06

出来損ない―…ハイネはかなりの料理好きだ。
物資が少ない壁の中だが調理場から少しだけ貰った材料で見事な料理を作るらしい。
さて、俺が何故"らしい"と言っているか。
俺とハイネの仲は何年と悪いままだった為にアイツの料理を一度も見た事がないのだ。
では今は仲が良いのかと聞かれると違うのだが。

今日は調査兵団の施設内の掃除である。
会議室と庭と言ったのにハイネは調理場の掃除をしている。
ハンジの言葉を信じ、ハイネに初めて優しくしてみたら笑いやがるもんだから反射的に蹴り上げてしまった。
せっかく溝が浅くなったと思ったのにこれでは逆戻りである。
案の定、ハイネは深く眉間に皺を寄せ睨み付けた。
また嫌われてしまった。
別に嫌われても構わないのだがお互いに嫌っていると作戦などに影響すると思っているだけなのだが。

俺は溜め息を漏らしながら三角巾を取る。
そして調理場を掃除しているであろうハイネに会いに行った。(もちろん掃除が出来ているかの確認の為である)


『おう、リヴァイ見ろよ』


「あ?」


しかしドアを開けた瞬間にブワ ッと広がる匂い。
ハイネはどうやら掃除ではなく調理をしていたらしい。
会議室と庭を掃除させないだけでも譲ってやったというのに本来の目的である掃除すらしないとは。
蹴り上げようとした時、サラリと紫がかった黒髪が揺れて俺の動きを止めた。
何故、何故止まる?


『掃除に参加したヤツらの為に作ったんだ、なかなかだろ』


「…これを1人でか」


『ああ』


「掃除もせずにか」


『ああ、リヴァイの分もあるからな』


「……」


まぁ今回くらいは見逃してやらん事もない。
たまにはアイツらにも感謝してハイネが作ったものではあるが褒美をやってもいいだろう。
きっと腹も空かしている事だろうからな。


(…―それにしても名前で呼んだだけでこうも関係が和らぐとはな)


もしかしたらもっと優しくすればハイネはハンジやエルヴィンのように俺に接してくれるのかも知れない。
そんな思考を消し去るように、


「料理しろなんて言ってねーだろ、死ね」


『お前が死ねよ』


ふんっと鼻を鳴らしてハイネは調理場 から出て行った。
これではきっと俺の分は新人の大食いの女に食われるだろう。
そう思って手を洗って自室に戻れば少し冷めたハイネが作ったスープと少し固くなった支給されるパンが机に置かれてい た。


(…死んじまえよ、本当に)


お前が優しくなるだなんて気持ちが悪いんだ。
そう思いながら俺は皿を撫でた。
それはまるで皿をアイツに見立てているようだった。

いや、まさか。
俺がそんな事を考える筈がない。
きっと腹が減っていただけなんだろう。


不器用で無自覚の恋

リヴァイはハイネが好きな事を認めない為に色々とそれらしい理由をつけ、ハイネはリヴァイに自分が作った料理を食べて欲しかった



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