02

「おい、なり損ない」


リヴァイはハイネの事をなり損ないと呼ぶ。


『何だよチビ』


ハイネはリヴァイをチビと呼ぶ。

ハイネは背の低い彼にイヤミを込めて、リヴァイは八つ当たりで自分をチビと呼ぶハイネに嫌がらせでなり損ないと呼ぶ。

2人は今日も犬猿の仲だった。


「コーヒー」


『死ね』


「お前が死ね、いいからコーヒー」


町の住人は相変わらず仲が悪いと言い、調査兵団のメンバーは相変わらず仲が良いと言う。
とにかくハイネはイラッとして近くにあったコーヒーの入った瓶をリヴァイに投げつけた。
リヴァイはパシリとそれを掴むとハイネを睨んだ。


「何のつもりだ」


『飲めよ』


「死ね」


『お前がな』


ふんっとお互いに鼻を鳴らし一緒の部屋にいるにも関わらずお互いに自分1人1人でコーヒーを一杯ずつ作るとズルズル飲みだした。
彼らには相手に作るという感覚はないらしい。

さて、リヴァイもハイネも多発的に死ねと言う。
しかしこれは2人の間だけの会話である。
死ね、だなんて調査兵団の中で言う人間はいないだろう。
何故なら調査に出掛けたら死ぬ可能性の方が 高いからだ。
リヴァイもハイネも仲間の死に何も感じないほど冷徹ではないという事、そして2人はお互いに理解していた。
―…コイツは死なない、と。
何度も人、仲間の死を見届けた2人はお互いを嫌うと同時に信頼していた。
「リヴァイ兵長が必ず貴様ら巨人を根絶やしにしてくれる」「貴様らなんぞハイネが八つ裂きにしてくれる」と仲間が自分の背中を押す。
2人は周りに絶対的な信頼を持ち、お互いを嫌悪してた。


「―…まぁハタから見たら君達は兄弟のように見えるよ」


「は?」


ハンジの言葉にリヴァイは眉間に皺を寄せた。
自分とあの出来損ないが兄弟のように見える?冗談じゃない。


「お互いに嫌っていても兄弟だから心の底からは嫌えない」


リヴァイの脳内にふと浮かぶハイネの顔。


「大嫌いと言うのは好きな事でもあるんだよ、本当に嫌っているならば会話すらないから」


「それはあの出来損ないも俺に話しかけている時点で、"そう"なのか?」


生理的と言っていいくらいに出た言葉にリヴァイは後悔したが遅かった。
ハンジはリヴァイを嬉しそうな表情で見て「そうに決まってるじゃないか」と笑った。
何故 こんな言葉が出たのか理解出来なかった。

これではまるでハイネに"そうであって欲しい"と願っているようだったから。


(下らねぇ…)


リヴァイは舌打ちをした。
何故自分があの出来損ないの為に考え事をしなくてはならないのか、と。

顔を上げると調理場から食材を貰って来て廊下を歩くハイネが見えた。
ハンジの言葉を思い出して苛立ったリヴァイは通り過ぎようと近付いて来るハイネに言った。


「死ねよ、お前」


『はぁ?お前が死ねよ』


こんな関係がもう長く続いているのに、どうしても止められないのは何故なのか分からなかったがリヴァイはまだこのままで良いと無意識に思った。


唯一のコミュニケーション



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