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※ゲームのパロディです
キャラが突然(憑りつかれなどにより)病むことがありますので注意
また、流血グロの表現アリ
くろちゃんを交えながら進みます


ある日、紫原が人型に切り取られた紙を持って言った。
「みんなずっと一緒にいられるおまじないがあるんだって」―…と。
俺たちは「男がそんな女々しいこと」と言ったが黄瀬と赤司もやってみたいと賛成した。
そんなアイツらの反応を見てハッと理解した。(きっと他の奴らも理解したと思う)
そう、くだらないおまじない。
だけど赤司たちのように永遠に生きる者にとって大切なこと。
縋りたい、もう1人は嫌だから。
そんな気持ちが俺たちにはヒシヒシと伝わってくる。


「絶対いやなのだよ!」


「空気読んでください緑間くん」


しかし緑間だけは拒否を続けた。
それもそのはず。
こういったものは緑間にとってはトラウマ。
霊媒体質の彼がこういったことをしたら他の関係のない霊まで呼んでしまうかもしれないから。
俺は溜息をついて緑間をなだめた。


『大丈夫、俺が除霊するからさ。赤司達の気持ちも分かってやってくれないか?』


そんな―…軽い気持ちでやってしまったおまじない。
自分でも馬鹿をしたと思った。
おまじないを漢字で書くとお呪いになることくらい知っていた筈なのに。
俺たちは紫原の提案した「幸せのサチコさん」を実行してしまった―…。


橙郷と青峰ペア


ゆっくりと意識が覚醒する。
何だか妙にカビ臭い…それに異臭もする。
それに…埃っぽい?
俺は目を開けて身体を起こした。


『…ここ、何処だ?』


俺の目の前に広がっていたのは帝光中の校舎じゃない、随分劣化した教室だった。
机は乱れてはいるものの黒板と教卓に向けて並べられている。
床は所どころ穴が開いていて立ち上がると軋む。
どうやらかなり腐っているようだ。
窓を見れば真っ暗でよく見えない。
何時の間に夜になったんだ?俺たちが教室で集まっていたのは昼休みだったはずだ。


(…あれ?ここに来る前、何をしていたっけ?)


何だかよく思い出せない。
大体、ここは何処なんだろう。
黒板の横の掲示板には古いプリントが貼ってあって辛うじて「小学校」とだけ読めた。
そしてその発行日は―…。


『…おいおい、何かの冗談か?20年前?』


そう、そのプリントは20年前の日付を印刷していた。
青峰の悪夢に巻き込まれた―…わけはないか、昼間で青峰も起きていたんだから。
俺は取りあえず教室を出た。
こういった雰囲気は苦手だ。


『ひぃっ!』


何かに躓いて俺は情けない声を出す。
下を見れば俺は驚きで一瞬声を出せなくなり、後ずさった。
俺の目に映ったのは死体。
しかも腐りかけているのか蛆虫が湧き出ている。
思わず俺は手を口に当てて吐きそうになったものを飲みこんだ。
カタカタと脚は震えてドンっと廊下の壁にぶつかる。


『い、いやだ、何なんだ、1人はいやだ…っ』


霊が怖い、死体に慣れているはずがない。
しかもここは今にも出そうな廃学校。
俺は死体から逃げるように元の教室に入った。
アイツらがいればまだ冷静を保っているフリくらいできるのに、カタカタと震える身体を腕で抱きしめて深呼吸する。


『…?、』


ふっと黒板に文字が書かれているのに気が付き、ゆっくりと近寄る。
見逃していたのか、と歩いていると教卓の下に足が見えた。


『…!!』


また、死体かもしれない。
だけど薄暗いからもっと近寄らないと黒板の文字は見えない。
俺は意を決して踏み進めた。


『あ、青峰…?』


しかし見えた脚は青峰のだったのか。
教卓の下で気持ちよさそうに眠っていた。
一気に緊張が解けて青峰の肩を揺らす。


「んあ?葉月?俺寝てたのか?」


キョロキョロと青峰は辺りを見回し、サァッと青ざめた。


「ま、まさかまたお前を俺の悪夢に…?」


『いや、今日は昼寝してなかったろ?』


「そういえば…そうだな」


じゃあなんでだ?と青峰は黒板の文字に目をやる。
女の子らしい可愛い丸文字だ。


―…黒板の文字だけが空間を超えることができるようです
何時か出会えると信じています、時間が重なり合って再会出来たら一緒に元の時代に帰りましょう


「…どういうことだ?」


『…ここは20年間らしい、この言葉…』


空間を超えることができる?どういうことだ?
それにこの言葉によると書いた彼女は1人でこの時代に飛ばされたわけじゃないという事だろう。
時間が重なり合う…再会…空間を超える…。


