無自覚上司たちに宣戦布告!

(長編番外、エレン視点)


憧れの人がいました、一人はリヴァイ兵長でもう一人は名前さんです。
2人とも強くて人類最強となりそこねてしまった天才様。
粗暴はお互いに良くなくてそっくり、まるで鏡合わせのよう。
そんな似た者同士の二人は同族嫌悪からかよくケンカしていた。
最初は驚いたがだんだんと慣れてきて、理不尽な兵長の暴力と名前さんの八つ当たりの暴力にも慣れてきたところだった。
兵長と名前さんが一緒にいるところを見るとイライラするようになった。
最初はやっぱり二人からの暴力からかと思っていたがどうやら違うようで。
そのイライラの感情に名前を付けるのならば嫉妬というべきなのが分かった。
憧れの二人、なのに、こんな感情、

『リヴァイ、味見』


「ん」


料理好きの名前さんと潔癖で掃除を多発的にするリヴァイ兵長はやっぱりどこか似ていて俺が名前さんに対してだけ恋愛感情を抱くようになったころ、同時にリヴァイ兵長と名前さんの仲がほんの少しだけ良好になっていた。
まず、名前さんとリヴァイ兵長がお互いのことを名前で呼び合うようになった。
そして名前さんは兵長の掃除に参加するようになり、兵長は猫舌な名前さんの代わりに味見をすることが見られていた。
扉の隙間から2人を覗き見る。
こんなに好きなのに、やっぱり俺は二人の間に割り込めることができないのだろうか。
年齢も、一緒にいた時間も、実力も、すべてに差がある俺。
触れられるはずがないのだ…。


『エレン、』


「え?な、なんですー…か!?」


するとものすごい形相をして調理場から出てきた名前さんに驚いていると蹴り上げられた。
胸に直撃、一瞬過呼吸。
・・・兵長と並ぶくらいの理不尽さ。


『あのチビ・・・!俺の料理にケチつけやがってよお!おいエレン!起きろ、なに寝ていやがる!』


(貴方が蹴ったからでしょおおおおお!)


なんてこと、兵長にも名前さんにも言えるはずがなく痛みをこらえて立ち上がると目の前にはやっぱり怒ったままの表情をした名前さんが立っていた。
この人たちはお互いがケンカすると自分たち同士ではなく俺に八つ当たりする。
・・・いや、俺だけではない、正式に言うと。
調査兵団の分隊長クラス以外の人たちだ。
目に入った瞬間、ストレス解消の餌食である。
しかし何故俺が二人に頻繁に暴力を受けているかというと兵長は俺の監視であるからで俺は名前さんを無意識に追ってしまうからで・・・。
つまりは自分が二人の一番近くにいる可能性が高いのだ。

名前さんは立ち上がった俺の胸倉をつかみ上げた。
これは兵長にはできないことだ。(体格的な意味で)


『なあ、エレン・・・俺の料理が一度でも不味かったときはあるか?』


「な、ないです・・・ないです」


『その通りだ!』


「ひでふ!」


俺をつかみ上げていた胸倉から手を離されて地面へと落ちる。
痛みに悶えているとバンッと調理室のドアが蹴られるようにして乱暴に開いた。
開けたのは兵長で、名前さんと同じくらい怖い顔をしている。
・・・この二人、実は兄弟とかそんなことないよな?とか疑ってしまうレベルだ。


「お前、そりゃ俺の味覚がおかしいと言いたいのか…?」


「いっ!」


『ああ、そうだねチビはお子様の味付けしか理解できないんじゃねえの!?』


「っ!」


頼むから暴言を吐きあいながら倒れている俺を蹴らないでくださいいいい!・・・なんてやっぱり言えなくて。
ガスガスと蹴られ続けてから突然、


『おいおいリヴァイ、こんなに蹴っちゃエレンが可哀想だろうが…』


「テメェが暴力振るってんだろうが」


ー…衝撃の事実。
二人は何と無意識に俺を蹴っているそうです。
そして初めて2人がお互いの胸ぐらを掴み合ったのだ。
そして兵長を持ち上げようとする名前さんに気付いた兵長は自分の足が地面から離れた瞬間名前さんの腹を蹴る。


『ー…ぐっ、クソチビッ』


痛みで手を離した名前さんは兵長の方へと倒れ込む。
重力に逆らえず二人は床へと倒れた。
後頭部を強打した兵長は痛みで頭を押さえ、腹を蹴られた名前さんは呻いていた。


「『死ね!』」


二人は痛みが少し和らぐと同時に暴言を吐いてからお互いの体制の状況に気付く。
倒れこまれた名前さんにのしかかられた兵長。
お互いに顔が近いのに驚いたのか暴力も暴言もそのまま出なかった。
そして暫くして兵長の上から飛び退いた名前さんはカカカッと赤くなってしまった。
それを見た兵長も目を見開いた。

やっぱり付き合ってるのかな。
俺が思いを伝える前に2人は。
届かない、割り込む隙間なんてない。

見つめ合う二人を眺めながら痛むお腹や背中をさする。
そして思わず、


「付き合ってるんだ…やっぱり…」


なんて声を出してしまって。
二人の視線が俺に集まる。
口を手で押さえたけれど今更で。
顔の中心が熱くなるのが分かった。


『リヴァイ、エレンは何を言っているんだ?』


「さあな、俺には分からん」


「は?」


二人は呆れたような表情で、お互いを指さしあって。


「『コイツは男だぞ?なんで付き合えるんだ気色悪い』」


ー…俺はこの日、今このとき。
この無自覚馬鹿ップルから名前さんを奪ってやろうと決意したのだった。
俺は名前さんの腕を引いて未だ赤らんでいた頬を舐めた。
呆然とする名前さんと眉間に皺を寄せたリヴァイ兵長。
ゴクリと息を飲んで。


「宣戦布告、です」


無自覚な二人の思い。
自覚してしまう前に奪ってしまおうー…。


だって戦うこと以外知らないのだもの
もしも平和な三角関係だとしたら、きっとこんな感じ



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