07
『お前のガスボンベ、穴あいてたろ』
ハイネが初めて俺を部屋に招いたかと思えば突然問われた。
コイツの部屋に入るのは初めてではないが酷く殺風景な部屋だった。
ソファーと机とベッドと棚。
それは全て軍から支給されたものでハイネの物ではない。
ベッドに寝そべったままハイネはソファーに座る俺を見つめた。
「ああ、あいていた」
『やっぱりな』
「やっぱりだと?」
どういう事だと問おうとした時、ふと思い出した。
立体機動装置が故障して先に壁に戻ると言ったハイネは馬を走らせる前に自分のガスボンベを俺に渡していたのだ。
問題はそこじゃない。
何故ハイネは俺にその時ガスボンベを渡したのか、である。
普通に考えれば自分は立体機動装置を使わない(使えない)から取り外しの可能なガスボンベだけは俺に託そう、という事になる。
しかしその時は今よりもっと俺とハイネの仲は悪かったのだ。
あの時のハイネなら他のヤツにガスボンベをあげていただろう。
つまり、
「お前、俺のガスボンベに穴があいてた事あの時すでに分かってたな」
『ああ、リヴァイが巨人を殺しに行った時リヴァイの立体 機動装置のガスの出具合がおかしいと思っていたから託した』
実際、役にたったろうと言うハイネ。
俺はソファーから立ち上がりベッドに寝そべるハイネに近寄った。
「つまり、お前がガスボンベを託したのはすでに分かっていたから、そうだな」
『何度も同じ事を言わせるなよ』
―…俺の為にガスボンベをくれたと思っていた。
俺を心配してくれたから、俺を信頼してくれたから一番役に立つ俺にガスボンベを託したのだと信じていた。
けれど実際はただガスボンベに穴があいていたのを理解して渡しただけだったのだ、しかもそれを俺本人に伝えず。
「死ね」
俺はハイネの手首をベッドに自分の手で縫い付けた。
見開かれる紫がかった黒い瞳。
蹴られる前にハイネの腰に座り、グッと力を込めた。
『…お前が死んじまえよ』
俺が睨んで怯まないのは隊の中でハンジとエルヴィンとハイネだけだ。
ハイネの手首が充血する。
痕がきっと残るだろう。
「それでお前は俺に立体機動装置を壊した犯人がいると告げた」
『ああ』
「俺も壊されていたから壊したのは俺じゃないと理解したから」
『そうだ、何か 問題あるのか、ないだろ?』
ある。
あるさ。
―…ハイネは俺を信頼してないんだろ?
ガスボンベをくれたのも立体機動装置を壊したのは誰かだと教えてくれたのも。
信頼ではなく理解したから、ただそれだけの理由。
「お前は本当に嫌いだ」
『…』
「早く死んじまえ、ハイネ」
俺はハイネに何故ここまで執着する?
隊なんて、軍なんて誰が敵だか分からない中、国を生かす為に「犯人ではないヤツを理解」してから何かを託すなんて当然の事。
『…お前が、死ねよ』
ならばせめて困惑の中、俺の手でお前を終わらせたい。
困惑する白濁する
重い想いと重い思いに