黒子テツヤの恋愛思考

※黒子が気持ち悪いです、注意してください
そのうえ流血表現、嘔吐表現もあります

『黒子のことが、好き』


最初は俺からだった。
熱くくて焼ききれそうな顔、震えた声。
黒子はそんな俺を見て一度固まったが嬉しそうに微笑んだ。


「いいんですか?僕なんかで」


『…黒子じゃないと、やだ』


「…嬉しいです、でもひとつだけ先に言っておきます」


黒子が俺の手を取って甲に唇をくっ付けると可愛らしいリップ音がした。


「重いですよ、僕は」


そんな言葉の意味なんてどうでもよかった。
自分の告白を同性である黒子が受けてくれた、それだけの事実が嬉しくて浮かれてた。

そして付き合って数か月でその意味を知ることとなった。


【黒子テツヤの恋愛思考】


きっと恋に落ちたのは僕の方が先だったと思う。


「じゃあ男子は15週、女子は10週してね。気分が悪くなったら先生に言う事」


それはマラソンの授業で。
みんなが不満の声とため息を吐き出していると僕の隣にたまたま立っていた名前くんがキラキラした顔で今すぐ走りたいという顔をしてた。


(確か、火神くんの前に座ってる…苗字くんでしたっけ?)


そう思っているうちにみんなが走り出した。
楽しそうに走る苗字くんに火神くんが声をかける。
座席の関係か仲が良いようだ。


「なあ苗字!どっちが早く終わらせるか勝負しようぜ!」


『言ったな、じゃあ買ったら昼飯おごり!』


「OK!」


すると一気にスピードが上がる2人。
他の生徒が「馬鹿だ、スポーツ馬鹿」と言っていたけど5週目でその言葉も言えなくなるくらいみんな疲れてきた。
彼らの話によると苗字くんは陸上部で県大会にもよく出場するようだ。
彼は走ることがとにかく好きらしい。
火神くんを余裕の距離をとって勝った苗字くんの笑顔は眩しかった。


(あ、)


それは、男子高校生ではない思考だった。
前半戦に走りを終えていた女子に囲まれて笑う彼。
その体操着の半袖から見える彼の二の腕。
汗が伝う首筋。


(白い…それに汗…)


こんな男子高校生いるのだろうか?
同じクラスの男子の汗を舐めたい、と思うなんて。
走って疲れる脚、息がしにくい、胸が痛いのはきっと走っているからじゃない。
遠くから見ていればそれでよかった。
気味悪がられるくらいなら、このままでよかったのに。


『えっと、バスケ部のお手伝いとして来ました。陸上部の苗字名前です』



「え?」


何でもカントクが基礎体力をつけるには走るのが必要だと助っ人を頼んだらしい。
しかし良い人材がいないと陸上部を見ていると目に止まったとか。
カントクの目に狂いはないが…、これは非常にまずい状況である。


「苗字じゃねえか!」


『よお、火神!今日はビシバシ助っ人として鍛えるからな!』


火神くんが苗字くんの肩を組む。
笑いあう二人。


「…ちっ」


一瞬、体育館の空気が固まった。


「く、黒子?どうした?」


「え?あ、いえ、何でもないです、」


『あれ?黒子くんだ、黒子くんもバスケ部だったんだね』


同じクラスだよな、と自然な流れで手をとられたとき。
欲しいと思った。


(欲しい、欲しい苗字くんが欲しい。触れてる手も髪の一本に至るまで全部欲しい)


貴方が吐き出す、二酸化炭素さえ愛おしい。
駄目だ、そう思いながらも欲する。
週に一度助っ人として来てくれるとクラスでも話すようになった。


(抑えなきゃ。抑えなきゃ。抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ)


そうやって耐えてきたのに。
告白なんてされてしまえば、もう全てどころか何もかも。
排出されるものまで全部欲しくなるのは当然のことで。

会話していると呼吸が気になって、勿体ないと思う。
名前くんの口から喉、そして肺までいきわたって出てくる二酸化炭素が欲しくなる。
でもさすがに無理だからキスして我慢する。
名前くんは『黒子は本当にキスが好きだね』と微笑むけど、きっと僕がそんな理由でキスしてるだなんて思ってない。
それでも共通して理解しているところがある。
「このキスは愛情表現である」ということだ。


「その足、どうされたんですか?」


『んー?、ああこれね』


体育の授業の着替えの最中、目に入ったのは足の絆創膏。
前にいる火神くんが「怪我か?」と問うと『昨日の部活でこけて擦り傷できてさあ』と笑う。


「…あの、名前くん」


『なに?』


「この後、少しいいですか?」


『?』


体育の授業が終わると僕は校舎裏まで連れて行ってジャージを傷のある場所までたくし上げた。
『何!?』と慌てた様子だけど僕は「そのまま座って」と地面に尻を付けてもらい絆創膏をはがした。
擦りむいた傷は赤くておいしそう。
ごくり、と唾液を飲んでから本人の了承何てとらずに傷を舐めた。
鉄の味、でもどうしてだろう、甘い。


『黒子、汚い、よせっ、う…っ』


「僕はね。名前くんが大好きだったんですよ」


『…?』


「僕は好きなものすべて手に入らないと納得できない。身体、心、排出されるものまで。僕は名前くんの吐いた嘔吐物だって喜んで飲めます」


『…っ!?』


「愛してますよ、ああ、君の血は本当に美味しいです…生理になればいいのに」


さあ、っと名前くんの顔色が青ざめたのも知らずお腹を撫でる。


「大丈夫、高校生でも初潮が来ない人だっていますから。でもきたら言ってくださいね。そのときはお赤飯もっていきますし。それにそのときは血を飲ませてください」


『俺、男だから、生理なんてこない…っ』


「…そうでしたね、じゃあ」


ばちぃいいいん!と傷に思いっきり手をたたきつける。
『うあ!』と痛がる声が聞こえた。
でも肌が赤くなるだけで血なんて出てこない。
やっぱり僕の力が弱いからでしょうか、おかしいな。


「自分で傷付けるのって人間は本能的に怖くてできないでしょうし…」


『黒子、血なんて飲まなくたっていいじゃん』


「…僕のことが嫌いですか?」





黒子に嫌われたくない、それが真っ先に思った事だった。
生理がこなきゃ黒子に嫌われてしまうかもしれない。
どんなに傷を付けようとしても少量の血しか出てこない。
キッと黒子が求めるのは少量じゃないんだ。


『どうしよう、何でどうしたら、何で生理が来ないんだよ、黒子に嫌われちまう…』


生理を求める男子高校生なんて異常だ。
黒子の試合を見ながらも無意識に爪で傷を引っ掻く。
それでも少量のものしか出てこない。
俺だって痛いのは嫌なんだ。


「誠凛の勝ちだ!」


観客の声に顔を上げる俺の学校が勝利したらしい。
黒子、嬉しそう。
火神と笑い合って楽しそう。


『…』


 ・
 ・
 ・


『火神』


「お、苗字じゃねえか観に来てくれてたのか」


『うん…あのさお願いがあるんだけど』


「?」


俺はそっと火神にあるものを渡す。
驚いて「何持ち歩いてんだよ」と言われた。
火神なら優しいから。
火神はれと黒子の仲を知っているから。
俺よりも力があるから。


『それで俺を刺して?』


そうすれば、黒子が満足する分だけの血があふれ出すと思うんだ。


血だらけラプソディー
とりあえず火神、ごめんね
君が一番の被害者ですw



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