10

「いいな、顔は見せないようにしろよ後海軍を見つけたら俺に言え」

リアは遠足が楽しみで仕方ない子供のように俺の顔を見ずに窓を見ている。
見えない瞳には青い空と島が映っているのだろうか。
聞いているのかと頭を叩くと『ロー、早く行こう』とはしゃぐ。
こういうときにだけ名前を呼ぶのは卑怯である。
食糧の買い出しはシャチとペンギンとベポに任せて俺たちも船を下りる。
見える頬は赤く染まり興奮しているのが分かる。
何時も真っ白な世界にいたのだ、緑の木々やカラフルな花々、青い空に感動しているのだろう。


『本で見たのと一緒だ…』


リアにとってこの風景は本の中での風景で、絶対に自分の目で見れるはずないと思っていたものなのだろう。


「ほら、行くぞ」


結局クルーたちもリアの故郷である鳥籠で休ませてあげることは出来なかったしリフレッシュさせなくてはならない。
医療品も補充したいしやることは多い。
服屋に入り適当に服を選んでいく。
何か好みはあるのかと聞いたが特にないらしく黒いパンツとデニムパンツ、防寒用のコートとパーカーあたりを買った。
パーカーを多く買ったのは目元を隠すためである。


「あと黒い布ないか、出来れば長いのがいい」


「布?ああ1メートルから売っとるから後は好きに切るようにしてくれ…あとお連れさん出て行っちまったけど大丈夫かい?」


「何?」


振り向けば先ほどまで居たはずの存在が消えている。
アイツは餓鬼か…!
5歳年齢が違うだけで行動が読めない。
金を支払い荷物を持って外に出れば向かいの本屋に佇むのが見えた。
刀で頭を小突いて荷物を持たせる。
何を見ていたのかと視線の先を見て驚愕した。


「鳥籠からの脱走者 リア…8千万ベリー?」


懸賞金がかけられた?
ただ島を脱走しただけで?
俺を不安そうに見上げる頭をなでた。
しかも初めてかけられる懸賞金にしては高すぎだ。
そして隣にあった俺の懸賞金も1億8千万ベリーに上がっていた。
鳥籠から抜け出したというだけでお互いに8千万も懸賞金を上げられたのだ。
しかし少しだけ安心できたのはリアの手配書の写真が目を映していないこと。
しっかりとその目元には布が巻かれている…が。


(馬鹿が…!)


鳥籠と黒い布といえば緑の瞳があることを世界に知らせてしまっただけ。
これを見た富豪はコレクションのためにリアを狙うはずだろう。
鳥籠にわざわざ行かなくともあるのだから。
逆に金のないものも狙うだろう。


『トラファルガー、俺…』


「気にすることはない、海賊は懸賞金かけられるのが普通だからな」


一気に暗くなってしまったリア。
先程までの軽い足取りは重いものとなってしまった。
俺の後ろについて来るのだが黙りきっている。
医療品を手短に買って早めに船に戻った。





暗いままのリアを俺の部屋に押し込んだ。
コイツは「他人の迷惑や無力な自分」に敏感である。
それはおそらく、鳥籠で自分が役立たずだと言われ続けるような教育があったからー…。
唇を噛み締めて俯いている。
俺は袋から先ほど買った布を取り出してパーカーを取った。
そうすると緑の瞳を伏せた顔が見えた。
俺は頬を撫でてから布で目を覆ってやった。


「そんなに何をしょげてるんだ」


『やっぱり俺は、人に迷惑しかかけられない…俺の価値は、目、だけ…』


迷惑なんかじゃない、お前の価値は目だけじゃないどろうなんて言葉はきっと通用しないだろう。
これはリアの育ってきた教育環境の人格形成の代物である。
これを治すには莫大な時間がかかるし大きなきっかけでもない限り難しいだろう。


「言っただろう、海賊になれば懸賞金はつけられる」


『…でも俺につけられた懸賞金は海賊としてのものじゃない!島から出ても俺はこの目がある限り逃げられない!』


俺は物わかりの悪い餓鬼に苛つき胸倉を掴み、せっかく巻いた布を乱暴に解く。
緑の目玉に指を突きつけた。


「なら俺の能力(ちから)で抉り取ってやるよ」


その瞬間、動揺で目が大きく開き揺れる。
口は開きカタカタと小さく震える身体。
拒否を表すように俺の腕を掴む手。
そして見開かれた目は潤み、涙が一筋、零れ落ちた。
潤んだ緑の瞳から恐怖で零れ落ちた涙にゾクリとして思わずそれを舐めとってしまった。
いちや一族の目は、人を惹きつけ惑わせるというが本当だ。
ずっとこの目を見ていると舐めたくなってしまう。
抉り取ってしまいたくなる。


(くそ、これじゃ本当に・・・)


こいつ(リア)の価値が、存在価値が目玉だけなようだと思っているようで。
俺は突きつけていた手を下した。
その瞬間に安堵のため息を吐くリア。


「怖がらせて…悪かった」


『トラファルガーは、俺のことを認めてこの船に乗せてくれたんだろ?』


「は?」


『だって俺を誘ってくれた時…お前は目を見たことなかったから…っ』


違うのか、と言われて俺は自分の口元を手で覆った。
俺は確かにあの時、緑の目を見ずに強さを認めて船に乗るように促した。
しかし…今は…?

俺はリア自身に惹かれているのか。
いちや一族の目に惹かれているのか。

…分からなかったのだ。


君の価値
目も含めリアに惹かれているということが混乱してしまうロー



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