16

「リア、こっちに戻ってこい」


『え…ああ、』


麦わらは天竜人を殴れば海軍の大将がやってくることを知っているのに殴ったらしい。
仲間であろう魚人が撃たれたから、友人であろう人魚の彼女が泣いていたから。
その理由で。
そして麦わらの仲間たちはそれを咎めることもなく「しょうがない」と気に掛けることない。
トラファルガーが少し楽しそうに笑う。
後ろにいるキャプテン・キッドも楽しそうな様子だ。
天竜人の護衛を倒していきケイミーと呼ばれた人魚の彼女を助けだそうとする麦わらたちに天竜人は怒りは頂点になったようだ。


「海軍大将と軍艦を呼べ!!目にものを見せてやれ!!!」


その声に客は逃げ惑う。
しかしトラファルガーは気にした様子もなく面白いものを見るように足を組んだまま。
トビウオが何度も突撃してきて天井を破り麦わらの一味が勢ぞろいし天竜人に激突するなど狂ったことばかりをする。
麦わらが人魚の彼女を指さして首についた爆弾を外したら海軍大将と軍艦が来る前に逃げるよう指示する。


「海軍ならもう来てるぞ。麦わら屋」


「何だお前、…何だそのクマ…あ!フードの!さっき怒ってくれてたよな!」


『…』


「海軍ならオークションが始まる前からずっと、この会場を取り囲んでる」


トラファルガーの言葉に驚く麦わら。
この中の誰かを捕まえたかったのかもしれないがまさか天竜人が殴られるような事態になるとは思わなかっただろうとトラファルガーは推測する。


「トラファルガー・ローね貴方…ルフィ、海賊よ彼」


「クマもか?」


「それに隣にいるのは鳥籠のリア…いちや一族が本当に外に出ているだなんて…!」


「いちや一族ってなんだ?」


そんな会話の最中、唯一の女性であった天竜人が人魚の彼女に銃口を向ける。
「魚!」と彼女に言い放つところからして本当にここは彼女や撃たれた魚人の彼のように差別をしている島らしい。
しかし、一気にビリビリとした殺気が彼女を襲い、気を失って倒れる天竜人。
現れたのは老人と巨人。
何を会話しているのか分からないが警備兵がうろたえていると、再び殺気を会場中に放つ。


『…っ!?』


ビリビリとして隣にいたシャチ先輩がくらついていた。
これは確か覇気と呼ばれるものじゃないか?本で読んだことはあるが受けたのは初めてだ。


「ーまさかこんな大物に、ここで出会うとは…」


トラファルガーが、冷や汗をかくくらいの相手ってことか?
さすがに外の人物までは詳しくない。
後ろに立っていたキャプテン・キッドも冷や汗と動揺が隠せていないようで。


「"冥王"シルバーズ・レイリー…!間違いねえ何故こんな所に伝説の男が…!」


しかしレイリー本人はその名を言わないでほしいと控えめに言うと魚人の彼を心配した。


『トラファルガー、もう外は包囲されてるんじゃないか?』


「だろうな」


拡声器で聞こえる警告からして犯人は麦わらの一味でなくルーキーになっているようで共犯者扱いである。


「俺たちは巻き込まれるどころか…完全に共犯者扱いだな」


『どうする?俺が行こうか…?』


「リアちゃんなら銃全部曲げちゃえば終わりだもんな」


なら、と立ち上がるとキャプテン・キッドと目線が合う。


「こんなところに…って言えばお前もだな鳥籠のリア…!」


『…』


「あの目には興味がある海賊は多いはずだ、確か片目で8千万ベリー、両目で1億6千万ベリー!身体が付けば鳥籠で鍛えられた男娼のテクニック付きときた!」


「「「両目で1億6千万ベリー!!!???」」」


麦わらの一味がその金額に驚愕する。
麦わらが先ほどトラファルガーのことを海賊だと言った博識そうな彼女に問う。
あの目とは何だ、と。
しかし答えたのはオレンジ色の髪をした女。


「いちや一族の緑の目は見た者を魅了し惑わせると言うわ。大富豪や国王が欲しがるともされている、両目で1億6千万ベリーなんて言われているけど今じゃもっと価値は上がっているわ」


オレンジの髪の女(確か泥棒猫のナミ…だったか?)は目をキラキラさせている。
何て素直にお金好きだと分からせてくれるのだろう。


「見せてくれよ、気に入ったら俺の船に乗せてやる!」


「待て、リアはすでに俺の船員だユースタス屋に渡す気はない」


「はっ、どうせ目を見ちまって依存してるだけだろ?俺の船でならもっといいように―…」


バキンっと柱が折れる。
いや、柱だけじゃない生き物以外の物がバキバキと曲がって折れていく。
もちろん俺が能力を使ったからだ。


「リアちゃん能力暴発してるから!!」


『キャプテン・キッド…そんなに見たきゃ見せてやるよ。大将が来るかもしれねえってのに悠長だなおい…!』


「そのうえ能力者か!気に入った!だが今大将とぶつかるのは確かにごめんだ…もののついでにお前らも助けてやるよ!表の掃除はしといてやるから安心しな」


その言葉に今まで座っていたトラファルガーが立ち上がった。


『…トラファルガー?』


どうしたのだと声をかければ俺の頭をポンポンと撫でて無言でスタスタと出口に向かって言った。


『シャチ先輩、ペンギン先輩ベポ…あれ…』


「「「怒ってんな」」」


俺は乱れたフードをかぶり直して三人の単純な船長の背中を見送った。


船長には苦労してます
それはどこの船も同じようで



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