34

「これでよし、」


水で一気に火傷した場所を冷やされて腫れが引くと濡れたタオルを皮膚の上に置いて貰った。
まったく、大の大人が子供に世話されるとは情けない。


「あの…何があったのか、聞いても良いですか?」


『…聞いちゃ、いけないこともある』


「兵長絡みですか?」


何てカンの良い奴なんだ。
俺が無言でいると肯定と取ったのか俺の座るベッドに片手を置いて顔を寄せた。
キシリと軋むスプリングの弱いベッド。
はっと前を見れば真面目な表情をしたエレンがいた。


「俺じゃやっぱり子供だから頼り無いですか?貴方の支えになれない?」


『エレン…落ち着け、』


「俺は、俺はあなたが好きなんです!」


口付けられた。
目の前にエレンが見える。
リヴァイ以外と口付けるなんて、


『!』


バタンと言う音が聞こえて音の下方向を見るとドアが閉まった音だと理解して立ち上がった。
まさか、まさかまさかー…
慌ててドアを開いて廊下を見れば見慣れた小さな背中。


『リヴァイ!』


裸足のままリヴァイを追い掛けた。
エレンを部屋に残したままリヴァイの制服を掴む。
リヴァイは振り向かない。


『リヴァイ…』


目が熱くなるのが分かる。
手汗でびっしょりと両手の手のひらが濡れている。


「ー…幻滅だ」


それだけ言葉を発すると歩き出した。
リヴァイはきっと俺を性欲にまみれて色々なものに手を出す野郎と思っているに違いない。


「ハイネ、さん」


俺を追いかけてきたエレンが、そっと俺の手を取る。


「ごめん、なさい、貴方を傷付けた、俺は、」


エレンの素直な謝罪に責めることも出来なくて俺は泣くことしかできなかった。
エレンも気付いてしまったのだろうか。
いや、確信したという方が合っているのかも知れない。
俺は、リヴァイがどうしようもないくらい好きなのだ。


『エレン、どうしよう、俺はどうしたらいいの』


「ハイネさん、」


嗚呼、情け無い。
後輩に、新人に、年下に、エレンに。
こんな弱い俺を見せてしまうだなんて。
もう訳が分からなかった。
リヴァイが好きなのに好きなはずなのに。
俺はエレンの優しさが酷く心地いい。
エレンに頼ればこんな思いをしなくて済むのかな。

リヴァイといると辛い、苦しさばかり。
エレンといると安心する。


俺の感覚はゆっくりと麻痺していった。
俺を後ろから抱き締めて謝罪しながら愛を囁くエレンが太陽のように温かくて。
側にいてほしいと願ってしまった。


『エレン…俺の側にいてくれ…』


「でも…」


『もう、リヴァイと一緒にいると、死にたくなるんだ…』


エレンは苦しげな表情をして。


「分かりました、ハイネさんが望むなら」


笑って頷いた。


これ以上嫌われるのが恐ろしい
リヴァイといると死にたくなるくらい好き、



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