「すっごく見やすい席…!」
今日は、オニオンくんに招待されてエキシビションマッチを見に来ている。ジムチャレンジが近づいてくると自然と試合が増えてくるものだけど、オニオンくんの相手がビートくんだから驚く。確かに近くで生活してるけど…、タイプが違うと思っていたから。
「キョダイゲンエイ……かげふみだよ。逃げられない……、逃がさない……!」
「望むところだ……!」
オニオンくんは仮面を被っているからその表情は見えないけど。ビートくんの方はというと、すごく楽しそうに、笑顔だったり追い詰められたけど負かしてやる、そんな顔だったりをしている。あたし…、他のトレーナーの真剣な表情が好きなんだ。心ゆくまでふたりの試合を楽しんで、控え室に顔を出した。
「わ…かなこさん!ありがとう、来てくれて…」
「そんな!オニオンくんが用意してくれたんだもん、来ないわけにいかないよ!」
「ずいぶん、仲がいいんですね」
もう、何でこうなるんだろう。ビートくんの性格と片付ければそれまでな気がする。けど、黙ってたらふたりで何やら話し始めたからもしかすると…、気が合うのかもしれない。
「これ、せっかくだから食べて!ここに来る前に買ってきたんだ!美味しいと…思うよ」
「かなこさんが選びましたからね…期待しないで頂くとしましょうか」
「ぼくは、ありがたく頂くね…」
初めて会った時よりも少しだけ大人になったオニオンくんは、なんだかんだでビートくんと上手くやっていると教えてくれた。ビートくんはビートくんで、
「ぼくですか?オニオンくんとは近所なので、仲良くしてますよ。それに、年下のジムリーダーっていないですからね…余計な気を遣わなくて済みますから」
「へえ、そういうもの?」
「あなたはまあ…そういう事を気にするタイプではないんでしょうけど」
ジムチャレンジを経て、ジムリーダーたちの絆は深まっていく。もちろん、チャンピオンのあたしもそう。プライベートではなかなかご一緒しなくても、試合で顔を合わせればみんな、仲良しだ。
「会いたい……」
ぼそりと呟いたその言葉。たった数日顔を見ないだけなのに、どうして?何がいけなかったの?あたしが何かしたならちゃんと、謝りたい。途中からボーッとしてたからなのか帰り道、珍しくビートくんが声をかけてくれた。