今じゃ結婚して子供もいる…幸せなら、それでいい。
「おう、かなこ。待たせたな」
会計を済ませて戻ると、不思議そうな顔を向けてきた。ん?もしかしてあれか?あいつに嫉妬してるってか?オレさまに惚れるのも時間の問題…なんて舞い上がってたオレは、この時裏では何が起きてたかなんて、まるで考えてなかったんだ。
「上がってくれ」
それから。オレはダンデに、会いに行った。