この愛はようやく報われるんだ
「ユウジ先輩」
「ん、何や?どないしたん?」
小さく呟いた言葉はどうやら聞こえたらしくユウジ先輩は少し振り向いて返事をする。聞き覚えのある声に少し眉を寄せた。
「今日は謙也さんなんですね」
俺がそう言うと「そういう気分やねん」と少し笑う。
ーーーーー昨日は白石部長、一昨日は千歳先輩。その前は知らないユウジ先輩の友達。日によって、気分によって変わっていく先輩の声をテニス部に入って毎日聞いてるが、小春先輩の声は未だ聞いたことがない。なんでも、小春のあの可愛らしい声は小春の可愛ええ口から出るからええんや、とその時は確か白石部長の声で後ろにエクスタシーと付いていて吐き気がした覚えがあった。
「声だけ聞くとまんま謙也さんっすね」
少し褒めてみるとすごいやろっと自慢気に言ってきたのでキモいだけっすわ、と返事をしておいた
正直に言うと本当にそうだ。
まったく同じ声が2人おるっちゅーのはどこか気味が悪い。まるで不思議な世界にいるようで。
「そう言えばユウジ先輩の声って聞いたことないっすわ」
だから俺はユウジ先輩の前では禁句とされている言葉を普通に言ってみる。別に聞きたいと思っているわけではない。ただ、言ってみただけーーーー
「そうやったか?」
「まったく、ないっすね」
「ふーん……」
強制終了。
これ以上話したくないのかユウジ先輩はそっぽを向く。
そんなユウジ先輩を見て、明日は誰だろうかとどうでもいいことを考え始めた。
ーーーーーあ、やっぱ前言撤回
本当は聞きたい
(貴方の声が)
知りたい
(貴方の言葉を)
好きです
(貴方のことが)
だからこそ
全てを知りたい
声を聞けたその時、
この
愛
はようやく報われるんだ
※※※※※
ユウジって物真似(声のみ)得意だし自分の声を何らかの理由で出さないとか何かいいなぁ…と思って書いたらこのざまですた。
配布元:
うたかた
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