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価値って何だろう。
その人がどれだけ世の中に貢献できるかとか家族のために尽くしたとかそういうものなのだろうか。
俺には人それぞれのその人なりの価値観があるとかそう言った感覚が分からなかった。
だって価値にあう値段をつけることが一番の価値じゃないのかと思うから。
同じ林檎という品種でも美味しさによって値段が変わるのと同じ。
価値ってそういうものだろ?


「お前ヒマなら手伝って」


トラファルガーの部屋から出てからすぐにあのシロクマに声をかけられた。
有無を言わさない圧力に負けて買ってきた食料や日用品を船に運ぶ。
結構重い、とフラフラ運んでいると周りのクルーが心配そうに見ている。
完璧に子供扱いされている気がして悔しい。
するとシャチ先輩が俺の肩をたたいた。


「見たよ、手配書」


『…そう』


「何をそんなにしょげてんだよ、これで俺たちの名も上がったようなものなんだし」


な?と笑うシャチ先輩。
もしかしてハラハラ心配そうに見ていたのは俺が荷物を重そうに運んでいるからではなく俺が沈んでいたから?
グシャグシャと頭をなでられて何だか心がポカポカした。


(この人たちも同じなんだ…トラファルガー)


一緒にいるとあたたかい。
ずっと一緒に入れたらいいのに。
でも俺の目はきっと不幸を招く。
あくまの代物でしかなかった。
いつか、いつかシャチ先輩や仲間たちにもこの目を見せて認められたいと思った。


「すまないが、リア。お前はいちや一族なんだよな?」


『え…あ、ああ』


「文献で読んだんだが本当にあるのか?全ての人を惑わす緑の目は」


「おい、ペンギン!」


みんな聞きたかったのか俺に質問する彼の後ろから俺を見ていた。
シャチ先輩だけは俺が気にしていることなのだと庇う。
俺はシャチ先輩の手を取って首を横に振る。
そして荷物を全て運び終えてから船にはいると俺は告げた。


『確かに目は存在するし誰もが惹きつけられ惑わさせる。見せても構わないけど覚悟はあるのかってことだ』


「キャプテンは見たのか?」


『不慮の事故でトラファルガーは見たことがある』


ざわつく船員。
そりゃそうだ、俺の目が本物ならばトラファルガーが俺を連れてきたり理由として成立してしまうからだ。


「リア!安心しろ、キャプテンはそれだけの理由で乗せたりしない!」


シャチ先輩の言葉が優しくて胸に突き刺さる。
本当にこの人たちは優しすぎる。
俺の価値は目だけじゃないって言ってくれることが凄く嬉しくて。


『はは、知ってるってば』


まだ、ありがとうなんて言えやしないけど。





『トラファルガー?』


寝るときにトラファルガーの部屋の前で俺は布団を敷く。
その前にトラファルガーに寝ることを伝えなくてはならない。(知らないでドアを開けられたらドアが俺の体を強打するからだ)
ドアをノックしても無反応。
不思議に思って開けると文献が散らばっていて驚いた。


『!?』


腕を引かれて中に入れられるとドアが閉まり俺のことを捕まえるようにトラファルガーが抱きしめていた。
何が何だか分からない俺は固まってしまう。


『トラ、ファルガー』


そして絶望した。
トラファルガーの目は俺の目だけを見ていた。
惑わされたのだ、あのトラファルガーでさえ。


「緑の、目…」


『うわ、ちょ!』


無理矢理、布をほどかされてガッチリと目が合う。


「片目で8千万ベリー、両目で1億6千万ベリー」


『やめろ!』


散らばった文献は全て俺の一族について書かれていたものだった。
この目を見た者は売るかずっと自分の側に置いておきたくなるか、どちらかである。
俺は逃げようとしたが見えた自分の心臓に動け出せずトラファルガーの手の動きにただ恐怖するしかなかった。


「そんなに怖がるな」 


『は…?』


「俺はお前の目に惹かれてる、その目を持ったお前全てに惹かれてるんだ」


絶対に手放したりなんかしないと抱き締められたら何も反論できるはずがない。
そして遠くの棚の上に無防備に置かれている俺の心臓を見て、この船に来たときに芽生えた感情を思い出した。
俺はトラファルガーの側にいたいんだ。
でも素直になれない感情は『自分の目的のためだ』と悪態つく。
確かにそれもあるけれど。
本当は。


『逃げられるわけないだろ、お前が俺の心臓を持ってんだから…』


「そうだったな、」


こうやって、自分の心臓を理由に船にいるふりをして。
『ここにいたいからいる』なんて無駄なプライドが邪魔して言えない。


心臓は君のもの
 心は、誰のもの

この後は少し平和な話になります



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