病み双子シリーズ@

※拍手でのページで掲載している黄瀬双子を書き直したものです
色々と病んでいるので注意

僕、黄瀬名前には姉二人がいる。
僕、黄瀬名前には双子の弟がいる。
僕と涼太は瓜二つで見分けがつかない。
ただ、容姿も声も苗字も一緒なのに違う事はあった。
それは存在感、いやスター性?なんと言うべきかはわからなかったけど涼太はモデルでスポーツが出来てキラキラしてる。
でも反対に僕は兄なのに涼太の後ろに隠れて人目を避けてビクビクしてて内気で、どちらかというと暗いタイプだった。


「黄瀬くん、あの…こ、これっ」


『え…僕に?』


と、受け取って手紙の後ろを見ると「黄瀬涼太くんへ」。
僕はだよね、と溜息を吐いて涼太へその手紙を流してあげる。


「おらあ!黄瀬ぇ部活さぼってんじゃねえよ!」


『ひぃ!!』


と、涼太が学校を休めば肌の黒い人につるまれて。
無理やり体育館に連行されて怯えていると「お前、黄瀬兄か?」とやっと分かってもらえる。

この世の中上手くできていて。
僕はよく涼太に間違えられるのに涼太は一度だって僕に間違えられやしないんだ。
世界そのものに存在を否定されている気分だった。
「涼太がいるから名前はいらない」、「同じ顔は世界に1つだけでいい」って言われているみたい。


「いいじゃない、俺だけの名前って感じで俺は安心する」


『僕は…涼太に間違えられたくないんだよ…』


「―…名前、俺の大切な兄弟」


同じ顔、だなんて言われるけど俺たちからしたら全然違う。
同じ声、だなんて言われるけど俺たちからしたら全然違う。
俺にとっての最愛の双子の兄弟は俺より優しい目をしていて大人しくて誰よりも優しい。
声だって聞いているとホッとする。
俺とは違うのに、どうしてみんな間違えるのか不思議だった。
でもそれは逆に俺を安心させてくれた。
青峰っちも告白した女の子すら気づかない。
そう、俺だけが知っていればいい名前の全て。


「黄瀬くーん!」


パタパタと俺たちが廊下を歩いていると女の子が駆け寄ってきた。
頬を赤らめて、走ってきたから呼吸を乱していた。
しかし女の子は俺たちが同時に振り返ると慌てた様に見比べた。
見分けがつかない、2人並んでいるのに。
そんな様子に名前は一瞬、目を伏せてから女の子に『涼太はこっちだよ』と優しく声をかけた。
すると女の子はホッした表情になって。


「…2人で話したいことが、あるんだけど、いいかなっ」


「あ、でも…」


俺と名前を見分けられないような人なんかと付き合う気なんてない。
そもそも、俺にはもうすでに心に決めた人がいるのに。


『じゃあ僕は先に教室に戻ってるからね』


「え」


いそいそと逃げるように微笑んで歩いていく心に決めた人。
そんな気遣いこんな女の子にする必要なんかないのに。
だって君と俺を見分けられないような人なんすよ?


「あ、あの黄瀬くん…のお兄さんのことで、聞きたいことがあって」


しかしそんな彼女の言葉に俺の思考は一気にそちらへと持ってかれた。


「黄瀬くんのお兄さんと、私、仲良くなりたくて」


「そ、それでね、弟の黄瀬くんに頼むのもあれかなって思ってたけど…何時も一緒にいるから」


「こんがらがっちゃうから、名前で呼んでもいいのかな…」


分かる、この子は真剣に名前のことが知りたいと思っている子なんだって。
控え目で内気そうな雰囲気は何だか名前に似ている。
それに名前の優しさに気付いたあたりだって喜ばしい事なのに。


