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完璧に避けられている。
誰に?もちろんハイネにだ。
ハイネはエレンといることが多くなった。
包帯でぐるぐるに巻かれた体は痛々しく時折痛みを感じるのか眉間にしわを寄せる。
それに気付いたエレンはさり気なく介護するのだ。
モヤモヤとして口付けていたコーヒーカップを噛む。
アイツの隣にいるのは先日まで俺のはずであったのに。
「ー…大丈夫ですか?」
『え、ああ…』
エレンが心配そうに俺を覗く。
食事もせずに止まったままでいたらしい。
持っていたコーヒーカップが冷たい。
先ほどから背中に突き刺さるような視線を感じるのだ。
チクチクと痛いのは見られている背中なのか心なのか。
エルヴィンに火傷をした体を見られて次の壁外調査には参加することが出来ない。
(壁外調査に参加できないなんて何年ぶりだろう)
数年前に一度だけ怪我をして休んだことがあったような。
ふと、食堂にいる仲間たちをみる。
ー…帰ってきてくれるのは何人なのだろうか。
そんな不謹慎、だけど現実的な考えがでてしまう。
そっとエレンが俺の手を優しく包んだ。
はっと顔を上げると思い詰めたような表情をしたエレンの顔が目の前まできていた。
「俺、諦めませんから」
『え?』
俺はエレンを振った覚えはないため首をひねればエレンは子供らしい表情で頬を掻いた。
「わかりますよ、ずっと見ていましたから」
自分の頬が熱くなるのが分かったが、それは一瞬のことで心がちくちくとして悲しくなる。
俺は、この恋を叶えることは出来ないのだから。
「行って来ます」
『行ってらっしゃい、気を付けろよ』
「はい!」
そして、帰ってきたエレンは泣いていてみんな暗い顔をしていて。
何があったのかとエルヴィンに問えば難しそうな表情をしていた。
そして俺は思わずリヴァイの姿を探す。
すると見えた姿に安堵するのもつかの間、リヴァイの足取りが可笑しいのに気付いた。
(リヴァ、イ…?)
手を取ろうとして自分の包帯が見えて思わず手を引いた。
(だめだ…)
こんな、汚れた体でリヴァイに触れちゃいけない。
話しかけちゃいけない。
リヴァイと一緒にいたい、いたくない。
嫌いだ、大嫌いなのに大嫌いだったはずなのに。
「ハイネ…?」
頬から零れ落ちた液体は床を濡らしてく。
久しぶりに目があったリヴァイは眉間にしわを寄せて俺を見上げていた。
どうしよう、どうしたらいい。
この気持ちはどうしたらいい?
好きなのに、こんなにこんなに大好きなのに。
「ハイネ、ー…っ、」
俺は逃げることしかできないのだろうか?
俺は確かに、人類最強になりそこねた男だった。
膨らみすぎたこの思いは、これ以上入らないのにさらに膨らんでいって。
爆発するのだ。
感情爆発、ビッグバン