03

―…俺が気付いてやるよ、必要ない存在何てないのだから


あの言葉が、今でも鼓膜を揺らしている。
僕は一年の時同じクラスだった茶ノ畑くんに二度も助けてもらった。
お礼が言いたい、でも言えない、タイミングがつかめない。
気付けばクラスはバラバラになってしまった。
彼は何だか僕に似ていて、酷く惹かれた。


(ああ、何時だって君は優しいのに、どうして)


有りもしない噂をたてて、どうして拒絶するのでしょうか。
噂だけで全てが決まるのでしょうか。
本人と話したことないくせに何を知ったような言葉を。
何を知っているの?何も知らないくせに。
見てよ、本当の彼はあんなに優しいのに。
見てほしい、見つけてほしい、見つけ出してほしいのは―…。


僕の方だ。


「あららー?黒ちんだぁ」


『引っ張んな!紫原!!』


「え?」


突然声をかけたのは紫原くん、とそれに無理やり腕を引かれている茶ノ畑くん。


「…茶ノ畑くん」


『ああ、昨日ぶりだな』


「知り合いなの?」


「はい、同じクラスでした、紫原くんは…」


俺も今同じクラスなんだ、と笑う紫原くんは彼にとても懐いているように見えた。
少し照れくさそうにしている茶ノ畑くんも嬉しそうで僕も自然と笑みがこぼれる。
君が今、1人じゃなくてよかった。
そう思うと嬉しくて仕方なかった。


「昨日のお礼に今日、マジバでも寄りませんか?もちろん紫原くんも」


「いくいくー!」


『…いいのか?俺なんかと』


「茶ノ畑くんがいいんですよ」


世界がどれだけ君を不良だなんだ、恐ろしいと言ったとしても。
紫原くんのようにキチンと彼の本当の姿を見抜いてくれる人がいる。
僕だって本当の君を知っている。
僕の自己満足かもしれない、だけど。


「…って、紫原くんの分は奢れませんよ」


「知ってるしー」


しかしその顔は奢ってもらう予定だった顔だ。
僕はお気に入りのバニラシェイクを買って、茶ノ畑くんがポテトとお茶を頼んだので一緒に払う。
『別に気遣うことはないのに』と言ってくれたがそれでは僕の気が納まらないと答える。
すると『いただきます』と手を合わせた。


「茶ノ畑くんは今、何か部活をしているんですか?」


『…いや、今は帰宅部だよ』


「…そうですか、僕と紫原くんはバスケ部なんです」


『黒子も?』


確かに茶ノ畑くんは体つきがいい。
どちらかと言えば僕が帰宅部で茶ノ畑くんがバスケ部みたいだ。


「翼ちんも結構中学生にしては身長高いし運動もできるから向いてるんじゃない?」


それは紫原に言われても嬉しくないよ、と全くその通りである。


『俺はいいよ、バスケは授業だけで十分』


「そうなんですか?」


『身体動かすのは好きだけど、上下関係とかは苦手だし』


確かにあの口調と態度では先輩から反感を食らうのは目に見えている。
「ざんねんだなぁ、」と紫原くんはストローを噛む。


「えらく気に入ってますね」


「そぉ?翼ちんはお菓子作りも上手いし」


「…女子力」


『言うな』


これは同じクラスでも知らなかった。
お菓子作りが得意だなんて。
裁縫をしているのは何度か見かけたことがあるが、あれもかなりのクォリティーだ。
ああ、もっと早く話しかけておけばよかった。
でも、これからだって遅くない。


(だって、僕はあの時、助けられたときからずっと君のことが)


―…俺が気付いてやるよ、必要ない存在何てないのだから


「翼くん、僕とメアド、交換していただけませんか?」


『…え?つか、名前』


「駄目ですか?」


いいけど、とカバンを漁る翼くんの頬は緩んでいる。
夕飯の支度があると、やっぱり女子力が高い理由で先に帰宅した翼くん。
紫原くんはポツリと「あーゆー反応が初々しいから可愛いよねー」と笑った。


「本当、可愛いですよね」


黒子テツヤの片思いと感謝
黒子はすでに恋愛感情を持っています
それは後々
紫原はいい友達の関係のまま



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