38

エレン視点


たまたま通りかかったリヴァイ兵長の部屋。
少し空いたドアの隙間。
見えるのは抱き合う憧れの2人。
その時俺は「やっぱり俺は餓鬼だから」とか「羨ましいなとかか「失恋してしまった」とかそういう気持ちを抱いていなかった。
ではどんな感情かというと。
答えはカンタン。

ぐるぐるどす黒い、嫉妬に包まれていた。

一瞬ではあったが確かにハイネさんは俺を求めた。
つまりは俺にも少しだけでもほんの少しだけでも、まだ気が向く可能性があるという事じゃないのか?

俺のソバにいて欲しイ。
いつも貴方たちは届かない存在だかラ。
その服袖から見える包帯はリヴァイ兵長を思って?
そんなのいやだ。
俺の傷にしてしまいたい。
上からなぞってリヴァイ兵長の痕を消すように痕を付けて。
その瞳には俺だけを映してしまいたい。
見ることのないようならえぐり取ってしまえばいい。

もう、遠くから見て憧れているのは、やめる。





「ハイネさん、」


『エレン』


食堂から出てきたハイネさん。
まるで偶然を装っているかのようにしているが待ち伏せしたにすぎない。
ハイネさんの手にはお盆。
お盆の上にはパンとスープとコーヒー。


「食堂で食べないんですか?」


『あ、いや、これは…』


知ってますよ。
リヴァイ兵長に届けるつもりなんでしょう?
だから俺は白々しく嘘をつく。


「うわ、食堂確かに混んでるし、ここでは食べにくいですね。実は俺リヴァイ兵長に食事を持ってくるように頼まれてて」


『え』


そう、貴方の持って行くそれは俺が運びます。
勿論憧れているリヴァイ兵長を傷つける気なんて毛頭無い。
ただ貴方を奪うだけ。


『そっか、そうだよな、俺が持ってきたのなんて食べたくないよな』


ブツブツと小さく呟く。
事情は知らない、なんでこんな2人が引き裂かれたか知らないー…が。
好都合この上ない。


「もしかしてそれ、兵長に?」


『ー…違う、俺は、部屋で、』


目を伏せてしまったハイネさん。
口端が上がるのを堪える。


「運びますよ」


お盆を取ってハイネさんの部屋に運び、新しくリヴァイ兵長の分を貰って部屋に持って行く。
本を読んでいた兵長は俺が入ってくると少しだけ目を見開いた。
俺を睨みつけていたがそれは苦笑いで返す。
いつも通り振る舞って帰り際にさりげなく、


「憧れの人たちのお世話が出来て俺、嬉しかったりするんです」


憧れの人たち。
そう呟いた。
それはリヴァイ兵長も分かっただろう。
自分とー…ハイネさんを指していることくらい。

続いてハイネさんの部屋に行くとハッと俺を見たハイネさんに笑顔で一言。


「これからもよろしく頼まれてしまいました」


貴方じゃなくて俺が。
そう込めて。


『ー…』


そうそう。
そうやって悲しげにして。
苦しそうに歪められたその顔を。
俺は癒してあげましょう。

自分の手で愛する人を傷付けて。
自分から憧れている人を騙して。
自分で傷を付けた傷を舐めて。
自分から自分を傷付けてしまおう。


(嗚呼、歪んでる)


若さ故だと、貴方たちは笑ってくれるでしょうか?


どうしても欲しいの
 それは貴方




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