「俺のこと名前で呼んでもいいっすよ」


「え?、で、でも」


「俺、結構前から君のこと気になってたんだ、名前教えてもらってもいいっすか?」


ごめんね、兄弟、最愛の兄弟。
名前の全てを支配したがって全てを奪うような愚かな弟でごめんね。
君はきっと気付かないでしょう。
その優しい真っ直ぐとした心で俺を信じ続けるでしょう。
だけど安心して、名前に人は一切近づけなければ「好き」も「嫌い」も知らないまま俺とずっと一緒にいられるから悲しい思いはさせないから。


「…ごめんなさい、私は、似ていてもやっぱり黄瀬くんじゃなくて名前くんが好きなの」


「―…」


一途な気持ち。
本当はこんな子のような優しくて真っ直ぐて可愛い君が名前の傍にいるべきだと分かっているのに。


「あーあ、残念っすわ!じゃあ君のことは伝えておくっすよ。応援するっす」


「!!、ありがとう黄瀬くんっ」


―…嗚呼本当に。
俺って最悪な奴。


「お待たせ…、」


『ああ、涼太。もう終わったんだね。じゃあ僕はこれで』


「うん、またね名前」


(は?)


見えたのは赤。
教室の前に立っていた名前が教室の中の人物に手を振った。
俺にしか向けないと思っていた笑顔で。


「赤司っち?」


「涼太、待ってたよ今日の部活で連絡があってね」


「…そんなのメールですればいいじゃないっすか…何で教室に、」


『涼太?どうした?』


ブツブツと小さく呟いている俺に優しい声と馴染む手が触れる。


「丁度通りかかっただけだよ。そのとき名前に会ってね」


『赤司くん、僕をバスケ部に勧誘してきたんだよ。驚いちゃった』


「勧誘って…、」


『僕も涼太ほどじゃないけど運動はそこそこできるだろ?ちょっと興味が―…』


「名前は俺の後ろにいればいいんだよ!!」


荒上げた声。
名前の笑顔が強張る。
赤司っちすら驚いた顔してる。
醜い嫉妬の渦だ。


『…な、何だよ涼太…僕だって涼太みたいに目立ちたいと思う時くらいあるさ!』


「目立ちたい?ずっと俺の後ろに隠れてきた癖によく言えるな?俺の代わりにモデルやってみるか?何なら今日撮影しに行ってこいよ」


赤司っちは何時もの俺の口調じゃないことに驚きながら兄弟喧嘩を止めてくれようとするが口論が止まる様子はない。
そりゃそうだ。
何で兄弟に、家族に、友人と同じ口調になるんだ。


『僕は涼太のせいで手紙やらプレゼントやらを受け取っては横流ししてるんだぞ!君がいつも目立つから僕は他の女の子から告白されても、』


「モテたいって言いたいの?俺が悪いんじゃなくて間違えた子が悪いって前も言っただろ?」


「2人ともいい加減にしろ!涼太、何にそんなにいらついてる?」


赤司っちの声にハッと自分が言ってしまった言葉に後悔する。
目の前には酷く傷付いた顔をしている自分の双子の兄。
名前の言い分は何も間違え何てなかった。
俺と正反対の性格の名前。
明るくて嘘でも優しいスポーツマンの俺と内気で俺以外とあまり会話しないような名前。
圧倒的に人と関わりを多く持つのは俺の方。
それで同じ顔をしていれば俺の方に人がくるわけで。
間違えられることだって名前は悲しかったはず、辛かったはず。
告白されても自分宛でない、声をかけられても自分に向けてでない。
そんなことを繰り返されてしまえば内気な性格でも目立ちたいと思ってしまう。
そんな気持ちを否定する権利なんてないのに、否定してしまうのは勿論。


『…僕、先に帰ってるから』


「名前、お、俺」


『じゃあ、部活頑張ってね』


こういうとき。
兄弟って辛い。
喧嘩したときなんて会いたくないのに。
顔を見ないで一度気持ちを整理してみたいのに、それすらできない。
家に帰れば必ず会うのだから。
それどころか、鏡に映れば自分が名前の顔をしている。


