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*平和*


「リザードン、エアスラッシュ!」
「オーダイル、たきのぼり!」

いつしかこのメンバーで集まる機会が増えていた。初めこそコトネの存在に不安を感じていたものの、彼女と言葉を交わす度に汚れのない真っ直ぐさを感じたかなこは、少女が彼らと会う事を認めざるを得なくなっていた。明るくて可愛い…、自分が持ち合わせていない要素ばかりを持つコトネへの嫉妬がないとは断言できないが。

「うわあ、やっぱりレッドさん強い!」
「そんな事ないよ、最近はコトネちゃんに押されてばっかりじゃないか」

幼なじみが女の子を“ちゃん”付けする光景にも慣れた。あまり山を降りることはなくとも、他の誰かと会っている時はやはりそう呼ぶのだろうか。変な興味が湧いた。

「よう、まーたやってんのかよ。懲りねえな?おまえらも」

そして決まって仕事に暇ができるとこの男もやって来る。昔から変わらぬ面倒見の良さに感心するも、毎回違う服を着てくる必要でもあるのか。自分は昔馴染みだが、コトネの事はきちんと異性として認識してるという訳か。

「……何だよ、かなこ」
「別に?いっつも違う服着てるなんてお金持ちだね、そう思っただけ」

大概可愛くない。わかってはいるが、なぜか面白くないのだ。やはりこの男に惚れてしまっているのだろうか?とうの昔に忘れだはずの感情はまた、少女によって思い起こされることとなった。

「なら、つき合えよ、かなこ。あいつら見てたら、オレも戦いたくなっちまったぜ!」

幾らお洒落な服に身を包もうとも、こういうところはまだまだ子供だ。仕方なく受けて立つと宣言すると、無邪気な顔をしてかなこに向き合う。ドキン、胸が高鳴ったような音が聞こえた気がしてぶんぶんと首を振ると、目の前の勝負に集中した。

「今度からは格闘道場で勝負しましょう!ここ、登ってくるの大変なので」

休憩中にコトネが溢した本音に皆で大笑い。平和というのはこういった何もない日常の繰り返しのことを言うのだろう。妙に納得をすると気づけば、少女に対する嫌悪感はなくなっていた。


bkm
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