「あら!もうこんな時間ね!時間が経つのは早いわね」
気づけば長居していたようだ。さすがに悪いと思いおいとましようと思ったが、
「そうよ!泊まっていきなさい!グラジオくん、かなこと仲良く、って言ったけど、本当はつき合ってるんでしょ?」
「……」
オレのところも大概だが、どういう神経してるんだこの母親は。年頃の女の彼氏を家に泊めて……オレを生殺しにする気なのか?かなこはかなこで、
「グラジオもベッドに寝るでしょ?ちょっと狭いけど、2人入れると思うよ!」
…なんて言いやがる。オレにそんな状況で我慢しろと言うのか?この親子、男の心境なんかまるでわかってない。
「オレは、床でも構わない」
「それじゃあ、カビゴンによりかかる?でも、駄目になっちゃうよ?」
……フッ。今度は何を言い出すかと思えば、駄目って何だ。試しにカビゴンクッションに座らせてもらったが確かに、
「これは駄目になるかもな」
「でしょー?だから言ったの!」
「……だが、オレはここでいい」
「ふふ、だーめ!グラジオもこっち!」
コイツの天然にオレは……、いつまで振り回されればいいんだろうな。
「……オマエ、隣に母親がいるのに緊張しないのか……?」
「うん!だって、グラジオといると、安心するから」
……安心。あまり好きな言葉じゃない。それとも、キスはしたがそれ以上何もされない自信でもあるというのか……?
「……ひゃっ!?」
前髪をかきあげて額にキスを落とす。それだけでびっくりするかなこ。だが……、やめてやるつもりはない。