「…っ、」


ただ、好きなだけなのに。
男同士ということだけで。
家族であるということだけで。
兄弟であるという事だけで、罪になる。
本当はずっと分かっていたんだ。
こんな愛情、やめるべきだって。
名前の道を壊してるって自分でわかってるんだ。
だけど抑えられない、その衝動。


「涼太、携帯鳴ってるよ。それと今日はもう帰って良いから仲直りしておいで」


「…赤司っち、さっきはその、ごめんなさい」


「…謝らなくても構わないよ」


「え?」


「涼太の感情は間違ってない、僕は名前が好きだからね」


―…は?


「だから僕のことはそう見ても構わない、だけどその嫉妬を名前にぶつけるのは感心しないな」


「赤司っちだってどうせ名前と俺のこと見分けられないんじゃないっすか?」


「まさか、好きな人を見間違えるはずないじゃないか」


そう言って、部活に向かっていく背中。
再び落ち着きかけていた感情が沸々と湧き上がっていく。
俺はさっきから煩くなっている携帯を取り出す。
画面を見て舌打ちをした。
…さっきの女か。
一度深呼吸をしてから電話に出た。


「も、もしもし?」


「≪あ、あの、はじめまして私B組の…≫」


「あ、涼太から聞きました、僕と話がしたいって…」


同じ声と同じ顔。
俺と同じ顔をしている名前は勿論女の子受けがいい。
それを全て払ってきた。
嗚呼まったく、害虫駆除は本当に面倒だ。


「≪う、うん…さっき廊下で会ったんだけど…覚えてる?≫」


「あ…さっきの…僕に用事だったのにごめんなさい」


「≪いいのっ、私が見分けられないのが悪いんだし…本当にごめんなさい≫」


良い子なんだ、分かってる。
優しくて小さくて柔らかい女の子。
きっと付き合ったらベストカップルになるのに。


「≪こ、今度、一緒に話がしたくて…週末、あいてる…?≫」


「…ごめんなさい、その日は僕用事があって」


「≪そ、それじゃあ明日の放課後、少しでいいから!≫」


優しい君には優しくしてあげる。
それがせめてもの俺のやさしさ、いや、そうじゃないか。
俺が名前の真似をすることで名前のレベルを下げるようなことしたくないだけ。


「僕、噂とかたてられるの…苦手なんです、だから、ごめんなさい」


「≪―…、ううん、私こそいきなりごめんなさい、ありがとう≫」


鼻を啜る音が聞こえてから暫くして電話が切れた。
何時もなら告白まで聞いて自分が涼太であることをバラして怒る女の前で見分けられないお前が悪いとか、言いふらそうとするなら「黄瀬涼太の言葉と君の言葉、誰が信じると思う?」と脅す。
本当、最低だ。
どこが名前と似ているんだろう。
こんなに俺は悪い顔して、悪い声して、悪いことしてるのに。


『お帰りなさい、もうお夕飯できてるよ』


「…」


家に帰ると笑っている名前がいて、さっきまでギスギスしてた気持ちが温まるのが分かった。


(俺が好きなのばっか…)


食卓に並べられているものをみて、キュッと心が切なくなる。
そう、だから俺は名前が好きなんだ。


「美味しい、」


『そ、よかった。食べ終わったらケーキあるからね』


「え!?太っちゃう!」


『その分動けばいいでしょ』


こうやって喧嘩したあと、何事もなかったかのように振る舞ってくれるから。
だから俺は、名前が好きで好きでたまらなくて。
その分、自分の性格の悪さが嫌で嫌で仕方なかった。

でも俺は気付かなかったんだ。
俺は名前と兄弟で双子。
顔と声だけが似ているわけじゃないってこと。


本性を隠すのは君だけじゃないよ
シリーズものなのでもうちょっと続きます
まだ病んでいませんが、拍手小説で掲載しているのようなことが起きますのであしからず


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