『もしかしたら俺たちのほかに他の奴らもここにいるかもしれない』


「…それっておまじないやったメンバーってことか?」


『おまじない…?ああ、そうか、紫原が提案した…』


そうか思い出した。
そういえば紫原の提案でおまじないをしてから意識を失ったんだっけ?
いや、教室の電気が消えたんだっけ…詳しいことがうまく思い出せないがそれが原因だろう。


「…とりあえず探さないか?」


『…いや難しいことになってると思うぞ』


「あ?」


『この言葉からして、ここは多重閉鎖空間かもしれない』


青峰が首をかしげる。


『つまりいくつもの空間が重なり合っているってことだよ。空間が違うってことは存在している時間帯が違うってこと』


ますます分からないと青峰は眉間に皺を寄せた。


『…例えば今俺たちがいる教室に黄瀬がいてもお互いに気付くことは出来ない。何故なら黄瀬のいる空間の時間と俺たちのいる空間の時間は違うからだ。各部屋の流れる時間が違うと言ったら分かりやすいか?』


でも黒板の文字だけは空間の時間を干渉せずに越えることができるみたいだ。
青峰はまだ曖昧なままのようだが取り敢えず探すに越したことはないと俺たちは廊下を出た。
青峰は「う…」と手を口に当てた。
俺も忘れていたと目を逸らす。
…死体だ。


『…6年1組か、とりあえず嫌だけど1つ1つ教室を回るしかないな』


しかし隣の教室のドアは開かない。
ガッチリと空間で止められているみたいな…妙な感覚だ。
何処の教室も開かないものが多く、階段の隣に会った5年1組の教室はドアが半開きになっていた。

そこには真新しい感じの死体があって思わず顔をしかめる。


「何なんだよ…気持ち悪ぃ」


「≪気持ち悪いなんて、言わないでおくれよ≫」


「『!?』」


死体からフワッと少年の霊が浮かび上がる。
悲しそうな顔をしている。
マジマジと見ると悪い霊ではなさそうに見えた。


「≪君たちも…おまじないをしてしまったんだね。僕たちもおまじないで飛ばされてしまったんだ…そして脱出できないまま、このざまだ≫」


『やっぱりあのおまじないが…』


こくり、と頷く少年。
俺たちより幼く見える。


「≪君たちと同じ制服の子がここに来てたよ…まぁ空間が違うから会えないと思うけど≫」


「どんな奴だ!?」


「≪さぁ…僕を見るや否や叫んで逃げて行ったよ…失礼しちゃうよ。君たちはここが多重閉鎖空間なのは分かってるみたいだね≫」


何となく黄瀬の顔が浮かんだのは俺だけじゃないはずだ。
少年の問いに頷くと黒板と死体だけは空間の時間軸に関係なくあり続けることができることを教えてくれた。


『…死体を観察するみたいで悪いけど君は…』



「≪僕は餓死とか疲労で死んだんじゃない…霊に殺されたんだ≫」


死体には腹をぶち抜かれたあと。
どう見たってショックと出血多量による死因だ。
霊、と言う言葉にゴクリと息を飲む。


「≪そこに新聞紙がある…霊の正体が書いてあるから読んでごらんよ≫」


少年が指さした場所に新聞が捨てられていた。
俺と青峰は新聞を持つと少年が黒板のことは知っているかと聞いた。


『ああ、黒板に文字だけが次元を超えるとか、そういう奴だろ?』


「≪うん、だから君たちがいることを書いてあげたらいいんじゃないかな?≫」


「ここに書いても黄瀬じゃ見ないだろうな」


青峰の言う通り。
黄瀬(と勝手に決めつけてしまったが)が幽霊の少年を見た瞬間逃げ出したというならここに近寄ることはないだろう。


『ありがとな、俺たちは一度戻るよ』


「≪うん、気を付けてね≫」


俺と青峰は廊下を出て自分たちが目覚めた6年生の教室に戻る。
そしてドアを閉めて一息つくと黒板に近寄る。


「…おい、新しい言葉が書かれてんぞ」


『え…?』


俺が文字を書いていると青峰が俺の腕を掴んだ。
俺は青峰が言ったものを見て驚愕した。


―…ネットだけ接続できる スレッドをたてたので使ってほしい
―…黄瀬涼太 緑間真太郎


その文字の下にURLと思える英数字が並んでいる。
黄瀬と緑間が一緒のペアのようだ。


『…まずいな』


「え?」


俺は俺と青峰が一緒のペアであることと、多重閉鎖空間のことを書いた。
そして事件のことも新聞を読み終え次第、この黒板に貼っておこうと思う。


『緑間は霊媒体質だ、そして黄瀬も一度はこっくりさんで幽霊を呼び寄せてしまった』


「…それってつまり」


『一番組んじゃいけない奴等が一緒になった…』


俺と青峰はその逆と言えるだろう。
悪夢以外から逃れることの出来る青峰と除霊ができる俺。


「…とりあえずネット接続しようぜ」


『ああ、』


不安で内心焦りながら青峰にネットは任せて俺は新聞を読むことにした。



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