無料の恋、有料の愛

※黒澤も出てきますが私の自己解釈です
黒澤…二次創作で生まれた。白澤と真逆の色(服、髪など)をもつ、本家には存在しないキャラ。


『お前は誰にでも優しいですね。それに笑顔を絶やさない』


「…名前?どうしたんだい?突然」


嗚呼、男には向けない笑顔。
女の子だけに向ける笑顔が腹立たしい。


『気色悪い顔しやがって』


「鬼ってのはこうもみんな口が悪いの?アイツのこと思い出させないでよ」


『それは鬼灯のこと?』


俺の言葉に肯定するように肩を白澤様はすくめた。
白澤様との出会いは数百年前にさかのぼる。
鬼灯に頼まれて天国まで行って薬を受け取りに来た。
その時俺を女の子と勘違いした馬鹿は俺を口説き男と気付いた瞬間、嘔吐したのだ。
俺は別に華奢じゃない。
鬼灯と同じように金棒を振り回しているんだから筋力もある。
ただ容姿は中性的であった。(だからといって自分より体つきの良い男を口説くだろうか?守備範囲が広すぎる)

俺は白澤様の飾りを指に絡めた。


『俺はあんたなんかお呼びじゃないんです』


「本当、どうしたの?鬼灯の奴に何か吹き込まれた?」


『お前じゃない、』


俺が惚れた男はコイツじゃない。
一度だけであったことがある黒い人だ。
コイツが白なら、あの人は黒。
俺は黒澤と呼ばせてもらっている。
コイツが理性なら、あの人は本能。
コイツが表なら、あの人は裏。


『黒澤様に会いたい…』


「え?え?僕に親戚なんていたっけ?いやいない、うんいないよね?」


『お前は知らないでしょうね』


だってあんたの本性は俺に惚れてるんだ。
けど女好きが長かったお前はそれを否定する。
男を好きになることを根本的に否定しているお前に興味なんか湧かない。
ねえ、お前が死ねば。
あんたの本性は出てくるの?


「泣かないで、」





名前の言う、黒澤さんは。
僕のことを指している。
名前の言う、お前だの白澤だのはもちろん僕を指している。
そんなこと僕自身が知らないわけがない。
当たり前じゃないか、僕はお前より鬼灯より閻魔大王より長生きしてるんだよ。
自分のことくらい一番理解しているさ。

嗚呼、そうさ僕は名前に惚れている。

一度だけ好きだよと抱きしめたことがある。
それが名前にとって黒澤に見えてしまった瞬間なのだろう。
僕としては抱きしめて告白したときに冗談だと言われて殴られると思った。
けど、どうしたことか。
見れば顔を真っ赤にして黙ってしまったじゃないか。
その姿を見て僕は悟った。
嗚呼、名前は僕に惚れている。
咄嗟に出た言葉は「あれ?どうしたの顔真っ赤、風邪かな漢方でも飲むかい?」だった。
必死に自分の気持ちを隠した。
しかし名前は慌てて『白澤様、今の言葉、』と問い詰めたとき。
「なんのこと?」としらばっくれた。
名前の頬から赤みが消えた。
そしていつも通りの会話に戻った。


(ありゃ、結構誤魔化されちゃうタイプなのかな…)


それとも飽きられちゃったかな、そんな考えが甘かった。
また仕事で現れたとき。


『白澤様、黒澤様はお元気ですか?』


「は…?」


黒澤って誰?
僕は驚いた、名前は勝手に僕の中にもう1人いると考えてしまったのだ。
誰のこと?僕は白澤だよ、何百年の付き合い?新しい嫌がらせで鬼灯に頼まれたの?上司の命令だからってそんなことしないでよ、名前を間違えるって失礼なんだよ。
そういった時、呟いたのだ。


『お前じゃない…』


僕は確信した。
コイツは、僕が二重人格か何かだと仮定して確定させたのだと。
つまり女好きの僕と名前に告白した僕は違う人物だと思ってる。
それは全て僕だというのに?
けれどこのままのほうが良いのかもしれない。
このままの方が名前にとっても僕にとってもいいのかもしれない。
神獣である僕と鬼である名前はこれからも何百年、何千年と長い付き合いをすることになるだろう。
お互いに天国と地獄に勤め、仕事上の関係でしかない。
余計な感情は迷惑になることだろう。
長い生、お互いにそこまで深く干渉しないほうが良いはずだ。


(それに、きっとお前の方が早く死ぬんだろう?)


そんなの愛着が出たら耐えられない。
地球が生まれて類人猿が生まれるまで寂しかった子供時代。
あの孤独を何時か味わう日が来るのは分かってる。
けれどけど、一人ぼっちになるより本気で愛した人をなくす方が辛い。
だから僕は本命を作らないで遊ぶ、あそぶ、アソブ。
これでいいんだと自分を抑えて。


(あ…そうか、いたのか僕は)


(今まで気づかないかった、黒澤(本音)、君はいたんだね僕の中に)


白じゃなきゃよかったのにな。
でもみんなが安心して近寄ってくるのは白だ。
白(嘘)はみんなに愛される。
黒(本音)は正直だけど全ていいとは限られない。


―…なあ僕よ、いい加減素直になるべきだ


(名前の生を邪魔する気?)


―…邪魔したらいいじゃないか、邪魔しあって生きていこうよ愛してるんだろ?


(そうさ、愛しているから邪魔できないんだ)


―…僕は嘘ばかりだね、本当は滅茶苦茶にしてしまいたいくせに


(…)


―…代わってくれよ!僕なんかより僕のほうが上手く生きていける!


(上手く、生きていけないよ)


嘘を吐けないお前は正直すぎて駄目だ。
だから僕は笑ってあげる。
何時か名前が僕(本性)を忘れてくれるその日まで。
大丈夫、鬼の生は人より長いんだ。
忘れるなんてすぐそこさ。


だから。


「泣かないで、」


(泣かないで、僕(本音))


無料の恋、有料の愛

確かに恋だった

そういえば、僕のことは様をつけるのに、どうしてアイツのことは呼び捨て何だい?



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